2016 Fiscal Year Research-status Report
失敗から学ぶ日越ビジネスコミュニケーション指導法の開発
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15K01018
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西谷 まり 一橋大学, 国際教育センター, 教授 (80281004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不安 / 失敗 / ビジネスコミュニケーション / ベトナム / 変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムにおいて日本企業で働く日本人社員5名を対象に、ベトナム人社員との間で不安や失敗がどのような場面で生じ、それをどう捉えているのかPAC分析を用いたインタビュー調査を行った。そのうち、2名は1年前から継続的に調査を行っている対象者なので、滞在期間が長くなるとどう変化するのかについても調査を行った。その結果、2名ともベトナム赴任初期には言語に関係する不安や失敗を強く認識しているが、ベトナムでの仕事歴が長くなるにつれて、日越の働き方の違いやその根底にあるベトナム人の価値観、ベトナムの法律・社会システム自体から生じる不安や不満・失敗をより強く認識する方向に変わってきたことが明らかになった。 ベトナムと比較するためにカンボジアでも、プノンペンの日本企業で働く日本人社員とカンボジア人社員を対象にPAC分析を用いたインタビュー調査を行った。日本人とベトナム人は不確実性の回避傾向、長期主義的傾向の強さなどで大きく異なる傾向を持つことがわかっている。日本人は不確実なものを回避しようと言う傾向が非常に高いが、ベトナム人は非常に低い。「ベトナム人・カンボジア人社員は現状に満足している」と日本人社員が感じるのは、日本人社員のほうがより長期主義的傾向を持つことに起因すると考えられる。カンボジア人にも同様の傾向があることが明らかになった。しかし、ベトナム人との違いも見られた。この点については今年度さらに分析を加える予定である。 今回の調査結果を踏まえ、日本人社員、ベトナム人社員双方に対する教育・研修に必要な内容を考えるならば、まず第一に、「日越ビジネスコミュニケーションで生じる不安や失敗は言語の問題が大きな原因とは限らない」ということを共通認識としたうえで、日越の国民性の違い、働き方の背後にある価値観をお互いに知ることが重要だということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には質問紙による量的調査とPAC分析を用いた質的調査を行い、日本人社員とベトナム人がビジネスコミュニケーション上に感じる不安と失敗の捉え方を概観した。 2年目には質的調査の対象者を増やし、縦断的調査を行うとともに、カンボジアにも調査対象を広げてベトナムと比較を行うためのデータを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①PAC分析による縦断的調査を継続するとともに、②カンボジア調査の分析をさらにすすめる。③これまでの調査結果と考察を踏まえた社員研修の実施を計画実施する。
①調査対象者のうち1名はすでに帰国して本社に勤務し、もう1名はベトナムだけでなく、台湾、タイ、シンガポールにも活動の場を広げているので、ユニークなデータ収集が可能である。 ②平成28年度にカンボジアで行ったPAC分析の調査では、日本人社員とカンボジア人社員のデータを合計約15データ収集している。このデータと、これまでベトナムで行ったベトナム人社員と日本人社員合計20データを比較して、カンボジアとベトナムの相違点、共通点を明らかにしていきたい。 ③日本においてベトナムと関係のある日本人社員向け、ベトナムですでに働いている日本人社員、日本企業で働くベトナム人社員を対象に研修の計画をたて、実験的な研修を行う準備をする。平成29度中に可能であれば、実施し評価する。
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