2015 Fiscal Year Research-status Report
異方構造を有し高強度で高膨潤比を示すポリビニルアルコールゲルの新しい作製方法
Project/Area Number |
15K01311
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (90162924)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリビニルアルコールゲル / キャストドライ法 / 凍結解凍法 / 高強度 / 高膨潤 / 微結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
汎用のポリビニルアルコール(PVA)を用いて、従来のゲル化方法(キャストドライ(CD)法、凍結解凍(FT)法)を用い、作製条件を大きく変化させ物性との関係を検討した。 (1) CDゲルおよびFTゲルの作製:汎用のPVA粉末(平均重合度1700、ケン化度98~99 mol%:クラレ製、Cat. No. PVA117)を90℃以上で湯煎により純水に溶解して15wt%PVA水溶液を作製した。この水溶液をポリスチレンシャーレに適量流し入れ、重量が一定になるまで乾燥させ試料を作製した。CDゲルの作製条件として、乾燥時の温度(8℃から80℃)と湿度(40%RHから80%RH)を制御し、FTゲルの作製条件として、凍結・解凍時の温度(-17℃から-50℃)、各温度での保持時間(1時間から72時間)を制御し、様々な試料を作製した。 (2) 膨潤比と引張り強度の測定:室温において一定重量比の純水中に24時間静置し、平衡膨潤に達したゲルの重量(Wt)を測定した。その後、膨潤させたゲルを60°Cで24時間以上乾燥させ、このときの乾燥重量(Wd)を測定し、重量膨潤比(Wt/ Wd)を算出した。また、平衡膨潤に達したゲルをダンベルカッターによりJIS K-6251-3規格の試験片を切り出した。汎用の引張り試験機を用いて、試料が破断するまで単軸引張り試験を室温、大気中または水中で行なった。ビデオカメラで標点間の伸びを撮影してひずみを算出し、応力-ひずみ曲線を得た。 (3) ゲルの網目構造解析:X線回折(XRD)装置とフーリエ変換型赤外(FT-IR)分光光度計を用いて網目の構造解析を行ない、微結晶の大きさ・数・分布を見積った。乾燥を途中で中断した各試料の網目の構造解析を行い、ゲル化時間と微結晶の形成過程の相関を詳細に検討した。さらに、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いてゲル中の微結晶の結晶化度を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キャストドライ(CD)法では、低温で高湿度で乾燥させると結晶化度が上昇することが明らかになった。凍結解凍(FT)法では、-20℃で24時間の凍結、4℃で12時間以上の解凍により、結晶化度が上昇した。 一方で、温度、湿度の制御には様々な要因が影響を与えるため、実際の試料の環境制御には様々な制約があることが分かり、このことは次年度以降、引き続き注意深く最適化をはかることが必要であることを認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
キャストドライ(CD)法、凍結解凍(FT)法はすでに確立したPVAのゲル化方法でありながら、条件を大きく変化させると物性が大きく異なることが予想されていた。実際、そのような結果が得られたが、「乾燥」「凍結」は試料の表面から始まるために、試料サイズや使用する容器の物性(熱容量や熱伝導特性)によっても変化することが分かり、当初予想していた作製条件を固定しても、必ずしも同じ結果が得られないことも明らかになった。したがって、今後は同一形状・容量の試料を使用することにした。
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