2016 Fiscal Year Research-status Report
脂質殻ナノ気泡の物理現象解明に基づく次世代超音波造影剤開発プラットフォーム
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15K01284
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越山 顕一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (80467513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 成生 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70240546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質殻 / 相変化 / リポソーム / マルチベシクル / ソニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ナノサイズの脂質殻ガス気泡(脂質殻ナノ気泡)の分子モデルを構築して平衡・非平衡分子動力学シミュレーションを行うことで,実験観察や連続体理論の適用が難しい脂質殻ナノ気泡の物理特性(物理パラメータ,圧力変動下での構造変化,組織化過程,脂質殻成分の違いによる特性変化)を明らかにする.さらに,それら分子シミュレーションから得られる物理特性データをデータベース化することにより,次世代超音波造影剤開発のためのin silicoプラットフォームを構築することを目的としている.本年度は,昨年度構築したジパルミトイルフォスファチヂルコリン(DPPC)による脂質殻気泡の分子モデルに関して,気泡サイズの異なる系を用意してその崩壊過程の違いを解析した.その結果,一定の気泡サイズ以下では気泡の崩壊後に脂質分子の凝集体がベシクルを形成せずにディスク形状を取ったままとなること,また,気泡サイズが大きい場合はベシクルが複数結合したマルチベシクルが形成する場合があることを明らかにした.また,脂質殻の構成分子として不飽和脂肪酸を含む脂質分子を用いた場合,気泡崩壊後にベシクルが形成しやすくなることも指摘した.これらの違いは,脂質殻を構成している脂質分子凝集体の曲げ剛性,線張力係数を基にしたフロムヘルツの理論によってある程度説明できることがわかった.しかしながら,ナノサイズの脂質殻ナノ気泡の崩壊では,その曲率や脂質殻の座屈の過程が複雑に絡んでおり,そのためベシクル形状が必ずしも従来の理論通りにならない可能性も示唆された.これらは,研究成果として科学雑誌Scientific Reportsより発表した.また,圧力変動下での脂質殻の構造変化を調べるためのコード開発に取り組み,テスト計算を行う段階になった.さらに,実際の脂質殻ナノ気泡で安定化のために用いられるポリエチレングリコール(PEG)が脂質分子の膜に与える影響に関して解析を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質分子種の違いによる脂質殻ナノ気泡の崩壊過程の違いや気泡サイズの影響など,当初の予定通りに研究が進んだ.一方で,系のサイズが大きくなったことで計算時間にコストがかかり,開発・解析に時間を要するようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度開発した圧力変動下での脂質殻の構造変化を調べるコードを完成させるととともに,得られた結果の解析を進める.また,データベース構築に際して連携研究者とディスカッションを進め最適なデータベース化の手法を検討する.また,計算規模の増加を考え,大規模計算機センターの利用を検討するなど,より効率的な計算環境を得て研究を推進する.
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Research Products
(8 results)