2016 Fiscal Year Research-status Report
昆虫やヒトの自然免疫系の網羅的理解につながる簡易実験の開発
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15K00994
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
中松 豊 皇學館大学, 教育学部, 教授 (00456617)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆虫 / 血球 / 教材開発 / 細胞性免疫 / 食作用 / 包囲化作用 / ノジュール形成 / アワヨトウ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の目的に従い以下の1~3の実績を得た。 1免疫の初期段階で働くアワヨトウのレクチンについての解析:アワヨトウの異物認識には、タバコスズメガのImmulectin-2と相同性の高いLPS2というC型レクチンが関与していることが明らかになり、分子生物学的手法を使ってその塩基配列を決定し、抗体を作成してその発現するタイミングや発現箇所を特定した。また、このレクチンは、包囲化作用よりも食作用やノジュール形成において遺伝子発現が早いことが明らかになった。このことは異物に対する包囲化作用よりも食作用やノジュール形成の方が早く対応することを裏付ける結果となった。 2フェノール酸化酵素の働きを実感する酵素の簡易実験:スライドグラス上にアワヨトウの体液を滴下したものを2つ用意し、片方にはフェノール酸化酵素阻害剤であるフェニールチオ尿素(終濃度8%くらい)、もう片方にはPBS(pH7.4)を入れることにより、体液の黒化度を目視で比較すれば、フェノール酸化酵素の働きを容易に実感できる簡易実験になることがわかった。 3in vitro法における血球の包囲化作用観察の教材化:エッペンチューブにアワヨトウ6齢の体液を入れて、終濃度8%になるようにフェニールチオ尿素を入れる。そこにセファデックスビーズG15を入れて一定時間振盪した。その後沈殿をスライドガラス上に移し顕微鏡で観察すると、約1時間で血球の包囲化作用が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に引き続き28年度の研究計画は液性免疫であるメラニン化に続く細胞性免疫である包囲化作用のin vitro 実験法における簡易実験の開発を主眼に置き、実験方法、供試昆虫、異物の検討をおこなった。27年度にすでに食作用やノジュール形成に関する簡易実験の開発は終わっているので、自然免疫を実感できる簡易実験の開発については包囲化作用に限定して行い開発することができた。 また、アワヨトウの細胞性免疫に関わるLPS2というレクチンの同定やLPS2の遺伝子発現についても経時的に調べることができた。その他メラニン化に関わると考えられているタンパク質である PPO1、SPH、PPO2、PPAEの遺伝子の経時的発現も考慮すると、メラニン化やその下流域で起こる血球の凝集による包囲化作用形成のメカニズムの一部を解明したことになり、これらの酵素タンパク質を用いる簡易教材開発も視野に入れることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1市販のレクチンを用いた昆虫血球の凝集実験:28年度にできなかったので、29年度に行うことになった。in vivo法およびin vitro法を用いてコンカナバリンA(ConA)、アカインゲンマメレクチン(PHA)など数種類のレクチンに対する昆虫の血球の反応を観察し、メラニン化、ノジュール形成、包囲化作用などの減少が現れた場合は教材化を検討する。(中松、澤担当) 2 レクチンに対するヒトと昆虫の血球の共通性:上記の市販のレクチンの中で、ヒトと昆虫の血球に凝集反応を引き起こすものを見つけ、先行文献などをもとにその共通性について検討する(中松、澤担当)。 3 教材の評価:これまで開発した簡易実験について、学校や科学館、博物館などを利用して、学生、生徒、児童などに実践してもらい、アンケートなどを行ってその結果を評価する(中松、澤担当)。
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Causes of Carryover |
平成28年度に行う予定であった、市販のレクチンを用いた昆虫血球の凝集実験ができなかったため、その分の消耗品等の予算を次年度に送った。また、現在執筆中であるが、論文が出版されなかったため、それにかかる費用の未使用分と、学会発表が行われた場所が東京だったので、自宅などを宿泊場所として利用でき出費が抑えられたためと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に遂行できなかった実験を行うに当たって、機器や試薬の購入および学会での成果の発表や論文の発行に出費する。さらに、29年度に予定の開発した教材の評価にあたっての実践等に出費をする予定である。
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Research Products
(6 results)