2016 Fiscal Year Research-status Report
文化財に使用された彩色材料に関する面的調査法の検討
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15K01144
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| Research Institution | Kyushu National Museum |
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Principal Investigator |
秋山 純子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 研究員 (10532484)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 彩色材料 / 赤外線画像 / 文化財科学 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
近年、文化財の科学調査が一般的に行われるようになってきた。しかし文化財は脆弱な材質、構造のものが多く、移動を伴ったり長時間を要したりする調査は文化財の保存を考える上であまり好ましくない。したがって文化財の科学調査は調査のための作品移動の機会をなるべく少なくし、短時間に非破壊で行うことが求められる。また、これまでは制限がある中で点分析が主流であった。しかし文化財を総合的に理解するには面的な広がりで捉える調査が必要である。特に絵画などの二次元の文化財では、面的な情報を得る事が非常に重要である。
そこで本研究では文化財の科学調査に面的な手法を導入した有効な調査法を検討する。面的な調査に赤外線画像を活用し、文化財に負担を与える事なく簡便に素早く安全に、そして明確に把握できる面的調査方法の確立を目指す。赤外線画像による彩色材料の面的調査を確実にするため、これまでの天然顔料だけでなく染料と合成顔料も調査対象に加え、赤外線画像から彩色材料を把握するためのデータを蓄積する。また、赤外線画像のみで彩色材料を見極める事はできないので、その他の簡便で非破壊の点分析を組み合わせて、より確実に赤外線画像を解釈できるようなデータをまとめる。以上のデータ集積をもとに、赤外線画像の面的調査の有効性を明らかにすることが目的である。
今年度は赤外線画像の面的調査をより確実なものとするために染料および合成顔料の標準となるカラーチャートを作成した。カラーチャートを作成するに当たり、昨年度調査した「博物図譜」の結果をもとに面的調査の解析に必要な彩色材料を選び出した。今回、染料のカラーチャートを作成したことにより、顔料・染料と一通りの彩色材料をそろえることができ、より確実な面的調査を行うことができるようになった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は顔料と染料とで赤外線画像の見え方にどのような違いがあるのかを明らかにするため、標準となる染料のカラーチャートを作成した。使用した染料は臙脂・コチニール・蘇方・紅花・茜・藤黄・黄檗・藍・プルシャンブルーである。それぞれ染料のみと胡粉、鉛白と混ぜたものを帯状に塗った。カラーと赤外線の撮影には非接触大型画像取得装置Niji-H（高精細スキャナ、株式会社サビア製）を使用した。今回、染料のカラーチャートの画像を撮影したことにより、顔料と染料の標準となる赤外線画像を蓄積することができた。
染料のカラーチャートにおける赤外線画像は紅花が比較的赤外線を少し吸収する様相を呈し、次いで臙脂・黄檗の順にほんの少し吸収したが、いずれも赤外線を反射し、白く写った。藍とプルシャンブルーは両者ともに赤外線を吸収するが、プルシャンブルーはより黒く写った。以上の結果、顔料に比べて染料は赤外線を反射し、白色を呈する材料が多いことが確認できた。
昨年度の調査に引き続き、今年度も様々な彩色材料で詳細に描かれている高松松平家伝来の「博物図譜」を調査対象とした。カラーチャートの赤外線画像と比較するため、高精細スキャナーを使用して均一な光を当てて同じ条件で撮影した。また彩色材料の違いによる赤外線画像の濃淡を解釈するため、非破壊で分析できる蛍光X線分析で彩色材料の成分を測定した。調査の結果、一見同じ色に見えても赤外線画像によって彩色材料の違いを明確に捉えることができた。赤外線画像で面的な広がりを把握し、点分析と組み合わせることで画面全体の彩色材料の状況を知ることができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
昨年度実際の資料を調査することで合成顔料・染料を選定し、これに基づき今年度は合成顔料・染料を含めたカラーチャートを作成することができた。顔料・染料のカラーチャートの赤外線撮影をし、それぞれの彩色材料の特徴を確認した。また実際の歴史資料の赤外線画像と照らし合わせて、面的調査の有効性を確認するところまで行った。
来年度は基準となるカラーチャートの基礎データを得ること、すなわち非破壊の点分析をすすめ、赤外線画像と組み合わせて顔料と同様に彩色に使用される主な合成顔料および染料の特徴をまとめ、データベースを作成する。九州国立博物館は非破壊測定が可能な可視分光分析装置、赤外分光分析装置、ラマン分光分析装置、染料の解析に有用なポリライトを所有している。これらの装置を使って、顔料・染料の特徴を明らかにし、基礎データを収集する。
また昨年度から調査対象としている「博物図譜」を来年度も引き続き調査し、４種類ある図譜の特徴を科学調査の面から明らかにする予定である。今年度の調査では植物を題材にした「衆芳画譜」と「写生画帖」に顔料と染料を使い分けている様子が見られ、使用された彩色材料が多岐にわたっていることが分かった。この結果を踏まえて今後は図譜ごとに詳細に調査を進め、それぞれの図譜の特徴を彩色材料の観点から明らかにしていきたいと考えている。
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| Causes of Carryover |
今年度、海外で開催される研究会に参加し情報収集する予定であったが、国内の調査や研究会への参加が増えたため、海外に行かなかった。海外渡航のための旅費等が発生しなかったことにより、次年度に使用額が生じた。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はカラーチャートに使用した染料の基礎データをまとめる計画であるので、分析にかかる費用が発生する予定である。また今年度できなかった海外での情報収集も計画しているため、海外への渡航費用がかかる予定である。
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Research Products
(1 results)
