2016 Fiscal Year Research-status Report
高分子MRI造影剤による脳微細血管網イメージング技術の開発
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15K01308
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
馬原 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80416221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MRI / 高分子造影剤 / ガドリニウム / 微細血管 / 造影 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳の微細血管を可視化するMRI造影剤を開発している。平成27年度では、造影剤の基礎物性の評価として分子サイズと表面チャージ、体内での代謝性について評価した。その結果、8分岐型ポリエチレングリコールにフルオレセインとガドリニウムを導入した造影剤(F-8-arm PEG)は、他の構造のポリエチレングリコールを用いた場合と比較して、高い造影能を有していた。これは分岐鎖の運動制御による緩和能の向上である。また、生体環境下では、フルオレセイン基を介して分子凝集体を形成することや、これにより血中滞留性が一時的に向上して微細血管網を描出し、その後体外へ完全に排泄できることを明らかとした。このような成果に基づいて、平成28年度では、F-8-arm PEGを脳血管造影剤として選択し、F-8-arm PEGの分子構造や、分子凝集体が生体内での炎症応答にどのように関わるのか詳細に検討した。血中に投与された造影剤による炎症反応を評価するために、CRPやインターロイキンを評価した。その結果、開発したF-8-arm PEG造影剤は、投与6時間後にインターロイキン6や1βなどの炎症性マーカーを増加させるものの、臨床利用されている造影剤と同程度であることや、その値は24時間後には正常値まで減少した事、さらに血中CRPの応答は全く増加させなかった。これらの結果から、開発した造影剤は生体に有害な炎症反応を惹起させないことが明らかとなった。現在MCA閉塞プロトコルを用いてラットの脳梗塞モデルを作成中であり、最終年度である平成29年度では、脳梗塞における毛細血管網の再建メカニズムやその再生プロセス、さらにはこれらの脳血管閉塞プロセスが運動能力や記憶、生存率に対してどのように影響するのか詳細に解析する。これによりMRIを使った微細血管網の診断の有意性について明らにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、開発したMRI造影剤の生体内における炎症反応惹起性について詳細に解析した。投与6時間後でのインターロイキンの応答は認めたもののその程度は低く、造影剤の早期体外排泄に伴って有害な炎症を惹起しない、というエビデンスを取得できた。脳微細血管網の描出だけでなく、生体内での安全性も認められたことから、今後、モデル動物での脳血管診断法への応用において基礎データを取得し微細血管用プローブとしての有用性を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、MCA閉塞プロトコルを用いたラット脳梗塞モデルを作製して、開発した造影剤による微細血管網の評価を進める。MCAを閉塞させることで脳内に虚血状態を誘導でき、その状態から微細血管網が発達する過程を定量的に追跡する。微細血管網の発達と同時に、運動能力や記憶、生存率にどの程度の影響があるのかをモニターすることで、閉塞部位や血流再建の程度が、予後にどの程度の影響を与えるのか、開発した造影剤で明らかとする。さらに、脳梗塞の自然発症モデルをつかって個体の成長と同時に脳血管の形成や構造異常をこの造影剤を使って評価する。これらの検討から、開発した造影剤を脳疾患の診断につかう有意性について評価する。
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Research Products
(3 results)