2018 Fiscal Year Research-status Report
狩猟採集社会から農耕社会への移行期における人口構造の解明
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15K01135
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
五十嵐 由里子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (60277473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
澤藤 匠 (蔦谷匠) 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, ポストドクトラル研究員 (80758813)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 出生率 / 寿命 / 離乳時期 / 縄文時代 / 弥生時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
【人口構造の復元】 (1)骨盤の寛骨耳状面前下部に見られる妊娠出産痕の判定基準についての論文を完成した。当該論文は海外ジャーナルに投稿し、現在査読結果をもとに修正中である。この論文は、女性骨盤上の妊娠出産痕を観察すれば、その女性の妊娠出産経験を「無、少、多」の3段階で判定できることを証明し、古人骨集団において、女性骨盤上の妊娠出産痕を観察することによって、先史時代の諸集団の出生率を比較することが可能となることを示すものである。この論文が公表されることにより、当該論文で新しく設定した観察方法を他の研究者が用いることが可能になり、先史時代の人口構造の復元が世界中で可能になる。なお、本研究においても、当該論文の方法を用いている。 (2)九州地方の渡来系弥生人遺跡から出土した人骨について、全身骨の観察による年齢推定と骨盤の観察による妊娠出産痕の判定を行い、九州地方渡来系弥生人集団の「出生 率・寿命パターン」を推定した。分析した人骨の出土遺跡は、隈西小田遺跡、金隈遺跡、その他福岡市内の遺跡である。前年度までに実施した本研究の成果を総合すると、北海道縄文集団、中部地方の縄文集団(吉胡遺跡)、中国地方の縄文集団(津雲遺跡)、九州地方渡来系弥生集団の間に、「出生率・寿命パターン」に違いがあることがわかった。北海道縄文集団では、比較的「多産・短命」の傾向があり、九州地方渡来系弥生集団では、比較的「少産・長寿」の傾向があり、中部地方縄文集団と中国地方縄文集団では、その中間の傾向が認められた。これまでの結果からは、集団の人口構造の違いが、地域差によるものか時代差によるものかが不明であるので、今後、九州地方の縄文集団や本州の渡来系弥生集団の調査を行う予定である。
【離乳時期の推定】 渡来系および在地系の弥生集団について、コラーゲンの洗浄処理を試みた。すでに分析されているデータの再検討を行ない、確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【人口構造の復元】 2015年度および2016年度は北海道縄文集団についてのデータを収集し、2017年度は中部地方および中国地方の縄文集団についてのデータを収集し、2018年度は九州地方の渡来系弥生集団についてのデータを収集した。
【離乳時期の推定】 2018年度には、データの質の検討を実施し、2019年度に行なうデータ解析のための下地を整えた。また、発掘報告書などを調べ、考古学的な背景情報を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
【人口構造の復元】 2019年度は中国地方の渡来系弥生集団についてのデータ、および関東東北地域の縄文集団についてのデータを収集する。併せて、関東地方および東北地方の縄文集団のデータを収集する。5年間のデータを総括する。
【離乳時期の推定】 渡来系・在地系の弥生集団について、分析・データ解析を進め、論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
資料収集先との調整に時間がかかり、出張回数が少なくなったので、翌年度は出張回数を増やし、「次年度使用額」を出張費に回す。
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Research Products
(2 results)