2015 Fiscal Year Research-status Report
新・未活用資料と定量的手法を用いた明治期以降わが国の人口史・疾病史・医学史の分析
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15K01129
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
逢見 憲一 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (70415470)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水島府県別生命表 / 琉球生命表 / “沖縄=伝統的長寿県”説 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,沖縄県公文書館資料,国立国会図書館資料等の資料の発掘と収集,基礎的分析を行い,帝国人口動態統計,琉球統計年鑑,沖縄県公文書館資料による人口動態調査報告,沖縄県統計課人口動態調査報告等のデータ入力を行った。 それらの資料およびデータを用いて,学術論文「水島府県別生命表における刊行経緯および作製方法の書誌的変遷と『<公刊前>1921-25年分府県別生命表』の作製時期」および「水島府県別生命表における死亡統計届出の正確性に関する認識の変化―“沖縄=伝統的長寿県”説との関連―」を執筆,日本医史学雑誌に原著論文として投稿し掲載可とされた。 平成28年度は,インフルエンザワクチン需要予測に関する研究,抗インフルエンザ薬の使用状況,全国医学部長病院長会議による医学教育カリキュラムの現状調査,帝国大学一覧等の資料の発掘と収集,基礎的分析を行い,1975(昭和50)年以降現沖縄および全国の男女別生年年齢各歳別死亡数,1899(明治32)年以降第二次大戦前の道府県別男女生年年齢別死亡数等のデータ入力を行う予定である。 また,それらの資料およびデータを用いて, 2000(平成12)年以降のわが国のインフルエンザ超過死亡を推計し,予防接種および抗インフルエンザ薬の効果について比較検討を試みる予定である。さらに,「沖縄と全国との平均寿命格差の年齢構造の長期推移―水島生命表,琉球政府生命表を中心に―」「沖縄における人口統計精度の長期推移―人口動態統計,国勢調査・住民基本台帳人口の比較―」「第二次大戦前・戦後の大学等の一覧(「帝国大学一覧」)を活用した医学教育カリキュラムの定量分析―“ドイツ医学” “アメリカ医学”の変容―」について研究を行う予定である。 なお適宜,研究順序やテーマの入れ替え・変更を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【資料の発掘と収集,基礎的分析】〈沖縄県公文書館資料〉琉球政府企画統計局「琉球生命表 第1回 1959年03月」。〈国立国会図書館資料〉琉球新報1959(昭34)年3月14日朝刊。 【データ入力】〈人口動態統計〉1899(明治32)年から1975(昭和50)年にかけての沖縄および全国の男女別生年年齢各歳別死亡数。帝国人口動態統計,琉球統計年鑑,沖縄県公文書館資料による人口動態調査報告,国立国会図書館所蔵の沖縄県統計課人口動態調査報告。 【明治期から第二次大戦前および占領期沖縄の生命表と平均寿命延長の年齢・死因構造】上記〈沖縄県公文書館資料〉〈国立国会図書館資料〉を活用し,学術論文「水島府県別生命表における刊行経緯および作製方法の書誌的変遷と『<公刊前>1921-25年分府県別生命表』の作製時期」および「水島府県別生命表における死亡統計届出の正確性に関する認識の変化―“沖縄=伝統的長寿県”説との関連―」を執筆,日本医史学雑誌に原著論文として投稿し,表現について若干修正の後掲載可とされた。 前者の論文では,水島治夫の作製した一連の府県別生命表のうち特に対象期間の最も古い1921- 25年分生命表について,第二次大戦後に作製に着手,1952(昭和27)年から1954(昭和29)年の間には実用に供すべく完成していながら,1960(昭和35)年まで公刊の機会を得られなかったことがと示された。 後者の論文では,水島は,『<公刊前>1921-25年分府県別生命表』以降は,乳児死亡の届出が不完全と断言して沖縄を分析対象から除外していた一方で,『<公刊前>1921-25年分府県別生命表』は,公表の機会を得られないまま,作製者水島自身の解釈とは正反対の文脈で,占領期の琉球政府と米国琉球民政府によって利用され,また近年の論者によって,“沖縄=伝統的長寿県”説の論拠とされていたことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
【資料の発掘と収集,基礎的分析】〈インフルエンザワクチン需要予測に関する研究〉厚生労働科学研究「インフルエンザワクチン需要予測に関する研究 H22-新興-指定-020」「延原弘章.わが国におけるインフルエンザワクチン接種率の推計.日本公衆衛生雑誌 2014」〈抗インフルエンザ薬の使用状況〉厚生労働省薬事・食品衛生審議会への各製薬会社の提出資料。〈全国医学部長病院長会議による調査〉医学教育カリキュラムの現状 1975(昭和50)年度-2007(平成19)年度までのまとめ CD版。〈帝国大学一覧等〉東京大学医学部年報,東京大学医学部一覧,帝国大学一覧等。 【データ入力】〈人口動態統計〉1975(昭和50)年から現在にかけての沖縄および全国の男女別生年年齢各歳別死亡数。人口動態統計,沖縄県衛生統計年報(人口動態統計編)公刊分および保管統計。〈人口動態統計〉男女生年年齢別死亡数,道府県別,1899~1943年。〈人口動態統計毎月概数〉1950(昭和25)年から1975(昭和50)年にかけての各都道府県の男女別年齢階級別死亡数。 【わが国のインフルエンザ超過死亡と予防接種および抗インフルエンザ薬の効果】上記資料を用いて,2000(平成12)年以降のわが国のインフルエンザ超過死亡を推計し,予防接種および抗インフルエンザ薬の効果について比較検討を試みる。 また,上記資料とデータ入力結果を用いて,【沖縄と全国との平均寿命格差の年齢構造の長期推移―水島生命表,琉球政府生命表を中心に―】【沖縄における人口統計精度の長期推移―人口動態統計,国勢調査・住民基本台帳人口の比較―】【第二次大戦前・戦後の大学等の一覧(「帝国大学一覧」)を活用した医学教育カリキュラムの定量分析―“ドイツ医学” “アメリカ医学”の変容―】の研究を行う予定である。 なお適宜,研究順序やテーマの入れ替え・変更を行う予定である。
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Causes of Carryover |
文献複写費用の残り。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献複写費用の残りの支払いに充てる。
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Research Products
(5 results)