2015 Fiscal Year Research-status Report
問題文の表現内容に起因する難易度を考慮した計算問題演習システムの開発
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15K01107
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
津森 伸一 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (50342051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 和典 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (70330157)
山住 富也 名古屋文理大学, メディア学部, 教授 (90240001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 計算問題 / 学習支援 / 問題演習 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,多数の計算文章題が格納された問題データベースより,学生の理解状況に応じた問題を抽出し出題することを特徴とする,個人適応型の問題演習システムの実現を目指している.数学系科目を苦手とする大学生を対象としており,就職試験に幅広く採用されているSPIの問題を利用することにより,学習モチベーションを維持しながら数学の学力を向上させることを狙っている. 平成27年度は,計算文章題に使われる問題表現やパラメータが問題の難易度に与える影響を調べることが主要な研究の目的であった.これは,同じ公式や解法を用いて解くことができる問題であっても,整数のパラメータを分数に代える等の操作により,問題の難易度が変化するという仮説に基づく.このことを利用すれば,ある計算問題に不正解した学生に対し難易度の低い表現を持つ問題を抽出して出題したり,逆に正解した学生に対し難易度の高い問題による深い知識の確認が可能になる.本研究では,SPIの主要な出題単元である「速度計算」の問題を用い,同じ公式に基づきながら異なる表現を持つ問題を大学生に解答してもらい,その分析結果から問題表現と難易度の関係を明らかにすることを試みた. そこで,速度計算の代表的な公式である「速度×時間=距離」に関して,表現の異なる10種類の問題を計23問作成し,ペーパーテストの形式で,100名程度の大学生に解答してもらった.次に,23問の問題から全ての2問ずつの組合せを抽出し,それぞれの組合せについて正誤状況の比較を行った.この結果,全ての組合せをi) 2問の難易度が同等,ii) 一方の問題の難易度が他方より高い,iii) 両者の難易度の関係が不明,の3つのグループに分けた.更に結果に基づき問題表現方法を難易度順に並べることを試み,問題表現の違いにより難易度を決定する方法を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,計算問題の難易の決定方法と学習者の理解状況のモデル化を行うことを目標としていた.具体的には,i) 計算問題の正解/不正解の要因の検討,ii) 実験用テスト問題及びアンケートの作成及び実施,iii) テスト・アンケートの分析と計算問題の難易モデル及び学習者モデルの検討の3つが課題だった.i)については,研究代表者・分担者間の数回の協議により10種類程度の問題表現方法と正解/不正解の要因を検討した.またi)の結果に基づき,ii)の実験用テスト問題を作成し研究分担者の所属する大学生約100名を対象としたテストを行った.当初はCBTによるテストと学生の解答過程のアンケートを併用する予定だったが,ペーパーテストを用いることにより両者を同時に実施することにした.iii)については,ii)の結果に基づく分析を行い問題の難易度の決定方法をモデル化した.学習者の理解状況については問題の難易度を利用した数値化を行うことにより表現する方法を検討した. 検討の段階において若干の方針変更はあったが,当初の目標はクリアしており,概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,学生の理解状況に応じた計算問題の出題戦略のモデル化と計算問題演習プロトタイプシステムの実装を計画している.具体的には,問題の正誤結果や過去の解答履歴に基づき,問題データベースから最適と思われる問題を抽出・出題するモデルを検討する.このモデルに基づき独自のプロトタイプシステムを開発する.また,システムの開発と並行して,問題データベースに格納する問題データを作成する.データはSPIに出題される学習単元の中から重要と思われる単元を幾つか選択し,研究代表者・分担者が協力して実施する. 平成29年度は,開発した計算問題演習プロトタイプシステムの有効性検証とシステムの改良を行う.まず,システムをサーバ上で公開し,研究代表者・分担者の所属する大学生を中心とした評価実験を行う.続いて,評価実験の結果を分析して平成28年度に検討した出題戦略を見直し,必要に応じてプロトタイプシステムの機能修正や機能追加を実施する.更に,平成28年度中に実装できなかった問題データの追加実装を行い,計算問題演習システムを完成する予定である.
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属大学変更に伴い当初使用予定であったレーザプリンタを利用できなくなったため,消耗品であるトナーを購入しなかった.現所属においてプリンタを新規購入したが価格差が大きく差額が生じた.また,当初予定していたノート型パソコンを安価なキーボード付きタブレット型のパソコンに変更したため差額が生じた.また,研究代表者による国際会議での発表を計画していたが,投稿スケジュールが合わず国内会議での発表に代えたため差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在国際会議の論文を提出しているが,アクセプトされた場合に要する交通費が当初の計画より高額になる見込みであるため,平成27年度の残余金の一部を充てる.また,国内会議での発表も当初より多い回数を計画しており,交通費が不足した場合に平成27年度の残余金の一部を充てる.
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