2015 Fiscal Year Research-status Report
メロン種子遺存体の分子遺伝学的解析:選抜された果実の特性とその背景の推定
Project/Area Number |
15K01130
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
田中 克典 弘前大学, 人文学部, 特任助教 (00450213)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 育種 / 遺伝的多様性 / ウリ / 考古学 / 選抜 / 種子遺存体 / DNAマーカー / メロン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は作物に選抜が加えられたことを解明するために,メロン仲間の種子遺存体の分析に取り組んだ.具体的には,①大阪府から出土したメロン種子遺存体について,形状分析と既報で開発したDNA分析を実施するとともに,果実形質に関わるDNAマーカーの開発を行った.①では,メロン仲間の種子長は,弥生時代,奈良時代,平安時代へと移行するにつれて長くなっており,岡山県鹿田遺跡と同じく,数タイプのメロン仲間が時代の経過と共に導入されていることがわかった.一方,中世末から近世にかけては,さらに大型の種子長が認められ,メロン仲間の導入はさらに進められていた.これらのメロンにおいて細胞質型は主にIaであり,日本に固有の在来メロンであるマクワやシロウリと同じタイプであった.以上の結果は,近世まで大坂城周辺において数種類のメロンが利用されたこと、それらのメロン仲間が主にIa型の母系から普及しており,現生メロンの育成系譜と関連があることを示していた.②では,果実の糖度や酸味に関連する遺伝子(CmPH),果肉色に関連する遺伝子(CmOr)および果実の大きさと連鎖しているDNA領域(locus A, CMAT144)について種子遺存体用のDNAマーカーを設計した.これらのうち,CmPHとCmOrでは,現生メロンについて系統解析を行い,果実形質と対応していることを確認できたので,今後,大阪府や鹿田遺跡で出土したメロン種子遺存体で分析を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において,研究申請時の計画は先に開発したDNAマーカーを用いて大阪府のメロン種子遺存体を解析すること,ならびに果実形質に関連するDNAマーカーを開発することであった.解析および開発とも当初の目標を達成した. 成果公開では,研究結果は今夏に開催される日本文化財科学会(奈良大学・奈良市)や国際古民族植物学会(フランス・パリ)にて発表が確定している.また,先の研究での成果は『Genetic Resources and Crop Evolution』誌にて公開されることになった.既存研究を含めた研究の成果は,国内外で紹介することになり,分析の普及に努めることができた. 故に,研究は解析と発表において計画を順調に達成していると,判断された.
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者は,今年度に供試した材料に加えて,弥生時代(鬼虎川遺跡,池上曽根遺跡),古墳時代(古留遺跡),奈良時代(難波宮跡,平城京),平安時代(長岡京,平安京),鎌倉時代(鳥羽離宮),ならびに岡山県鹿田遺跡のメロン種子についても解析を進める予定であり,これらの解析が近畿地方における作物の選抜について検討できることを期待している.成果公開では,早期に結果を公開するために,当初,最終年度に予定していた国際古民族植物学会での公開を前倒しして,次年度に行う.
|
Causes of Carryover |
DNA分析に係る消耗品の購入に際して,大量一括購入,ならびに割引時における購入により,物品費を当初計画より縮小できた.これにより,残余が出た.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
残余については,次年度の国際学会における研究成果公開に充当する.
|
Research Products
(6 results)