2015 Fiscal Year Research-status Report
超高精細映像がヒトに高臨場感をもたらす仕組みの視覚神経生理学的検討
Project/Area Number |
15K01279
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯島 淳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00377186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 功 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60282620)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 視覚情報処理 / 映像酔い / 自律神経系 / 瞳孔 / 高精細映像 / 臨場感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超高精細映像(4K,8K スーパーハイビジョン)がもたらす超高臨場感が,眼球運動,とくに輻輳開散眼球運動(vergence)に与える効果・影響を調査し,臨場感や画面に引き込まれる没入感が生み出される脳内機構を明らかにすることを目的としている.特に高精細画像の場合,3D 映像でなくても立体感を惹起する可能性があり,その立体感を生み出す視覚要素をvergenceを指標として定量的に調査する.また,高臨場感がゆえに映像酔いに容易に陥りやすいことが予測されるため,映像酔いと高精細映像との関係を,視覚系・心循環自律神経系・脳機能解析等を用い網羅的に解明する予定である. 初年度(平成27年度)は,従来のハイビジョン液晶TVと4K液晶TVを用い,それぞれの映像視聴時に視聴者に見られる生理学的な変化を調査した.これまで,実験参加者の奥行き判定能力を検査すると,全体の約1/3の人が奥行き判定能力が低く,輻輳眼球運動の不良が見られた.また,立体感を得る要素の一つである両眼視差以外に,物の大きさや陰影の状況によってヒトの奥行き知覚が大きく影響され,眼球運動が乱れることも分かった.そこでまず,その状況が呈示ディスプレイの解像度によってどの程度影響を受けるか,静止画像内に様々な奥行きで撮影した対象物の視聴実験を実施し調査したところ,映像の画質が高精細になればなるほど,ヒトの奥行き判定能力が向上することが明らかになった. 次に,動画像で迫力のあるシーン映像を刺激として呈示し視聴中の眼球運動を分析したところ,同一内容の刺激にも関わらず,高精細映像ほど視線移動範囲や距離が大きいという結果が得られた. このように,当初予想していた通り高精細映像によって奥行き判定能力や眼球運動に変化を見出すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階で立てた目標,スケージュールの通りに進んでいる.動画像による検証は,計画では2年目(平成28年度)に実施する予定であったが,先行して27年度後半に予備実験を実施することができた.初年度に得られた結果は,予想通りの結果であり,これを踏まえて次年度の研究を予定通り進める.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,静止画像による奥行き判定実験のまとめを行い,これについて論文発表の準備を進める.また,動画像実験を主体的に進め,動画像刺激の解像度による眼球運動の違いを詳細に分析する.サッカード,輻輳眼球運動の発現パターンや頻度等を解析する.これにより,解像度の違いにより生み出される臨場感と視覚系との関連を明らかにする.さらに,動画像による映像酔いの発生が解像度によってどの程度影響されるかについても調査する.実験では自律神経系の計測を行ない,映像酔いの発生を確認する.
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Causes of Carryover |
購入した実験機材が予定よりも低価格で購入できた点,学会での発表を次年度に見送った点などが考えられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生体計測アンプの新調,解析用PCの更新等,実験の精度向上に欠かせない機材更新と,学会発表旅費,また人件費として活用する.
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Research Products
(1 results)