2018 Fiscal Year Research-status Report

明治期日本における医療情報の伝達と伝達対象による質の変化

Research Project

Project/Area Number	15K01121
Research Institution	Juntendo University
Principal Investigator	月澤美代子順天堂大学, 医療看護学部, 非常勤講師 (40311980)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2020-03-31
Keywords	医療情報の伝達 / 医療情報誌 / 注射器 / 19世紀 / 医学史 / 身体 / 生殖
Outline of Annual Research Achievements	明治期日本における医療情報の伝達対象に応じた「切り分け」と「質の変化」を明らかにするために、文献資料の分析と、現地調査によるモノ資料の検討、さらに、仮説に基づく医学史的な検討を組み合わせて研究を進めた。地域で活動する「開業臨床医」および「一般民衆」への医療情報の伝達と普及、さらには、『医療情報誌』を主宰する医療者の活動に焦点をあてて、次の１，２のような成果をあげた。１．医療専門職の再編成過程に伴う、医学・医療情報の伝達対象に応じた「切り分け」と「質の変化」に関して、明治20年代を中心にコカイン局所麻酔、ツベルクリン皮下注射に焦点をあてて医学史的観点に立った検討を行った。このうち、コカイン局所麻酔に関しては、1887（明治20）年に第一号が刊行された医療情報誌である『順天堂医事研究会報告』を舞台に展開された日本各地の開業臨床医たちによる集団的な医療技術評価に関して、鹿児島県医師会館で行われた第119回日本医史学会の学術大会で口頭発表したうえ、『日本医史学雑誌』に、「1887-90年『順天堂医事研究会報告』における集団的技術評価と医療情報の普及・共有―コカイン局所麻酔を事例として―」と題した原著論文を掲載した。 2. 千葉県佐倉市・佐倉順天堂第４代病院長・佐藤恒二（1878-1952）の蒐集した明治期の注射器の現地調査に基づく研究をさらに進展させ、今回発見された注射器を使用した佐倉順天堂における臨床実践に関する研究を進めた。成果の一部は、2018年12月に佐倉市の国立歴史民俗学博物館で開催された佐倉市主催の市民公開講演会で発表した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 千葉県佐倉市で発見された医療器具の現地調査から得られた成果に基づき、平成28年度後半から研究目的に沿って具体的な研究計画の一部変更を行った。変更後の研究は順調に進んでいるが、研究成果のとりまとめに関しては、やや遅れが生じている。
Strategy for Future Research Activity	今年度は最終年度として研究成果のとりまとめに力を注ぐ。医療専門職の形成過程に伴う、医学・医療情報の伝達対象に応じた「切り分け」と「質の変化」に関して、ひきつづき、明治20年代を中心にコカイン局所麻酔、ツベルクリン皮下注射に焦点をあてて医学史的観点に立った検討を行う。読者対象に応じて多様に分化しつつある医療情報誌、新聞、官報等、さらには実際に医療現場で使用された医療器具を対象に、文字情報と器物から得られる情報を元に、多様な層に分かれつつある「医療専門職集団」と「一般民衆」、さらには、その間を仲介する「医療啓蒙者」の活動を分析して、研究目的に沿った研究成果をまとめる。
Causes of Carryover	平成28年度後半以降に行った研究計画の見直しと一部変更のために、研究成果のとりまとめが遅れており、次年度使用額が生じている。今年度はこれまで検討してきた史料の整理と研究成果のとりまとめに向けて研究予算を使用していく予定である。
Remarks	月澤美代子、遺された医療器具が教えてくれること―佐倉順天堂第四代院長・佐藤恒二蒐集注射器の調査と分析―、佐倉学リレー講座（千葉県佐倉市市民公開講座）：2018年12月22日、国立歴史民俗学博物館