2016 Fiscal Year Research-status Report
災害時と平常時の活用を想定した長距離無線LAN気象情報システムの開発
Project/Area Number |
15K01061
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
黒田 卓 富山大学, 大学院教職実践開発研究科, 教授 (80262468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖野 浩二 富山大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (20372477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディアの活用 / 防災無線LAN / 気象情報収集 / 学習環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震、火山噴火、台風、大雨といった自然災害は、毎年のように発生している。災害発生時に学校は、地域住民の避難場所として、人々の生命を守る重要な役割を担っている。現在、生活のほとんどを電気エネルギーにたよっているが、災害時にはこれが断たれることも多く、同時に重要な連絡手段も断たれてしまうことも多い。 そこで本研究では、災害時に緊急連絡手段として、電源等も含めた自立型の長距離無線LANシステムを構築し、避難所として利用される学校への設置の可能性を探る。また、平常時には気象情報収集システムとして稼働させることにより、学校での学習活動に利用できるようにするだけでなく、災害時にスムーズに利用を開始できる方法を検討している。 本年度は、昨年度作成したシステムを見直し、継続的にデータを収集した。長距離での無線LANの接続については、近隣の無線LAN環境との干渉や、樹木による電波遮断の影響が大きく、当初の想定ほどうまく飛ばないことがわかった。アクセスポイントの配置を工夫し、可能な限り距離を縮める工夫や、季節による樹木の成長等も考慮した設置が必要であり、また、周辺の無線LAN状況の変化にも常に配慮する必要があることがわかった。定常的に利用しながら、通信状況を常に把握しておくことが、災害時にも安定して利用するためにも重要である。 気象サーバとして単体でデータを蓄積することは、十分に可能であることも明らかとなった。これらのデータをどのような形で、学習情報として提供すれば、学びにつなげることができるのかも合わせて、今後考えていく必要がある。 気象サーバとして太陽光発電と蓄電池で運用することの可能性についても検討を行った。基本的には問題ないが、可能な限り消費電力をおさえたり、蓄電池の性能を維持するなど改良を加えていく必要がある。同時に太陽光発電の効率を上げる工夫も必要であることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本システムの構成要素の一つである、気象サーバについては、安定して運用を行うめどはついてきている。反面、長距離無線LANの通信については、未だ安定して運用できる状況になく、その要因として、外的な電波干渉や、設置位置の問題等クリアにしなければならない課題も多く残っている。 本年度の計画では、プロトタイプを学校等に設置することを予定していたが、システムの安定性を保証できるところまで作り込むことができず、大学内での実験の実施に留まっている。短距離での通信はある程度可能であることまでは明らかになっているため、むやみに遠距離にこだわるよりも、中継方法等を工夫するなど、システム全体の安定性を考慮しながら、通信範囲を伸ばす方法も検討する必要があると考えている。 気象サーバに利用しているRuspberryPiについても、ある程度の安定運用は可能であることがわかったが、電源電圧の低下等による動作不具合が発生した場合、最悪の場合システムが破壊され、電圧復旧時に再起動できない場合がある。電源の安定化、システム故障時の修復方法の検討などを進め、より安定して運用できるシステムを目指すことも重要と考えている。 システムの今後の普及を考えた場合の、コスト面の問題も残されている。無線LANを長距離で接続する方法を当初想定していたが、安定した通信を行うためには、中継ポイントの設置等が必要である、中継ポイントが増えれば増えるほど、必要とされる機器数も増え、コスト増につながる。ただ、一つ一つの機器の価格は、長距離用のものを利用するより安価に抑えられる可能性もあり、これらのバランスを考えていく必要がある。 気象サーバも含めたIoT機器を狙ったサイバー攻撃も増えてきている。今回のシステムについても、遠隔アップデート、ファイヤウィールの設定、無線LANの盗聴防止対策なども十分に検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の研究の成果を踏まえ、より実用的で安定的に運用できるシステムの開発を目指すため、システムの安定性の向上を研究の中心に据え、研究を進めていきたいと考えている。また、実用的な部分では、システムの価格の問題も重要なポイントであるため、コスト面での最適化なども含めて研究を進めていきたいと考えている。 気象サーバについては、安定して運用を行うめどはついてきているものの、電源電圧の変化等に対するシステムの安定運用やデータの保全などについて考える必要がある。現在のシステムでは、気象サーバを動作させているコンピュータ内に設置したSDメモリに記録を行っているが、外部メモリを追加するなどの方法を検討し、バックアップや、システムが破損した場合の起動を外部記憶装置から実施できるなどの対策を検討したい。 また、セキュリティの問題も非常に重要になってきている。気象サーバは直接インターネットに接続せず、独自のネットワークとして構築しているが、システム全体としては、インターネットにもつながる。そのために必要となるシステムの設定、ファイヤウォール機器等を追加して、 クリティカルポイントに設置するなどのシステム構成全体のセキュリティ対策の見直しが必要となると考えている。 無線通信部分については、中継ポイントを用意し、メッシュを小さくする方法や、別の通信方法の導入なども検討しながら、より実用的に安定した運用が可能となる方法を探っていきたい。ただし、これらの方法にはコスト面の増加の問題がでてくる。どのあたりがバランスポイントとなるのかを十分に検討しながら、システム全体の最適化を図っていく必要がある。 リモートメンテナンスなどの方法の改善を早急に対応し、できるだけ早い段階で、実証的なデータ収集にすすめるように研究全体の一層の推進を図っていきたい。
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