2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル時代に対応した物理教育コンテンツの研究開発
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15K00931
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
並木 雅俊 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (90150656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 忠芳 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (30460413)
佐藤 誠 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90413830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際物理オリンピック / 基礎物理学実験 / IPhO実験再現 / 世界標準物理実験 / 物理の基本を伝える実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,①国際標準の物理実験課題およびその解答例の日本語版作成,②国際物理オリンピック(IPhO)実験再現,③物理実験教育プログラムの研究開発およびコンテンツ化である。 29年度は,28年度に引き続き,IPhO実験問題の再現を行った。光学分野から「高次の虹(IPhO1986)」と「レーザー光の散乱と回折(IPhO1995)」を実施した。光学分野に注目したことは,光学の学びは物理学の基本知識を総合的に問うことにあること,それに他分野と比べ,実験者に驚きと感動を与えてくれることにある(IPhOにおいて作題頻度の高い理由はここにある)。 課題「高次の虹」は,IPhO1986の実験器具として高精度分光計台(50万円程の高価な装置)を使用していた。これを低価格の実験器具で実験可能とするために白色LEDを用いるなどの工夫をした。丁寧な調整と測定に注意を払わなくてはならないが,測定は短時間で可能とした。大学生にとって,副虹(2次の虹)は高校の教科書に載っていることもあるため知りえる機会はあったが,3次以上の高次の虹のことを考える機会がなかったと思われる。また,虹の次数と散乱角度との関係を定量的に考察することは大変興味深い課題である。この虹の実験は,光の屈折ばかりか,フレネル反射や偏光の概念と組み合わせることで,教材としての可能性を有している。 課題「レーザー光の散乱と回折」は,レーザー光の①金属定規による回折と②懸濁液による散乱である。IPhO課題では,金属定規に垂直入射させることにしているが,これでは,解析が容易な反面,回折パターンが不明瞭である。そこで,低角度で入射させたところ回折パターンが明瞭となった。解析は難しくなるが,実験課題としてはこの方がよいと判断できた。②光の強度比較で工夫を要したが,光の透過度を懸濁液の濃度の関数で表示できるため,定量的な議論も可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.平成29年6月から目眩が起こり,頭位性目眩と診断された。6月下旬に研究室で回転性目眩が起こり,耳鼻咽喉科にて左耳の難聴およびメニエール病と診断された。今年度は、この治療のため,課題遂行はかなわなかった。 2.IPhO実験課題から物理の基本を問う効率的な課題を見つけても,それが必ずしも「実施が容易である実験」とは限らないことがわかった。このため,単に再現するだけでは目的を達することはできず,工夫をしなくてはならない点が多くかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた再現実験を解説した冊子体(予定256頁)を作成し,日本物理学会領域13の物理教育分科,応用物理学会応用物理教育分科会,あるいは日本物理教育学会において興味・関心のある研究・教育者に配布予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度も,引き続いて,大学初年級および高等学校の教育的視点でみて,物理の基本を伝える効率的な実施が容易である(低価格である)実験課題を国際物理オリンピック実験問題から探し,再現・修正を行った。進捗状況で述べたとおり体調不良のため,最低限のことしか実行できなかった。 (使用計画)今後の推進方策で記した通りに,多くの教育・研究者のために知っていただくため冊子体の作成を行う。また,この課題を継続していくための基本的実験器具を揃えておくこととしたい。
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