2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01166
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
森脇 広 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 名誉教授 (70200459)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
田中 源吾 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 研究員 (50437191)
小林 善仁 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80594358)
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 姶良カルデラ / 阿多カルデラ / 地殻変動 / 完新世 / テフラ / 臨海平野 / ボーリング / 鹿児島湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,大隅半島南部の大根占,根占の平野での2本のボーリング掘削を中心とした調査と姶良カルデラ南西縁の後期更新世以降の変動の解析を行った. 完新世のドーム状隆起が認められている姶良カルデラの変動との比較のために,完新世段丘地形が認められる鹿児島湾南部,阿多カルデラの大根占,根占の平野においてボーリング掘削(深度:大根占20m,根占30m)を行った.掘削したコアの観察からは,現海面の高さにまで海成堆積物の痕跡は認められない.大根占平野でのボーリングコアは,泥炭質シルトと陸成の角礫堆積物の互層からなり,海抜-20m付近に,池田降下軽石(6400年前)を認めた.根占平野でも,コアの観察からは海成を示す積極的な痕跡は現海面より高いところには認められない.段丘化した平野を持つ大隅半島中・西部の垂水平野や柊原平野も同様で,結局大隅半島中・南部の鹿児島湾沿岸でよく認められる段丘化した平野は,完新世の隆起を示すものではないことが明らかとなった.今回,阿多カルデラ周辺の旧海水準資料を得たことによって,鹿児島湾沿岸の完新世の地殻変動の全体像が明らかとなった.重要な点は,姶良カルデラ周辺が顕著に隆起しているという点である.姶良カルデラと同様に後期更新世以降に活発な火山活動をしている阿多カルデラ周辺は,顕著な隆起は認められない. 後期更新世,完新世,歴史時代の海水準資料が共在する姶良カルデラ南西縁において,後期更新世以降の隆起の傾向を比較検討した結果,過去10万年間において,大局的にはおよそ1mm/年の速さで隆起したことが明らかとなった.桜島火山の噴火活動が2.6万年前から開始したことを考えると,この隆起は,入戸火砕流などを噴火した姶良カルデラの火山活動に由来するものであることを示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った大根占・根占地区でのボーリング掘削によって,鹿児島湾央から湾口にある阿多カルデラの完新世地殻変動の資料を得ることができた.そのコアの観察は,阿多カルデラの完新世の隆起は認められないことを示す.阿多カルデラは,姶良カルデラと同様に巨大カルデラでかつ活発な噴火活動を行っているが,周辺に完新世海成段丘が分布し,顕著な隆起を示す姶良カルデラとは異なり,地殻変動的には比較的安定していることが明らかとなった.さらに,姶良カルデラ北西部や薩摩半島東シナ海沿岸などで随時行っている野外露頭調査においても,旧海水準資料が得られた.姶良カルデラ南西縁の後期更新世以降の隆起は,2.6万年前から開始した桜島の火山活動ではなく,姶良カルデラの火山活動に起因するものであることの示唆を得ることができた. 以上のように,興味深い結果が得られ,研究は着実に進行していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.前年度採取したボーリングコアについて,微化石などの詳しい分析を行い旧海水準の高さと年代を明らかにする. 2.前年度の阿多カルデラ東縁調査に引き続き,阿多カルデラ西縁の指宿地区において完新世の変動資料を得る予定である.これによって阿多カルデラの完新世の変動がより明らかになり,鹿児島湾のカルデラの変動状況が明らかとなろう. 3.姶良カルデラ南西縁における更新世以降の隆起は,細かくみると年代が新しくなるにつれ隆起の速さが速くなっているようにみえるが,様々な不確定要素があるため,確実ではない.精度のよい旧海水準位置や年代についてさらに調査する予定である. 4.空間的により高精度の完新世地殻変動様式を求めるために,前年度に引き続き,野外調査を定期的に行って,工事現場などで出現する露頭の観察を行い,変動資料を増やす.姶良・阿多のカルデラから離れた遠方の薩摩半島西岸や大隅半島東岸での露頭調査を進め,カルデラの変動の特徴をさらに明らかにする.
|
Causes of Carryover |
ボーリングコアの年代測定に関わる費用を計画していたが,今回の資料からは旧海水準指標を示す貝化石などの好条件の資料は,コア表面の観察からは見いだせなかったため,次年度に繰り越すこととなった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,当初,次年度予算の関係から,ボーリング掘削を行わない予定であったが,繰り越した額を加えると,完新世の旧海水準の位置を調査できる可能性が出てきた.したがって,次年度使用額は旧海水準位置を特定できる深度をもつボーリング掘削に当てる予定である.
|
Research Products
(4 results)
-
-
[Presentation] 大地系を考える2016
Author(s)
森脇 広
Organizer
立正大学地理学会鹿児島例会
Place of Presentation
鹿児島大学(鹿児島県・鹿児島市)
Year and Date
2016-11-26 – 2016-11-26
Invited
-
-