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2015 Fiscal Year Research-status Report

昆虫やヒトの自然免疫系の網羅的理解につながる簡易実験の開発

Research Project

Project/Area Number 15K00994
Research InstitutionKogakkan University

Principal Investigator

中松 豊  皇學館大学, 教育学部, 教授 (00456617)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords昆虫 / 血球 / 免疫 / 食作用 / ノジュール形成 / 包囲化作用 / 教材開発 / アワヨトウ
Outline of Annual Research Achievements

平成27年度の目的に従い以下の1~3の実績を得た。
1、食作用を観察する際の血球の凝集を阻害する方法の検討 昆虫の血球の食作用の観察方法にはin vivo法とin vitro法があるが(澤と中松,2014)、いずれの方法を用いても血球が凝集し、食作用をしている個々の血球が観察し難くくなる。そこで身の回りにある凝集阻害剤を検討したところ、寄生蜂の毒液やパイナップルが高い凝集阻害効果を示した。
2、異物としてのアクリル絵の具を用いることの検討 これまで昆虫の血球の食作用を観察するのに、異物として墨汁を用いてきた。今年度はより短時間で見つけやすい異物およびその他のノジュール形成や包囲作用も観察できる異物の検討をおこなった。その結果、アクリル絵の具は色によって顔料の大きさに違いがあり、粒子の小さな青系統は食作用に適しており、粒子の大きい赤系統はノジュール形成や包囲化作用に適していることがわかった。
3、異物のメラニン化のしくみとノジュール形成および包囲化作用との関係について(1)メラニン化に関わるHSCの働きについて 異物のメラニン化にはHyperspread cell(HSC)という血球が関わっている(Kato, et al. 2014)。今回は数の少ないHSCが多量の異物にどのように対応しているか、また、メラニン化に関わる5種類のタンパク質のmRNA発現に関して検討を行い以下の結果を得た。HSCは分裂をせず、移動することによって対応する。メラニン化に関わるタンパク質のmRNAの発現はLPS2≧ PPO1≧ SPH>PPO2≧ PPAEの順番ある。
(2)寄生蜂が寄生するとなぜ異物はメラニン化しないかの検討 アワヨトウ体腔中の異物は寄生蜂の毒液があるとメラニン化しない。これはハチの毒液に含まれるLV8というアワヨトウのレクチンに類似するタンパク質によって、阻害されることを明らかにした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年度の研究計画は液性免疫であるメラニン化、細胞性免疫である包囲化作用とノジュール形成のin vitro 実験法における簡易実験の開発を主眼に置き、実験方法、供試昆虫、異物の検討をおこない、以下の1および2の実績を得た。
1食作用
異物については墨汁もしくはアクリル絵の具(青系統)を用いる。培地については生理食塩水もしくはPBSを用いる。体液量と反応時間については、体液量は昆虫の腹脚から針もしくははさみを使って1滴滴下し、反応時間は15分待つ。供試昆虫についてはチョウ目昆虫の幼虫が体液量が多いので扱い易いが、他の昆虫でも代替可能。
2ノジュール形成
異物については墨汁もしくはアクリル絵の具(赤系統)を用いる。培地、体液量、反応時間については食作用と同様におこなう。しかし、供試昆虫についてはやはりチョウ目昆虫が優れているが、コオロギやハスモンヨトウのようにノジュール形成を起こしやすい種類と、アワヨトウやカイコのようにそうでない種類が存在する。血球の凝集が遅い昆虫については反応時間が15分くらい、早い昆虫については体液滴下後すぐに観察すればよい。 しかし、包囲化作用については、in vivo法を使えば容易に観察できるが、in vitro法を使うと異物を包囲する血球の数が少なく完全な包囲化までは至らない。今後はあらかじめメラニン化された異物を使うか、スライドガラスに滴下する体液量を増やすなどの検討をおこない、in vitro法における血球の包囲化作用観察の教材化をおこなう予定である。

Strategy for Future Research Activity

平成28年度は液性免疫であるレクチンと昆虫の血漿成分と血球が協調して働く免疫系
の教材開発を検討する。
1アワヨトウのレクチンについての検討 レクチンは異物表面に付加されている糖鎖を認識できるタンパク質で、血球を凝集させたり食作用を促進させるなど細胞性防御反応に関わるタンパク質である(Kotaniら,1995,Biochem.Biophy.Acta.)。本年度はまずアワヨトウが持っているレクチンを同定し、これらの性質や役割を明らかにしていく。(中松、田中、澤担当)
2フェノール酸化酵素の働きを実感する酵素の簡易実験 平成27年度に明らかにしたメラニン化に関わるタンパク質のうち、フェノール酸化酵素の働きをフェニールチオ尿素などの阻害剤を用いて実感できる簡易実験の開発をおこなう。(中松、澤担当)
3市販のレクチンを用いた昆虫血球の凝集実験 in vivo法およびin vitro法を用いてコンカナバリンA(ConA)、アカインゲンマメレクチン(PHA)など数種類のレクチンに対する昆虫の血球の反応を観察し、メラニン化、ノジュール形成、包囲化作用などの減少が現れた場合は教材化を検討する。(中松、澤担当)
4in vitro法における血球の包囲化作用観察の教材化 平成27年度にできなかったin vitro法における血球の包囲化作用観察の教材化についてあらかじめメラニン化された異物を使うか否か、スライドガラスに滴下する体液量を増やし、ある程度の血球を確保するなどの検討をおこないたい。(中松、澤担当)

Causes of Carryover

平成27年度におこなう予定であった、in vitro法における血球の包囲化作用観察の教材化の検討ができなかったため、その分の消耗品等の予算を次年度に送ったため。また、現在執筆中であるが、論文が出版されなかったため、それにかかる費用と、学会発表をおこなった場所が東京や大阪なので、実家に宿泊するなどして出費が抑えられたためと考えられる。

Expenditure Plan for Carryover Budget

27年度に行えなかった実験をおこなうに当たって、機器や試薬の購入に当てる。また29年度予定の開発した教材の評価にあたっての実践にも出費する予定である。

  • Research Products

    (6 results)

All 2016

All Presentation (6 results)

  • [Presentation] アワヨトウ幼虫の血球の1種であるHyperspreadcellの免疫機構における働き2016

    • Author(s)
      松谷広志、加蕨良晃、田中利治、中松豊
    • Organizer
      日本応用動物昆虫学会
    • Place of Presentation
      大阪府立大学
    • Year and Date
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [Presentation] カリヤコマユバチの毒液とポリドナウイルスが寄主の生体防御反応に及ぼす影響2016

    • Author(s)
      澤友美、田中美有、中松豊、加藤良晃、田中利治
    • Organizer
      日本応用動物昆虫学会
    • Place of Presentation
      大阪府立大学
    • Year and Date
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [Presentation] 寄主の変態をめぐる寄生バチと寄生バエの対立(その1)2016

    • Author(s)
      一木良子、中原雄一、田端純、中松豊、田中利治、中村達
    • Organizer
      日本応用動物昆虫学会
    • Place of Presentation
      大阪府立大学
    • Year and Date
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [Presentation] 昆虫の血球による食作用の観察条件について(総括)2016

    • Author(s)
      中松豊
    • Organizer
      日本生物教育学会
    • Place of Presentation
      東京理科大学
    • Year and Date
      2016-01-10 – 2016-01-11
  • [Presentation] 血球の凝集を阻害し食作用を観察しやすくする簡易方法の検討2016

    • Author(s)
      西村真耶、井上健人、中松豊
    • Organizer
      日本生物教育学会
    • Place of Presentation
      東京理科大学
    • Year and Date
      2016-01-10 – 2016-01-11
  • [Presentation] 昆虫の自然免疫の観察 -食作用・ノジュール形成・包囲化作用-2016

    • Author(s)
      中松豊、中村生希、武川栞緒里、西村真耶、澤友美
    • Organizer
      日本生物教育学会
    • Place of Presentation
      東京理科大学
    • Year and Date
      2016-01-10 – 2016-01-11

URL: 

Published: 2017-01-06  

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