2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 晋一 京都大学, 工学研究科, 助教 (50444104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多糖 / 自己組織化 / 核酸 / 刺激応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、自己組織化ゲル微粒子のゲル構造を自在に制御する会合性因子としてオリゴ核酸による二重鎖形成力を利用(核酸クリップ)することで、会合体形成およびそのゲル構造を厳密に制御した新規会合性ゲル微粒子(核酸クリップナノゲル)を構築するとともに、二重鎖オリゴ核酸の特性である温度応答性を付与した新しい動的高分子ナノ組織体の開発を進めている。平成28年度は、人工核酸である架橋型DNA(BNA)を含む種々の配列から成る10mer以下のオリゴ核酸の合成を行った。さらには、合成したオリゴ核酸配列中の架橋型DNA(BNA)の数やその配列が二重鎖形成時の熱力学特性に与える影響について検討を行った。合成した種々のオリゴ核酸のTm測定による熱力学特性解析の結果から、天然型オリゴ核酸のTm値と比較して、グアニン部分を配列中一か所だけBNAに置換した場合においてもTmが顕著に上昇することが確認された。このTm上昇はBNAへの置換数に依存的なことも明らかとなり、BNAの置換により天然型よりも短鎖で安定な会合点(二重鎖形成)を形成し得ることが明らかとなった。この結果をもとに末端にアルキンを持ち、配列中にBNAを含むオリゴ核酸の合成を行った。得られた末端アルキン化オリゴ核酸と、昨年度合成したアジド基置換プルランを用い、クリック反応によりオリゴ核酸置換プルランを合成した。得られた合成物の構造解析より、オリゴ核酸置換プルランを合成し得たことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、人工核酸である架橋型DNA(BNA)を含むオリゴ核酸の合成およびオリゴ核酸配列中の架橋型DNA(BNA)の数やその配列が二重鎖形成時の熱力学特性に与える影響についての検討を主目的として研究を進めた。その過程において、天然型オリゴ核酸と比較し、BNA含有オリゴ核酸は合成コストが高く、合成時の反応性も低いことから、BNA含有オリゴ核酸合成条件の最適化が必要となった。そのため本年度はまず報告の少ない10mer以下のBNA含有オリゴ核酸の二重鎖形成時の熱力学特性について検討するとともに、より収率の高いオリゴ核酸合成条件の検討に注力した。その結果、実験的に会合性因子として適したBNA含有オリゴ核酸の配列決定に必要な知見を得ることが出来、合成条件についても最適化が進んだ。また、オリゴ核酸の合成およびその多糖への導入についてもほぼ計画に沿って進めることができており、得られたオリゴ核酸導入多糖の基礎物性解析も進めていることから鑑み、研究計画自体の進行度合いとしては概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まず人工核酸(BNA)含有オリゴ核酸の大量合成を引き続き行うとともにオリゴ核酸置換プルランの合成も進め、基礎特性解析およびバイオ機能評価必要な合成物の確保を進める。得られたオリゴ核酸置換プルランのオリゴ核酸二重鎖形成による会合体形成挙動や熱力学的特性を紫外・可視分光光度計(UV-VIS)を用いたTm測定および示差走査熱量計(DSC)等を用いて明らかとする。加えて、会合体形成についてはサイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱計(SEC-MALS)、動的光散乱計(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等により詳細に調べる。また、オリゴ核酸置換多糖会合体のバイオマテリアルとしての特性評価として、オリゴ核酸置換多糖会合体と疎水性薬物・タンパク質との相互作用について高速液体クロマトグラフィー(HPLC、現有)、SEC-MALSを用いて検討する。加えて、温度応答性薬物徐放材料としての機能についても評価する。さらには、オリゴ核酸置換多糖会合体と細胞との相互作用についても、培養細胞を用い、フローサイトメーター、共焦点レーザー走査顕微鏡等により定性および定量的に評価する。これらの結果から、オリゴ核酸置換多糖会合体のバイオ、医療応用への有用性と応用展開についての知見を得る。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、ほぼ予定通りの使用額であったが、本研究の中核となるオリゴ核酸の合成に必要なコストが当初予定よりも増大した。このオリゴ核酸合成のために必要な費用が次年度も増えることが想定されたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はオリゴ核酸合成のための試薬に次年度使用額の大部分を割り当てる予定である。それ以外の使用計画については計画通りに進める。
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Research Products
(4 results)