2015 Fiscal Year Research-status Report
チタンと硝酸との反応による爆発性物質の同定及び安全取扱技術の確立
Project/Area Number |
15K01239
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 嘉彦 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 化学安全研究グループ, 研究員 (60706779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 猛裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 上級主任研究員 (30192751)
秋吉 美也子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (50274551)
岡田 賢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (80356683)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 爆発災害防止 / チタン / 硝酸 / 薄膜剥離工程 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年連続して発生し,今後頻発する恐れがあるチタン薄膜を硝酸で処理する薄膜剥離工程での爆発災害を防止し,労働安全のさらなる向上に貢献することを目的として,本研究では,チタン薄膜と硝酸で処理する過程での爆発の原因になると考えられるチタンと硝酸の反応による爆発性生成物を同定する.また,生成した爆発性物質について,安全な取り扱いの指標となる刺激に対する感度及び爆力を把握する.さらに,チタン及び硝酸溶液の組成による影響を明らかにし,爆発性物質が生成せず,安全に取り扱える範囲を確定する. 現在,これまでの予備実験で明らかとなっている条件や,爆発事故時の取り扱い条件を参考にして,チタンと硝酸との反応による爆発性生成物を合成することを試みているが,今のところ合成に成功していない.そこで,発火機構が不動態皮膜の損傷による新生面の露出と仮定して,不動態皮膜の成長が発火現象に与える影響を検討した.硝酸中でチタンの陽極酸化を行うことにより不動態皮膜を強制的に成長させ,種々の酸化剤共存下で打撃感度試験を行い,不動態皮膜の成長による発火挙動の変化を検討した.その結果,不動態皮膜を成長させなかったチタン試験片では発火は確認されなかった.一方,不動態皮膜が成長したチタン試験片では,酸化剤が過塩素酸カリウムのとき,発火が確認された.しかし,打撃に対する感度は比較的低く,既往の研究で確認されている現象とは異なるものであると考えられた.そのことから,チタンと硝酸との反応による発火機構としては2つの機構があり,1つは不動態皮膜の成長とその破壊による新生面の露出・反応による発火,1つはチタンと硝酸との反応による不安定物質の分解による発火であると考えられる.これは,チタンが原因となる爆発災害を防止するための適切な対策を講ずる際の基盤となる知見となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに,チタンと硝酸との反応による発火機構が複数あることを明らかにし,チタンを硝酸で処理する際の条件に応じた爆発災害防止対策を講ずる際の重要な知見を得た.しかし,そのうちの1つの発火機構であると考えられるチタンと硝酸との反応による爆発性生成物の合成が成功していないため,爆発性物質の同定までは至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,継続してチタンと硝酸との反応による爆発性生成物の合成を試み,各種分析によって物質の同定を行う.また,チタンと硝酸との反応による爆発性生成物について,取り扱いの際の爆発防止策・防護策を検討するために,各種刺激に対する感度及び爆力を把握する.さらに,硝酸中におけるチタンの安全な取り扱い条件を確立するために,チタンと硝酸との反応で爆発性物質が生成しない条件を明らかにする.なお,爆発性生成物の合成が困難と思われる場合は,近年発生した事故例における条件に近い実験条件から優先して実験を行い,実際に行われている作業における爆発事故を防止するための成果を得ることとする.
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Causes of Carryover |
チタンと硝酸との反応による爆発性生成物の合成に成功できていないことから,生成物の同定に関する分析を実施する際の費用が次年度に繰り越された.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他の検討と並行して,チタンと硝酸との反応による爆発性生成物の合成を継続して行い,生成物の同定を行う計画である.
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