2017 Fiscal Year Research-status Report
持続可能性を考慮した包括的な輸送・交通ネットワーク設計のための数理モデルの開発
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15K01212
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
佐々木 美裕 南山大学, 理工学部, 教授 (20319297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 壮宏 奈良教育大学, 教育連携講座, 准教授 (60453825)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 航空ネットワーク / ネットワーク設計モデル / ハブ・アンド・スポークモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
路線の開設と廃止を考慮した航空ネットワーク設計モデル(PPANP: point-to-point based airline network problems)の解法を見直して改良を行い, 実装した. また, ベンチマークデータであるCABデータを用いて, 従来の航空ネットワーク設計モデル(p-ハブメディアンモデル)を主な比較対象として, 解の比較を行った. 従来のモデルでは, ハブ空港の設置を前提とし, ハブ空港間はすべて直行便が開設されて大量輸送によるコスト削減ができることを仮定したものが多い. これに対し, 提案するモデルでは, ハブ空港の設置は前提とせず, 需要の見込める路線を順次開設することによってネットワークを拡張する手法を基礎とする. 乗り換えにかかるコストを導入し, 乗り換えによって移動距離が極端に長くなるような場合は, 利用者が減少するという現実的な仮定を設け, 利用者の利便性を考慮した. 比較実験の結果, 同じ規模の(路線数が等しい)ネットワークにおいて, 提案するモデルによって得られたネットワークの方が, 移動距離が短く乗り換え回数も少ないサービスを多くの利用者に提供できることが確認できた. 一部の利用者にはサービスが提供されない結果となったが, これはサービスを提供する側である航空会社の採算を考慮した結果である. 路線の廃止については, 利用者数が開設当時と比較して一定の割合以下になった路線を廃止する規則などを設けて計算を行ったものの, 現在のところ, 利用者の利便性を保ちつつ航空会社の利益を確保できるような効果的な規則は得られていない. この研究を進めるなかで, 毎年の需要の変動を考慮するモデルの重要性を認識し, OD需要および輸送費用に不確実性を含む航空ネットワーク設計モデルの検討も開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク設計の長期計画を考えるうえで, 需要の変動も考慮する必要があるという新たな課題が見つかり, 計画が一部変更となったため, 当初予定していた航空機の割当スケジュールを求めるモデルなどの短期計画の研究には着手できていない. しかしながら, もっとも基礎となる路線の開設と廃止を考慮した航空ネットワークについては, 効果的な廃止規則の設定は課題として残っているものの, 既存モデルとの比較分析も順調に進み, 一定の成果を得たと考えている. また, 新たな課題として設定したロバスト航空ネットワーク設計モデルについても2次錐計画問題としての定式化を行い, ベンチマークデータおよび2016年の米国航空輸送データを用いた実験も進んでいる. 一部計画に変更はあったものの, 持続可能な輸送・交通ネットワーク設計を実現するための新しい数理モデルを提案することについて一定の成果が得られており, おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ハブ空港の設置を前提とせず, 路線を開設することによるネットワーク設計を行うことにより, 航空会社と利用者双方からの視点を考慮した利便性の高いネットワーク設計が可能となることが確認できたため, 今後は, このモデルを用いて適切な路線廃止の規則を見出すことを最優先とし, 持続可能なネットワークの設計手法の確立を目指したい. 同時にロバスト最適化の手法を用いて, 将来のOD需要や輸送費の変動にも頑健なネットワーク設計手法についても検討する. また, データの整備にも取り組む予定である. ベンチマークデータとして用いられているCABデータは, 1970年の米国主要25空港間の航空需要に基づくものである. データが古いだけでなく, 実際の航空需要データを用いて得られた結果は, 現状に依存する可能性が高い. 都市の人口および人口流動, 経済活動などに基づくデータを整備することも本研究の意義を高めるための重要な課題であると考えている.
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Causes of Carryover |
2017年度の後半に実施したロバストp-ハブメディアンモデルの研究成果を発表する学会・会議等が2017年度の適切な時期には開催されなかったため, 2018年度に発表することとした. 2018年6月に開催される国際会議にて研究成果を発表するための旅費として使用する予定である.
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Research Products
(8 results)