2015 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動型最適化モデルに対する統合的アプローチの探求
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15K01204
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
後藤 順哉 中央大学, 理工学部, 教授 (40334031)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロバスト最適化 / データ駆動型最適化 / 平均・分散モデル / ポートフォリオ最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
分布的ロバスト最適化モデルとは,適当に定義された報酬の期待値を最大にする代わりに,意思決定者にとって最も都合の悪い分布の下での期待値を最大にするような目的関数によって定義される.これは未知の真の分布の代わりに,過去に得られた有限個の観測標本に基づく経験分布からの最悪の乖離を考える意思決定基準を表現したものである. 本研究の1つ目の成果は,ロバスト最適化モデルの目的関数が,経験分布の下での平均分散最適化,すなわち経験分布に基づく平均報酬を大きくしつつ,その分散を小さくするような基準で表現できることを理論的に示したものである. 2つ目の成果は,1つ目の解釈を踏まえた計算機的手法の提案である.分布的ロバスト最適化モデルにおいては,不確実性に対する許容の程度を表すパラメータを決める必要がある.一方でどの値にすべきかは難しい問題である.データ駆動的な立場からは,既に得られている経験分布のみを用いてこのパラメータを決定すべきであると考えられる.そのような代表的手段として交差検証法が知られている. 本課題ではこの標準的な交差検証をポートフォリオ最適化問題に対して適用し,得られた結果のばらつきが予想以上に悪化することを観察した.そこで,既述の理論的成果を鑑み,交差検証する際,平均報酬だけでなく,報酬の分散も小さくなるようにパラメータを選択する方法を提案し,事後的にも分散の低いロバストな結果が達成されることを確認した.筆者らはこのような交差検証をロバスト検証と名付けた. この方法の有効性の検証は今後の課題であるが,ロバスト最適化に対するパラメータ推定方法としては,首尾一貫したものであり,非常に用途も広く有望な方法ではないかと筆者らは考えている. 2015年度はこの成果を論文にまとめ,国際学術雑誌への投稿と改訂を行った.また国内外の学術会議,ワークショップにおいて成果の発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会,国際会議での研究成果発表および論文の執筆(改訂)と投稿まで到達しており,順調に推移していると言える.共同研究者は国外(シンガポールとカナダ)在住であるが,対面でのディスカッションのほか,インターネットを介した打ち合わせを幾度となく実施するなど,時差を越えて協力体制を確立できた点は評価できると自負している. より具体的には,業績欄に述べたように,平均分散モデルとしてのロバスト最適化の解釈を導くにあたり,当初は相対エントロピーという特殊な(しかし様々な場面で中心的な)関数によって最悪な乖離を表現することから始めていたが,より一般的なf-ダイバージェンスに拡張しても同様な解釈が成り立つことを示し,解釈の汎用性を主張できたことは非常に意義のあるものと考えている. 一方で,当初考えていたロバスト最適化に対する事後的なパフォーマンスを保証する確率的不等式について,事後的なパフォーマンスについて何かを語るものではないとの結論に至った,この点については今後新たな理論的保証を探していく方向につながればと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,数値実験によって確認された優れた事後パフォーマンスの源がどこに起因するのかについての説明となる,何らかの理論的研究が当面の課題であり,現在それを進めている.また,既に投稿中の論文の枠組みでは扱えなかった,CVaR(条件付きバリューアットリスク)をロバスト化する問題や,CVaRの概念を用いたロバスト化については,3月に共同研究者と集中討議を行ったので,議論をつめ,数値実験を行うなどして論文としてまとめることを目標とする.また,8月に東京で開かれる連続最適化の国際会議などを利用し,最新の動向を把握すると同時に,海外の研究者との議論を通して研究の内容を精緻化していくことを目指す.
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Causes of Carryover |
11月のINFORMS Annual Meeting出張の際,フロリダ大学でのワークショップに参加するため出張の際,ホスト教授の自宅に宿泊できたことなどから,次年度に繰り越しとなった.額としては穏当な水準であり,問題ないと考えている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は夏に東京で開催される連続最適化の国際会議ICCOPT 2016に海外から多数の研究者が来日するため,その際に謝金などに充てるなど,研究課題の理論を深め,成果をアピールするための使用を計画している.
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Research Products
(10 results)