2016 Fiscal Year Research-status Report
もったいないエネルギーによるピコ発電システムの開発
Project/Area Number |
15K01000
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
山田 洋 仙台高等専門学校, 電気システム工学科, 准教授 (80302230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピコ水力発電 / エネルギーハーベスティング / アキシャルギャップ型コアレス発電機 / マグネットカップリング / ハイブリッド発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身の回りに有る「普段見過ごして捨てて」いる水流のもつ小さなエネルギーを電気エネルギーとして収穫する「エネルギーハーべスティング」技術を発展し、再生利用可能エネルギーの利活用を推進させることを目的とする。現在の新エネルギーとして定義されるサブMW級マイクロ水力発電、数kW級中小水力発電に対し、未利用領域である身の回りの水流を利用する数W級のピコ水力発電を研究対象とする。 平成27年度は、低流量水流に適応する多極型ダイレクトドライブ方式の円板状アキシャルギャップ型コアレス発電機を試作検討し、低落差かつ開放型の無圧水路を対象とする「らせん水車」の設計および試作検討を実施した。その結果、試作発電機の性能を十分発揮できることを確認した。 今年度は、身の回りに有る水路として上水道に代表される水圧管路の水流を対象とする検討を進めた。水車と発電機との接続部分における軸封水の手段として、非接触でトルク伝達可能なマグネットカップリングを採用し、前述のアキシャルギャップ型コアレス発電機との構造の類似性に着目し、非接触トルク伝達と発電とのハイブリッドな機能を有する新しいピコ水力発電システムの基礎検討を行った。 有限要素法による電磁界シミュレータ(JMAG-Designer)を用いたトルク伝達特性と発電特性の計算結果より、ハイブリッド発電機として十分機能することを確認した。また、ハイブリッド発電機の簡易特性評価装置を試作し、回転数と電気的出力を検討した結果、非接触トルク伝達と発電との両立が可能であることを確認できた。 これらの成果は平成28年8月の電気関係学会東北支部大会および平成29年1月の高専シンポジウムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、初年度に汎用的な開渠を対象とした「らせん水車」の検討を進め、二年目は水圧管路を対象とした新しいハイブリッド発電システムの検討を進めた。これは、ピコ水力発電システムの小型化と高出力化を両立することを目的とするものであり、水圧と軸封水との問題解決のため非接触トルク伝達可能なマグネットカップリングを導入し検討を進めている。 科研費申請時は、初年度から水圧管路を対象とした実験環境を試作し検討する予定であったが、汎用水路としての開渠も研究対象として拡張したことから、結果として水圧管路の検討を進める時期が若干遅れている。当初の予定は、ハイブリッド発電システムの検討と併せて水圧管路で利用可能な水車の開発も進めるものであるが、水車の開発はいったん延期し、本システムの基幹となるハイブリッド発電システムの基礎検討を優先して実施した。 また、平成28年度は担任業務と本校改組に係る業務負担の増加に伴うエフォートの低下に対応しきれない部分もあり、研究の進捗に影響を及ぼしたこともやや遅れた一因である。しかし平成29年度はその状況も緩和されることもあり、当初の予定通りのエフォートで取り組むことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上水道に代表される水圧管路にかかる水圧は高いため、システムを密閉環境とすることにより軸部分の漏水の問題が低減できる。本研究ではその軸封にマグネットカップリングを活用し、ハイブリッド発電機としての特性改善を図るが、平成29年度前半は前年度に引き続き精度の高い実験環境を試作し、まずは大気中において発電機としての出力向上を目指す。ここで、発生した電力を蓄電するシステムも並行して構築する。発電機と蓄電のシステムを併せることにより、電気的な機能を集中して検討することができる。 一方、水車の設計・試作について、ハイブリッド発電システムの簡易モデルを構築し、システムとしての動作検証とその性能改善に向けた検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は主に非接触トルク伝達装置の検討とハイブリッド発電システムの基礎検討にあてたため、水車の試作検討にやや遅れが生じた。当該予算は水車の設計・試作を予定したものであり、実施の遅れが次年度使用額が生じた主な理由である。よって、この遅れに伴う研究は次年度に実施し予算執行することを検討している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はハイブリッド水力発電システムのモデル構築を実施するため、水車の設計・試作に予算を執行する。また、非接触トルク伝達と発電とを組み合わせたハイブリッド発電および蓄電システムの試作検討にも予算を執行する。これらの実験的解析とともに、電磁界解析と構造解析とを組み合わせた検討に対する予算執行も検討する。
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