2016 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化剤添加が人工関節ポリエチレンの分子構造と力学特性に与える影響の解明
Project/Area Number |
15K01316
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
正岡 利紀 東京医科大学, 医学部, 講師 (70256270)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 康仁 東京医科大学, 医学部, 助教 (60567668)
宍戸 孝明 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70266500)
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 助教 (00424630)
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10246316)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 人工股関節 / 超高分子量ポリエチレン / ビタミンE / 微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ビタミンE混合および非混合型高度架橋超高分子量ポリエチレン人工股関節ライナーの微細構造を詳細に比較分析し、抗酸化剤ビタミンEの添加が構造に与える影響および摩耗・クリープ特性に与える影響に関して検討を行い、長期耐用実現のカギとなる最適な分子構造設計を解明し、次世代の抗酸化摺動面材料開発への足掛かりとするのが目的である。今年度は、各ライナーサンプルに対して、10%の一軸性圧縮試験後の相分率および分子配向度の変化を共焦点/偏光ラマン分光を用い分析した。未使用段階から両ライナーでは偏光ラマン強度が角度依存的変化を示したことから、結晶/分子配向を有していることが示唆された。さらにビタミンE混合型ライナーにおいては圧縮変形後に、ラマン強度の角度依存性が著しく増加したことから、摺動面の配向度増加が示唆された。一方、非混合型ライナーでは圧縮変形後に結晶化度の著明な増加が確認された。以上の知見から、ポリエチレン中のビタミンEの有無により、外力に対する分子構造の応答は大きく変化する可能性があると考えられた。現在は、数学解析による各構造パラメータの定量化を実施している。最終年度では、摩耗試験後の構造評価も実施し、ビタミンEの存在自体がポリエチレン分子の流動性およびin-vivoでの摩耗・力学特性にどのような影響を与えるか考察する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点ラマン分光法を用いた抗酸化ビタミンE混合および非混合高架橋超高分子量ポリエチレン(HXLPE)人工股関節ライナーにおける塑性変形前後での詳細な相分率(結晶・アモルファス・中間相分率)および分子配向度に関するラマン分光計測がおおむね終了しているため、当初予定通りに問題なく進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在は、各股関節ライナーにおける10%圧縮変形前後の偏光ラマンスペクトルに対して、カーブフィッティング解析を施行し、得られたスペクトルパラメーターから相分率や分子配向度の算出を行っている。解析は摺動面表層から深部数百ミクロンまで実施する。今後は、解析した構造データから、高度架橋ポリエチレン内におけるビタミンE添加の影響、特に分子流動や変形に対する力学的応答性などへの影響について科学的理解を深めていく。さらに摩耗試験後のライナーに対しても同様の評価を実施し、より生体に則した条件における微細構造の推移を観察し、実質的な耐用評価を試みる予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は下記の2点が挙げられる;(1)最終年度の消耗品購入に多くの予算が必要になることが想定されるため;(2)国内外への学会参加を本事業実施の途中年度では控えているため (信頼性の高いまとまった研究成果として最終年度で国内外の学会で発表することを希望しているため)
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
レーザーや光学フィルターなどの高価な消耗品に使用する。精力的に国内外の学会で本事業成果を発表する。
|