2015 Fiscal Year Research-status Report
カレッジ級数学学習者を理解から定着へと導くための動的・静的幾何連携システムの開発
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15K01037
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
金子 真隆 東邦大学, 薬学部, 准教授 (90311000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 俊二 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00213629)
高遠 節夫 東邦大学, 理学部, 訪問教授 (30163223)
山下 哲 木更津工業高等専門学校, 基礎学系, 教授 (40259825)
阿原 一志 明治大学, 総合数理学部, 教授 (80247147)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | KeTCindy / Cinderella / TeX / 2次元描画 / 授業録画の分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、動的幾何ソフトウェアとして有名なCinderellaにおける描画のための手続きを、数学(教育)における紙媒体の代表的な編集手段となっているTeXの描画コードに変換するためのパッケージであるKeTCindyを作成し、Cinderellaにおける数学的対象の動的な提示と、TeXで編集された文書中の静的な提示との連携を可能にするシステムを構築すると同時に、こうした方法で作成された教材を実際の授業で用いた状況を画像等を通して分析することで、システムの有効な教育利用の方法を追求することである。KeTCindyの作成について、本年度は特に2次元描画に関する開発が中心となったが、円や多角形などの幾何図形や関数のグラフなどの描画に加え、TeXでは作成に手間がかかる表を手軽に作成する機能や、外部から取り込んだ画像をなぞる形で自由曲線を描画するためにBezier関数を利用する機能など、多くの機能を取り込むことができた。さらに、TeXを用いた場合非常に手間のかかる、PDF文書中のアニメーションの生成についても、非常に簡単にできるようになった。こうした機能を用いた教材事例を集積するためには、ユーザーを増やしてく必要があるため、日本国内はもとより、海外でもKeTCindyに関するワークショップを数多く開催した。現状では、参加者がKeTCindyによる教材を通常の授業で恒常的に利用するまでには至っていないが、研究代表者の所属機関では少人数のケースを含めた多くの授業で利用事例を積み重ね、その一部については録画などによる記録を行った上で、利用効果に関する分析を行った。その結果、特に微分積分などの変化する量を扱う分野で、PCの画面上で図形を動的に動かしながら概念を把握すると同時に、紙媒体上で数式表現との対応を確認するといった、異なる種類の提示の連携の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KeTCincyの開発について、2次元描画に関する機能については一通り整備され、授業などの教育現場で利用するのに必要な要素はほぼ網羅された。また、アニメーションなどの、動的幾何ならではの描画を、Cinderellaのスクリプト機能を利用してTeX文書中にうまくとりこめるようになり、KeTCindyならではの強力な描画手段となっていくと考えられる。 数多くのワークショップの開催によって、この1年間にKeTCindyの機能に触れた数学教育関係者はかなりの数になり一定の成果を上げたが、参加者がその後、自身の授業の中で恒常的に教材作成に用いるまでに至っていないという問題もあって、今後検討すべき課題である。 利用効果の検討については、完全とは言えないながらも、KeTCindyを用いた教材作成を積み重ね、かなり多くの授業で実際に使用し、その記録画像の等分析から、微分積分を中心とした多くのテーマで、KeTCindyならではの効果が期待されるとの手応えを得ることができた。 分析のために本科研費で購入したStudiocodeシステムを利用して、授業の中で用いた動的な提示を解説音声とともにスクリーンキャプチャにより保存し、内容に応じたタグ付けをした上でひとつのファイルに保存するという作業フローも確立された。これは本研究から生じた副次的な成果であるが、今後、授業の振り返り用教材の作成手段として有効に活用できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
KeTCindyの開発に関する今後の課題としては、まず3次元描画への対応が挙げられる。前身となるKETpicでも稜線を用いた描画が可能ではあったが、KeTCindyにおけるinteractiveな描画と整合させるためには、計算速度をいかに高めるかということが大きな問題となる。一部、外部のソフトを呼び出すなどの手段を今後検討したい。 教育利用に関しては、学習者自身がCinderellaによる教材をiPad等の上で操作してみる試行を計画していたが、微分積分などのテーマではスクリプト言語による操作が欠かせないところがあり、現状では非常に厳しい面がある。現在、Cinderellaの開発チームにより、iPad等の上でこうした高度な数学的対象を扱うためのスキームが開発されているので、その進捗状況を見ながら学習者自身に操作させる可能性を検討したい。 教育効果の検討については、本年度得られた手応えをより客観的なものにすると同時に、分析結果を第三者がわかりやすい形にまとめることが必要である。Studiocodeシステムを活用して動的な提示の状況を音声も交えて記録し、これに学習者のワークシート上での作業状況の分析結果を対照する形で、効果の具体的な内容を明確化すること目指したい。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、Windows系の新しいOSに対するシステムの動作確認を行うために、該当のPCを購入することを計画していたが、システムの機能が増えて、従来の想定よりも高いスペックのものを購入する必要が生じ、次年度の配分とあわせて購入することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Windows10を搭載した、10万円程度のPCを、システムの動作確認用として購入する予定である。残りの配分額については、研究打ち合わせやワークショップ開催に伴う旅費、授業観察記録のより効率的な保存に必要となるPC周辺機器と学習者の行動に関する遠隔でのコーディングに必要となるiPad等の機器とそれに対応したソフトを購入するための費用として使用する予定である。
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Research Products
(13 results)