2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K01271
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
竹内 由香里 国立研究開発法人 森林総合研究所, 気象環境研究領域, チーム長 (90353755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平島 寛行 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (00425513)
西村 浩一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10180639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 雪崩 / 森林 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林には、流下する雪崩の進行を妨げ、速度を落として破壊力を弱める機能があることが経験的に知られている。このような森林の表層雪崩に対する減勢効果を定量的に示し、森林の雪崩災害軽減機能を解明するのが本研究の目的である。初年度にあたり、これまでに妙高山域の幕ノ沢において観測した雪崩事例に基づいて、幕ノ沢を対象とした運動モデル(TITAN2D)を用いて雪崩の流下を再現した。使用した運動モデルの基礎方程式は質量保存と運動量保存式で与えられ、実際の地形上で雪崩本体の広がりと速度分布の変化を計算することができる。モデルにおいて雪崩が流下する際の底面摩擦角を変えてスギ林の有無による雪崩の速度や到達距離の比較を行なった。数値モデルの実験により、スギ林を無くした条件にすると、幕ノ沢で発生した雪崩はスギ林内を流下した実際の到達点より約200 mも遠くまで達した可能性が示された。この結果は森林の減勢効果を示しているといえるので、論文にまとめて投稿した。 また雪崩の発生を検知して、雪崩の発生状況や流下経路、到達範囲を明らかにするために妙高・幕ノ沢において地震計、ビデオカメラ、雪崩検知装置を設置して冬期間を通した観測を行なった。2015~2016年冬期は、根雪となったのが12月後半と例年より遅かった上に、1月にまとまった降雪がなく、これまでの観測で雪崩の発生頻度が最も高かった2月には気温が高く積雪深が大幅に減少した日があった。このような気象条件により冬期の最大積雪深は2 m程度と少雪となった。幕ノ沢において雪崩の発生は検知されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存の雪崩事例についての解析結果をまとめてこれまでに明らかになっていることを整理することができたが、少雪で雪崩が発生しなかったため、新たな事例を観測することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
岩手山西斜面では2010~11年冬期にに標高1730 mの森林限界より高標高で雪崩が発生した。雪崩は、森林のないところを流下しながら加速して高速となって亜高山帯林に流入し、樹木を倒壊しながら流下して標高1500 m付近の林内で停止したことが調査結果からわかっている。この事例に基づいて、妙高山域の幕ノ沢を対象としたのと同じ運動モデルを用いて、岩手山西斜面の雪崩を再現し、森林の有無を底面摩擦角の違いで表わし、森林がない場合を想定したシミュレーションと実際の雪崩とを比較して亜高山帯林の減勢効果を明らかにする。 また引き続き、妙高・幕ノ沢において地震計、ビデオカメラ、雪崩検知装置を設置し、雪崩の発生を検知する観測および気象観測を継続し、雪崩が発生した場合には、発生時の気象条件や雪崩の流下経路、到達範囲、堆積量などを調査し、良質のデータセットの取得を目指す。
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Causes of Carryover |
当所見積もりより安い価格で購入できたためにわずかな残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品を購入する。
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Research Products
(2 results)