2017 Fiscal Year Research-status Report
霞ヶ浦水収支に係わる水文量の空間分布構造とその40年間の変化
Project/Area Number |
15K01159
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉田 倫明 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80235887)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2020-03-31
|
Keywords | 水文 / 水収支 / 土地利用変化 / 霞ヶ浦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究科課題では,霞ヶ浦を対象として現在の水収支を明らかにすること,過去40年間の水収支変化を明らかにするとともに, その変化要因を明らかにすることを目的としている. 一般に,ある流域や水体に係わる水循環過程を明らかにすることは,地域の自然環境を理解する上で極めて重要である.また霞ヶ浦については,国内第2位の面積をもち,水資源,水環境に大きな影響を持つにもかかわらず,一部の水収支項を扱った研究を除くと包括的に水収支研究の対象とされたのは,村岡(1981)の一例のみである.一方で,村岡(1981)の扱った1970年代から40年ほどが経過し,その間に,流域の土地利用変化,霞ヶ浦開発事業や常陸川水門の閉鎖など多くの水循環,水収支に影響を及ぼす変化が生じている.さらに,この40年程は,平均気温上昇,降水の極端事象の発生頻度の増加などに代表される急激な気候変化が生じた時期に当たり,その水循環等への影響評価は科学的に極めて重要なテーマとなっている.以上,土地利用などによる流域内部の変化要因,気候変化に代表される流域外部の変化要がともに急激に変化したことから,現在の水収支を評価することが高く望まれるのである. 2017年度には, 10年間の観測データの収集と測定項目の推定方法の開発の一部として,霞ヶ浦中央部に位置する湖心観測所(国土交通省霞ヶ浦河川事務所)における渦相関法による蒸発量の測定を継続して実施した.蒸発量の水平分布をより正確に求めるため,従来6時間間隔で実施いた計算を3時間間隔で行う方法を試行した.さらに,水田やハス田による水利用の状況を明らかにするため.霞ヶ浦沿岸地域の農業用水利用状況の調査を引き続き実施した.アンケート内容の取りまとめが開始された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蒸発量の測定を目的として,国土交通省・霞ヶ浦河川事務所の湖心観測所において,2006年6月に観測を開始している.2008-2012年についてはSugita et al. (2014)で霞ヶ浦全域の蒸発量の分布がすでに3時間ごとに算出されているので, 2007, 2013以降にも適用するために必要なデータを収集した.2017年については,観測機器の一部が故障したため,その交換と修理の手配を行った後,順調にデータの取得が行われた. 蒸発量については水平分布をより正確に求めるため,従来6時間間隔で実施いた計算を3時間間隔で行う方法を2014年について試行した. 一方,7流入河川と1流出河川の流量データ(以上国土交通省・霞ヶ浦河川事務所,水資源機構など),工業用水,生活用水の取水・排水量データ(茨城県など),農業用水取水・排水量推定に必要な農地面積(茨城県ほか),既存水利権情報(霞ヶ浦河川事務所,関東農政局ほか)の収集を進め, 2015年までのデータ収集を完了した.霞ヶ浦沿岸地域の農業用水利用状況の調査を水田の灌漑方式と水源、水田の分布、水田の面積、水田の栽培スケジュール、取水地点最大取水量などのアンケート調査を実施し,回答回収が終了し,解析が開始された.回収に時間がかかったため,その取りまとめはやや遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに進めていく予定である.やや遅れている霞ヶ浦沿岸地域の農業用水利用状況の調査結果を急ぎ取りまとめた後,他の水文要素とともに水文量の水文地図化を開始する.過去の水収支量との比較検討を開始する.
|
Causes of Carryover |
所属部局のRA経費が使えたため,解析補助のための経費の支出がなかった.2017年に観測機器の一部が故障したため,その交換と修理の手配を行った.このため,当初より観測期間を延長した.結果として,機材撤収の費用の支出がなかった.2018年度または2019年度に撤収を行う予定である.
|