2015 Fiscal Year Research-status Report
顧客の戦略的購買行動と企業の価格設定:市場の時間的セグメンテーション
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15K01203
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
増田 靖 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10286643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経営科学 / 価格設定 / 戦略的顧客 / ゲーム論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の4つの問題で研究が進行した。 1. 戦略的顧客市場の時間的セグメンテーションによる価格設定の問題では、理論研究と数値実験共に進んだ。具体的には、ここで考えられている動的価格均衡モデルにおいては、製品価格が時間に関して区分的指数関数として下がることを示した。 2. ライセンシングの研究では、製造技術のイノベーションと新製品技術のイノベーションでは、ライセンス供与方式(ライセンス価格設定)にどのような違いがでるかの分析をした。考えているライセンシングは、固定費方式とロイヤルティ方式である。従来のライセンシング研究では、製造技術のイノベーションに関するものが中心で、両者の比較研究はなかった。その点に本研究の新規性がある。 3. 遅れを伴うサービスシステムにおける、戦略的顧客の制御の問題においては、理論研究が進んだ。優先度を適切に設定することにより、顧客行動を全体にとって望ましい方向に導くことに関して、新たな知見が得られた。 4. 新たな関連研究として、実績ベース契約とワランティ契約の比較の研究が進んだ。製造業とサービス業の統合化がサービサイゼイションという名のもので進んでいる。製造業者が製品を売るだけではなく、メインテナンスその他のサービスも同時に売るビジネスモデルである。実績ベース契約では、消費者が実際にどれだけ製品を利用できたかに応じて製造業者に報酬が支払われる。似た効果を持つ契約形態としては、ワランティ契約があり、経済学の分野で古くから分析されてきた。本研究では、実績ベース契約とワランティ契約を比較する。実績ベース契約は、さまざまな点でワランティ契約より有効な場合が多いことが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は実質的な研究は進んだが、公刊論文の形にはなっていない。 現在最終段階で進行中の研究が複数あるので、それらの研究を刊行論文の形に完結することが重要と考える。研究実績概要の項目1に関しては、理論結果にまだ弱い部分があるので、その点を強化する必要がある。研究実績概要の項目2,3に関しては、最後の詰めを残すだけの段階となっている。新たな関連研究である項目4は、研究の初期段階であるが順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要の項目1については、理論結果を改善する予定である。研究実績の概要の項目2については、論文は現在改訂中となっているのでこれを完了させる。研究実績の概要の項目3は、理論分析・計算実験ともに実質的には終わっており、論文は最後の詰めの段階にある。研究実績の概要の項目4に関しては、今年度複数の国際学会で現在までの研究成果を発表する予定となっている。 さらに昨年度末に、新たな関連研究として、Eコマースと実店舗販売の環境問題への影響分析を始めた。Eコマースと実店舗販売の競争分析の研究は盛んになされてきたが、Eコマースの取引が増えることが、環境問題に与える影響についてはほとんど研究されてこなかった。Eコマースが物流業界の二酸化炭素発生量に与える影響を、戦略的顧客の購買行動の均衡分析を通して進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究発表の時期を次年度にずらので、2015年度には国際学会での発表がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に複数の国際学会で研究発表を行う予定である。
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