2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模救急車シミュレータの開発とそれを用いた救急車の最適配置実験
Project/Area Number |
15K01193
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
稲川 敬介 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (50410759)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 救急車 / シミュレーション / 最適配置 / 都市計画・建築計画 / 政策研究 / 救命 / モデル化 / オペレーションズ・リサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大規模な救急車シミュレータを開発する.これを用いて,人口200万人超を想定した大都市における救急車のシミュレーション実験や,消防の広域化による県1ブロック化などを想定した広範囲の救急車システムのシミュレーション実験をおこない,適切な配備方法の提案や救急システムの効率的な運用について分析する. 研究計画初年度の研究実施計画は,協力消防本部から提供していただいた救急データの整理と分析,大規模シミュレータの開発とその基礎実験である.これらに関する具体的な取り組みと活動を以下にまとめる. 1.初めに,協力消防本部から提供していただいた救急データのデータ分析をおこなった.この分析結果は,論文「救急車の出場データに関する統計分析」としてまとめて報告した.また,救急車システムのシミュレータのプロトタイプを開発し,人口200万人を越える都市でのシミュレーション実験をおこなった.この結果の一部は,6月の第29回日本神経救急学会の特別企画と,10月には平成27年度日本オペレーションズ・リサーチ学会九州支部事業・若手OR交流会の特別講演で発表した. 2.また,本研究では,大規模シミュレータを活用して,大都市におけるシミュレーション実験の他に,広範囲地区のシミュレーション実験をおこなう.広範囲地区としては,人口がおよそ100万人である秋田県全体を想定している.そこで本年は,秋田県におけるすべての消防署の位置情報と,そこに配備されている救急車の台数を調べてGIS(地理情報システム)を作成した.このGISを利用して,メッシュ人口と救急車の配備場所までの移動距離帯別人口分布を作成し,3月に2015年度日本都市計画学会東北支部研究発表会にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度に,大規模な救急車システムを想定したシミュレータのプロトタイプの開発をおこない,人口200万人を越える都市の救急データのデータ分析をおこなった.ここまでは計画通り順調に研究を進められている.しかしながら,プロトタイプによるシミュレーション実験結果を,実際の消防本部に提出したところ,救急車の呼び出し件数が当該消防署特有の区で管理されていたため,この区に対応することが必要なことがわかった.そこで,研究計画2年目には,この区に対応するGISを作成し,現場へのフィードバックとシミュレータの修正をおこなうことが必要なことがわかった.この点については,想定外の研究計画の修正が必要になることとなった. また,本研究では,大都市のシミュレーション実験とは別に,同様のシミュレーションアルゴリズムを利用した広範囲地区のシミュレーション実験もおこなう.広範囲地区としては,人口がおよそ100万人である秋田県全体を想定している.この分析については研究計画2年目以降におこなう予定であったが,GISを扱う機会があったため,計画を前倒しして初年度に作成した.このGISを利用して距離の計測をおこない,メッシュ人口と救急車の配備場所までの移動距離帯別人口分布を作成した.研究計画2年目には,この部分についての論文を作成する予定である.この部分については,当初の研究計画以上に進展している. 全体としては,想定外の点もあり,次年度以降にするべき内容が増えてしまったが,計画以上に進展している点もあることから,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては,はじめに,研究途中で必要なことがわかった協力消防署特有の区に対応するGISを作成する.この区のGIS作成後,再度シミュレータを調整して,現場へのフィードバックとシミュレータの修正をおこなう.シミュレーションの結果が十分に現実を反映していると判断できた後は,最適配置実験をおこなう.この実験では,まず,配置を変更可能な数台の救急車に関して,救急車が未配備の消防署に配備する場合のシミュレーション実験をおこなう.その後は,全ての消防署を候補点とする最適配置実験をおこなう. また,シミュレータが開発され,その結果の精度についても確認が取れた後は,大規模シミュレータによって可能となるいくつかの数値実験をおこなう.はじめに,全県を1つの救急システムとみなす消防の広域化案である県1ブロック化の効果の推定実験をおこなう.全県単位のシミュレーション実験をおこない,そのシミュレーション・ログを解析する事により,特定の市町村が独立して存在する場合と全県単位に合併する場合の変化を求めることができる.これにより,県1ブロック化がどれくらいの効果を持つのかについて数値的な実験結果を導出する. さらに,シミュレーション・ログの詳細な解析により,救急車が現状の管轄区にとらわれることなく出場を繰り返す場合,どれくらい離れた場所まで対応するかを調べることが可能となり,消防本部の適正なサイズ(区割り)について分析できる.また,それぞれの救急車の対応件数を比較して,配備や割当て優先順位の変更などによるワークロードの平均化の分析もおこなう.これらの分析は,小規模なシミュレーションでは見えてこない現象であり,大規模シミュレータによる可能となる分析である.
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Causes of Carryover |
研究遂行中,救急車の呼び出し件数が研究協力消防署特有の区で管理されていたため,この区に対応することが必要なことがわかった.そのため,当初想定していたソフトウェア等の購入や研究発表を次年度以降に繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画にあったソフトウェア(最適化ソルバー)と地図データの購入と,国外発表(INFORMS International Conference, 6月)の旅費等を予定している.
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Research Products
(9 results)