2015 Fiscal Year Research-status Report
敗血症性ショックの循環管理、根本治療を自動最適化するコンピュータ制御システム開発
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15K01307
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
上村 和紀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体制御 / 生体治療 / 敗血症性ショック / 循環管理 / 迷走神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らが開発してきた循環管理システム(J Appl Physiol 100: 1278-1286, 2006.)を、敗血症性ショックにおける早期蘇生治療法(EGDT)を遂行しうるシステムへ再設計し発展させた。 成犬(HBD犬)6頭を用いた。全身麻酔・清潔操作にて心拍出量プローブを埋め込んだ。1週間経過し回復後、再び全身麻酔・人工呼吸を行った。動脈血酸素飽和度モニター・中心静脈圧/酸素飽和度モニターカテーテル・動脈圧カテーテルを留置した。大腸菌由来エンドトキシン(LPS)を静脈内投与し敗血症性ショックモデルを作成した。LPS投与により平均血圧・心拍出量・中心静脈血酸素飽和度は大きく低下し、臨床で見られるような重症敗血症性ショックを再現できた。 作成した敗血症性ショックモデル5頭においてノルアドレナリン(血管収縮剤)投与→血管抵抗応答、ドブタミン(強心剤)投与→右心機能応答を観察し、制御工学的に1次遅れシステムへ近似し、応答のゲイン・時定数・むだ時間を求めた。正常状態の応答に比較し、ノルアドレナリン血管抵抗応答のゲインは約10分の1に、ドブタミン右心機能応答のゲインは約3分の1に低下していた。この応答に基づき、比例積分アルゴリズムによるノルアドレナリンとドブタミンの投与制御ループを設計した。また中心静脈血酸素飽和度と心拍出量の関係を工学的にモデル化し、薬剤投与制御ループとともに循環管理システムへ統合した。 このようにして作成した制御システムを、別の1頭の敗血症性ショックモデルへ適用した。ショック誘導後30分より新たに開発したシステムによる早期蘇生を開始した。システムはノルアドレナリン・ドブタミン・輸液製剤投与量を制御、平均血圧(28→100mmHg)・中心静脈血酸素飽和度(30→75%)を目標値へ自動制御した。ただ制御安定性などに課題あり、更なる開発を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要に記載したように、敗血症性ショックの早期蘇生療法を自動化する循環管理システムの設計・作成と、その自動治療を実際のモデルへ適用した際の挙動は確認したので、研究計画は当初の予定通り進捗している。しかしながら極めて最近の研究において、従来推奨されてきた早期蘇生療法の一部に修正が必要である事が報告されてきた。今後の研究開発には、そのような最新の国内外の臨床研究報告をリアルタイムで反映させつつ行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症性ショックの早期蘇生療法を自動化する循環管理システムを実際のモデルへ適用した際の挙動、制御性能の確認などを複数のモデル動物で行っていく。迷走神経刺激治療法が敗血症性ショックに有効であるという報告もあり、その効果を再確認したうえで循環管理システムへ統合していく。また敗血症性ショックにおける全身の酸素代謝異常の本態をつきとめ、より病態に即した循環管理システムへと発展させていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額51,712円は、当初国内学会出張に使用する予定であったが、当初予定より出張に使用した費用が安く抑えられたために生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には複数回の国内外の学会出張を予定しており、当初予定より費用が高くなる可能性もある。国内外の学会出張に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)