2015 Fiscal Year Research-status Report
図形や立体物の形状を正しく認識する能力を高めるための折り紙教材の開発
Project/Area Number |
15K00951
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
川崎 敏和 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90186081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫛田 雅弘 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80214948)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 折り紙 / 形状認識 / 幾何 / 自主的 / 子供から高齢者まで / 完成の喜び / 動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者はこれまで「ものづくり教育に役立つ幾何折り紙教材の開発(H23-H25)」(以下、前研究とよぶ)を科研費の補助を受けて行ってきた。その研究過程で、人が図形や立体物を認識するさい色彩を優先させるため、形状を正しく認識していないことがわかった。そこで、もの作りの基礎力となる形状を正しく認識する能力を高めることの重要性に気づいた。本研究では物の形を正しく認識する能力を高めるための折り紙教材を開発している。研究実施計画では3タイプの教材を提案してその有効性を検証する予定であった。しかし、昨年5月に予定していた3タイプとは全く異なる教材を、前研究の反省から思いついて、6月には試作した教材を小中学生や社会人に使ってもらって、その有効性をアンケート調査した。前研究の反省とは、折り紙が不得手な教師が折り図を見ても折れないというという問題である。折られたもの(正6角形用紙で折る「スノーフレーク」(笠原邦彦作))を大量に準備して、生徒に配布した。生徒はこれを丁寧に広げて折り線の構造を調べて新たな色紙で同じものと作る。夢中になって取り組む姿は圧巻であった。完成した折り紙をクラスメート見せて、教師のもとに駆け寄り「別のものも折りたい」と生徒たちは言った。社会人の反応も同様であった。90歳を超える高齢者も例外ではなかった。 折り線がどのような位置についているか調べて、どうすればその折り目を正しくつけられるかを考えることで、図形を正確に把握するだけでなく考察力を伸ばすことができる。完成品を復元させる本方式は、折り紙界・教育界初の画期的な試みである。「折ってみたい!」という動機を生徒たちに与え、個々の生徒のペースで完成の喜びを感じさせるという研究実施計画になかった成果も生んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で3タイプの折り紙教材を提案していたが、研究開始の5月に、折られたものを広げて折り線構造を調べて新たな紙で再現するという、折り紙史上例のない方式を考案した。ピラミッド、UFOなど十種類以上の教材を完成させて、折り紙コンベンションや折り紙講習会で小中学生や社会人に使ってもらいアンケート調査をくり返している。その結果は、折り紙の科学研究集会などで2回報告した。 前研究の課題であった、折り紙が不得手な教師がテキストをうまく活用できないという問題も、本研究の教材により解決した。教師は折り紙を配布・回収するだけで済むからである。破損した折り紙は、折り紙が得意な生徒に折り直してもらえばよい。また、生徒に1個余分に折ってもらえば、講習の度に折り紙教材が増えることになる。 形状認識力を高めるには立体の方が良いので、現在は立体的な折り紙教材を開発している。既に、竜宮城や組み立て式のバラなど、誰もが折りたくなるような魅力的な教材が完成している。 これらの成果を受けて、「折り紙教育を考える会」の全国大会(H29)での基調講演を行うことが決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で最初に作った教材「スノーフレーク」は正6角形の平たい折り紙である。形状認識力を高める訓練には立体の方が適しているので、ピラミッド、竜宮城、み立て式のバラのような立体折り紙をさらに開発していく。竜宮城と組み立て式のバラの実証試験は1回しか行っていないが、本年度4月末に小学生、社会人対象に行う。 また、当初計画通りに、折り方を説明する動画制作を始める。動画はDVDに記録して折り紙教材と併せて教育関係者に配布して使用してもらう予定である。特に、広島県福山市の暁の星小学・中学・高校に出向いて直接使用することにしている。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に記述したように、研究開始早々に本研究の核となる画期的な教材のアイデアを思いつき、折り紙教材サンプルの実証試験が早い段階でできてその有効性が確認できるアンケート結果を得た。そのため、使用料が発生する折り紙作家の作品が当初計画ほどには必要でなくなり、謝金等が大幅に抑えられた。さらに、格段に優れた折り紙教材の方向性が定まったため、研究実施計画に書いた3タイプの教材の実証試験は不要となった。高品質折り紙教材が予定よりかなり早くできているので、研究計画に比べて経費が大幅に抑えられていることは良い成果である。 一方、研究実施計画になかった折り紙教材を折ってもらう制作費が生じた。教材は本研究の核となるものなので、意図的に物品費の支出を抑えて制作費を捻出せざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スノーフレークやピラミッドなどの折り上がった折り紙を教材とするために、当初の研究計画になかった折り紙教材制作費(折り賃)や折り方説明のDVD制作費として使用する。教材制作費に余裕ができたので、最終年度にまとめてする予定だった折り紙教材製作を、これまでに開発して有効性が確認できた分だけ前倒しで行う予定である。これにより、研究集会などで回収していた教材を、今後は回収しなくて済むだけでなく、複数配布することができる。そうすることで、参加者が各教育現場に持ち帰って使用することが可能となる。H29年度の折り紙教育を考える会広島全国大会の基調講演でも、約100名の参加者全員に複数の教材と折り方説明DVDを配布する予定である。
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Research Products
(3 results)