2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K01312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 晋一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50444104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多糖 / 自己組織化 / 核酸 / 刺激応答性 / 疎水化多糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、自己組織化ゲル微粒子のゲル構造を自在に制御する会合性因子としてオリゴ核酸による二重鎖形成力を利用(核酸クリップ)することで、会合体形成およびそのゲル構造を厳密に制御した新規会合性ゲル微粒子(核酸クリップナノゲル)を構築するとともに、二重鎖オリゴ核酸の特性である温度応答性を付与した新しい動的高分子ナノ組織体の開発を進めている。本年度は、まず、親水性高分子にオリゴ核酸を導入するため官能基を修飾した反応性高分子の合成を試みた。具体的には、より高効率にオリゴ核酸を導入するため、2種類の官能基を導入した反応性高分子を合成し、オリゴ核酸の導入効率が高い反応性高分子の探索を行うこととした。2種類の官能基として、縮合反応による導入を目的としたカルボン酸と、温和な条件で進行するクリック反応による導入を目的としたアジド基を親水性高分子に修飾した。親水性高分子として多糖であるプルランを選択し、 CDI法を用いてアジドプロピルアミンを導入することでアジド基置換プルランの合成を行った。合成物のNMR測定よりアジド基置換プルランが得られたことを確認した。次に、プルランに無水コハク酸を触媒存在下で反応させることでカルボキシル基置換プルランの合成を行い、NMR測定よりカルボキシル基置換プルランが得られたことを確認した。また、導入するオリゴ核酸の設計を行い、人工核酸である架橋型DNA(BNA)のグアニンおよびシトシンヌクレオチドの3~5量体が目的のTmを示しうることが調査より明らかとなり、導入オリゴ核酸として採用することとした。本年度は、実験計画に基づきオリゴ核酸置換多糖の合成を進め、クリック反応および縮合反応によりオリゴ核酸を導入しえるアジド基置換プルラン、カルボキシル基置換プルランの合成に成功した。また、導入するオリゴ核酸として人工核酸(BNA)を基盤としたオリゴ核酸の設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、オリゴ核酸を導入した親水性高分子の設計と合成を主目的として研究を開始し、その過程で、修飾を予定していたオリゴ核酸の必要量およびその合成コストから、より高効率にオリゴ核酸を導入し得る反応性基を有する高分子を探索、合成する必要があるとの考えに至った。そのため本年度は複数種の反応性基を選択し、それらの水溶性多糖であるプルランへの導入条件を検討することに注力した。これにより、結果的に次段階のオリゴ核酸導入における条件検討を短縮することができると考えられる。分子設計・合成ともに計画に沿って進めることができている。導入するオリゴ核酸については、用いる人工核酸の種類および塩基配列等の設計は精査の上、完了しており、現在、大量合成の準備を進めている。基盤となる反応性高分子の合成を、本年度の計画よりも前倒して進めていることから鑑み、研究計画自体の進行度合いとしては順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、まず設計が完了している人工核酸(BNA)を基盤としたオリゴ核酸の大量合成を行う。これには、BNAホスホロアミダイトと固相担体による固相合成法を用いる。オリゴ核酸末端には、クリック反応に必要なアルキンおよび縮合反応に必要なアミノ基を修飾し、これまでに合成した反応性プルランへの導入を行う。得られたオリゴ核酸置換プルランはその構造解析を行うとともに、オリゴ核酸導入量を変えたオリゴ核酸置換プルランの合成も進める。次に、得られた相補的な配列を持つ二種類のオリゴ核酸置換プルランのオリゴ核酸二重鎖形成を紫外・可視分光光度計(UV-VIS)および示差走査熱量計(DSC)等を用いて詳細に検討する。加えて、会合体微粒子の形成およびそのサイズ・分子量・会合数等の会合特性をサイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱計(SEC-MALS)、動的光散乱計(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等により検討する。オリゴ核酸置換多糖微粒子内のオリゴ核酸二重鎖の温度特性および会合体ゲル微粒子の温度特性についても検討を行い、これにより得られた知見から、温度刺激による会合体形成制御可能な核酸の種類・配列・鎖長および水溶性高分子へのオリゴ核酸導入量の最適化を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に購入を予定していたオリゴ核酸について、今後の研究遂行計画、分子設計の検討より、フラスコでの大スケール合成に変更したためその分の費用を次年度に繰り越した。また、研究推進に必要なオリゴ核酸量が当初よりも増加し、その合成に必要なコストが増大したため、オリゴ核酸合成のために必要な費用も増加していることが理由として挙げられる。また、オリゴ核酸を購入から合成に変えたことで、有機合成に必要なガラス器具類についても予想していた以上に費用が必要となることが想定されたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は種々のオリゴ核酸合成のための試薬および器具類購入に次年度使用額の大部分を割り当てる予定である。また、合成したオリゴ核酸の分析に必要な分析装置消耗品の購入額を当初予定よりも多く割り当てる。それ以外の使用計画については計画通りに進める。
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Research Products
(3 results)