2016 Fiscal Year Research-status Report

産業界からみた科学技術動員-石川一郎文書を中心史料として-

Research Project

Project/Area Number	15K01122
Research Institution	Tokyo Denki University
Principal Investigator	田中浩朗東京電機大学, 工学部, 教授 (70240900)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords	石川一郎 / 科学技術動員 / 産業界 / 化学工業 / 化学工業統制会 / 戦時動員 / 第二次世界大戦 / 技術交流
Outline of Annual Research Achievements	本研究の目的は，第二次世界大戦中に化学工業統制会会長を務めた石川一郎(1885-1970)の個人文書『石川一郎文書』(東京大学経済学部図書館所蔵，マイクロフィルム版，全279リール)を中心史料として用い，「産業界から見た科学技術動員」の実態を解明することである。平成28年度は，石川が化学工業統制会会長の立場で関わった政府関係機関および民間の諸団体・企業に関する文書(全127リール中入手済64リール)をサーベイし，昨年度と同様に科学技術動員に関連する資料の探索と目録作成を進めながら，化学工業統制会が科学技術動員にとって果たした役割について検討した。平成28年度の調査で明らかになったことは以下の通りである。石川が戦時中に関わった政府関係機関は多数に上るものの，技術関係でまとまった資料は科学技術審議会関係など，それほど多くない。民間機関についても同様であり，まとまった資料が残されているのは有機合成化学協会など一部に限られる。経済界全体の戦時科学技術動員への対応を見るには，統制会よりも一段上の団体である日本経済連盟会や重要産業協議会の資料が有用である。本研究は，まず膨大な資料のサーベイを行うという性格から，すぐに論文となるような成果が出にくいことが予想されるため，研究の途中で作成されるデータやそこから得られた細かい知見をできるだけ速やかに公開できるよう，ウェブサイトの公開および研究の進捗状況の随時掲載を予定していた。平成27年度はウェブサイト(http://i-ishikawa.info/)の公開を行ったが，平成28年度は目録データベースの構築と一部のデータ入力を行い，同ウェブサイト上で公開した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 資料のデータベース化に予想以上の時間がかかり，予定通り進捗しなかったため。
Strategy for Future Research Activity	サーベイした資料の全体像を明らかにするには，入手資料全体のデータベース化が不可欠であるが，現在のペースでそれが達成できるか不安であるため，データベース入力項目を厳選し，データベースのとりあえずの完成を目指す。そして，石川一郎文書の分析から見える戦時科学技術動員体制の新たな側面を明らかにする。
Causes of Carryover	調査の結果，本研究に関係の薄い資料が収められたマイクロフィルムのリールの購入は行わず，それで浮いた資金を本研究に関連する他の重要資料の購入に充てることとしたため。
Expenditure Plan for Carryover Budget	平成28年度に一部購入した「通産政策史資料オンライン版」（丸善雄松堂刊）など，これまで容易に利用できなかった政府側資料の収集・利用を行い，民間側資料との突き合わせが行えるようにする。