2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00977
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渕 真輝 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20362824)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 伸之介 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00193871)
藤本 昌志 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70314515)
広野 康平 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80346288)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 産業・技術教育 / 船舶 / 安全教育 / 衝突防止 / 座礁防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでに得た乗船者に関する知見をベースに、安全運航達成のために、眠気を緩和したうえで、海上交通における安全教育プログラム手法を明らかにしようとするものである。平成28年度においては便乗調査、安全教育プログラムの検討、船社との眠気の緩和作業と安全教育プログラム実施に関する調整を行うことであった。便乗調査については船社との調整がつかず当年度において実施することができなかったが、学内で行われた研修ならびに船社における研修に参加し、操船シミュレータにて船舶を運航中に調査を行った。その結果、他船に関する状況認識と座礁防止にかかわる船舶の位置確認は重要であることは認識されていた。しかしながら用いる言葉は同じであっても、各自の操船経験年数や操船経験船舶の大きさといった航海経験によって、タイミングや内容に違いがあるように観察された。状況認識は「見張り」という言葉の中の一部として重要と認識しながらも、状況認識の内容や認識された状況への対応方法は異なった。これらに対して現場においては「引き出しの数を多く持つこと」という言葉で検討することの重要性を表現しており、安全教育の一つのポイントであると考えられた。また「当たり前のことを、馬鹿にせず、ちゃんと行う」という言葉で研修が行われていたが、これについては並行する心理学的知見の調査としては、なぜ当たり前のことを実行に移せないのかを理解する必要性を指摘する研究もあり、これも安全教育のポイントになるであろうと推察された。眠気の緩和作業については、多くの船社では前方注視を指導しているために別作業に対しての理解を得ることができなかった。これについては普段の運航中に行われている作業が眠気を緩和している可能性を学術的にデータで示さなければ現場の理解を得ることができず、引き続き実験を継続してデータを蓄積する必要があると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた便乗調査が船社の都合と研究者の都合が合わず実施できなかったことは、計画の遅延を予測させた。しかしながら、操船シミュレータを用いた学内での研修や船社の協力を得て調査を行った。また当該船社が所有する操船船シミュレータ研修に参加し調査させていただくことができた。その結果、便乗調査と同等のデータを収集することができたと考える。このデータを用いて安全教育プログラム内容を検討した。しかし船社との議論の進捗に遅れがあり安全教育プログラム案が完成していないことに問題があるが、ある程度の合意には至っていると評価する。このため来年度の研究においてプログラムの試行実施は可能であると考えている。一方で眠気緩和のための作業に関しては、実際の運航現場における指導内容と祖語があるために安全教育プログラムに含めることは断念せざるを得ない。しかしながら眠気緩和が望まれれていることは先行研究や現場でのヒアリングにおいて明らかであるため、引き続き学術的研究を進める意義がある。したがって船社の安全教育プログラムには含めることはできないが、学生の協力を得て研究を進めることとした。以上から、研究成果を基に来年度において具体的な安全教育プログラムの試みが可能となったと考え、上述の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には眠気の緩和作業と安全作業教育プログラムの試行を計画していた。しかしながら、現在各船舶に指示している内容と相いれないために、眠気の緩和作業に対する理解を船社で得ることができなかった。このことから、眠気に関しては安全教育プログラムの中には入れず、本学学生の協力を得て実験を行い学術的データを取得することとする。安全教育プログラムについては船社の協力を得て実施する。現場が「引出し」と表現するいくつかのパターンを船社と議論しながら絞り込み、それを用いて操船シミュレータのシナリオに反映する。また平成28年度の研究から得られた、①状況認識の内容、認識された状況への対応、それらのタイミング、②当たり前のことを当たり前にできない原因を考える、という2点を反映する安全教育プログラムを検討する。これに加えて船社側の視点がいくつか入れて安全教育プログラムを策定する。そして策定された安全教育プログラムを試行しデータを得る計画である。安全教育プログラムを大学の所有する操船シミュレータを用いて実施する予定であるが、他の研究との重複や機器の故障の可能性もある。そこで他の操船シミュレータの利用や、船社における研修内において関係する要因部分のデータ取得も検討する。得られたデータは学部学生の協力を得るが、授業などで協力を得られない場合には外部の補佐を得てプログラム試行やデータ整理等を進める。
|
Research Products
(5 results)