2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01125
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小島 智恵子 日本大学, 商学部, 教授 (70318319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学技術史 / 原子力エネルギー / 放射性廃棄物 / 最終処分 / 廃炉 |
Outline of Annual Research Achievements |
①フィンランド・オルキルト原子力サイト視察:フィンランドのオルキルト原発の視察を行った。稼働中の原発サイトの中には入れなかったが隣接する原子力ビジターセンターにてこちらの指定した動画を視聴し展示を閲覧した。フィンランドが使用済み核燃料の処分としてワンスルーを選択した理由とオルキルトの地盤の地質学的説明を中心に解説して頂いた。オルキルトサイト内にある地下最終処分場に関しては、夏季の指定された日時において団体のみ見学を受け付けいるため、今回は視察できなかった。地下最終処分場の視察は平成29年度に実施したい。 ②フランス・クレイ-マルビル原子力サイト視察:フランスのクレイ-マルビル原子力サイトにて実際に解体中の高速増殖炉スーパーフェニックスの作業現場を視察した。また視察後にフランス電力クレイ-マルビルサイト技術長のDeroubaix氏と約30分間お話する機会を得、高速増殖炉廃炉における技術的困難について具体的にご教示頂いた。高速増殖炉解体技術は日本ではまだ行われていないものであり、プルトニウムの処理・処分についてもフランスが先行している。今回は特に使用済み核燃料に含まれる放射性廃棄物を核変換することにより半減期を減少させる研究について調査した。 ③フランスの放射性廃棄物処分の歴史:フランス原子力庁CEA(Commissariat Energie Atomique以下CEA)アーカイブズの協力を得て、CEAの報告書やフランス人原子力研究者のマニュスクリプト等を収集し、放射性廃棄物処分の史的過程を調査した。その中で、1991年12月に制定された放射性廃棄物管理の研究に関する法律(バタイユ法)成立の歴史的背景を明らかにし、原子力大国フランスにおいても、1990年代から放射性廃棄物のバックエンドの問題に直面し、フランス政府の想像以上に最終処分地の選定が困難を極めたことを裏付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は予定通り、フランス・フィンランドで資料収集をし、フィンランドにて放射性廃棄物処分施設の視察を行った。フランスでの資料収集については、平成27年度と同様に主にCEAアーカイブズにて行ったが、フィンランドに関しては、初めての資料収集ということもあり、オルキルト原発サイトビジターセンター所有のものに限られた。またオルキルト原発サイト内の地下最終処分場に関しては、夏季の指定された日時において団体のみ見学を受け付けいるため、今回は視察できなかったので、平成29年度に再度オルキルトサイトを訪れるが、今回のフィンランド視察はその基盤となるものであった。 一方、フランスの放射性廃棄物処分に関する視察としては、平成27年度にインタビューを行ったCEAのGuidez氏の紹介で、フランス電力クレイ-マルビルサイトを視察し、技術長のDeroubaix氏にお話を聞くことができた。フランスとフィンランドの比較において、核燃料サイクルの基幹である高速増殖炉の有無は決定的な違いであるが、クレイ-マルビルサイトではフランスの高速増殖炉スーパーフェニックスが廃炉過程に入っている。平成28年度の予定に入っていなかったクレイ-マルビルサイトの視察ができたことで、フランスとフィンランドの使用済み核燃料の処分と政策に関する歴史を比較する際に新たな視点を導入することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、フィンランド原子力安全機構・POSIVA社にて資料収集を行い、オルキルト原発サイト内の地下最終処分場を視察して、平成28年度計画で一部実施できなかった部分を補う。フランスでは、CEAアーカイブズにて資料収集を継続する。またCEAのTurpin氏を通じて放射性廃棄物管理局庁(以下ANDRA)の地下最終処分担当者にインタビューを行う。なお、フランス・ビュールの地下最終処分研究所は既に視察を行ったが、ANDRA関係者からの説明しか受けておらず、最終地下処分反対派の意見は調査していない。そこで、地域情報フォローアップ委員会(CLIS)にてサイト住民の意見を調査し、またビュール研究所の情報誌LaVie du Laboの記載と比較検討する。 平成29年度は最終年度のため、これまでの分析結果をまとめ、2018年の3月の日本物理学会にて使用済み核燃料の処分と政策に関する歴史について発表を行う。また使用済み核燃料の処分についてのフランスとフィンランドの比較研究を論文にまとめるよう努める。なお、ミネルヴァ社から『現代フランス哲学入門』(2017年11月出版予定)の中でフランスの原子力開発に関するコラムの執筆依頼を受けており、既に原稿は提出済である。哲学分野の著作にも執筆するなど、幅広い範囲で研究成果を発信していきたい。
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