2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01337
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
土井田 稔 岩手医科大学, 医学部, 教授 (60237170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 秀樹 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (20285604)
遠藤 寛興 岩手医科大学, 医学部, 助教 (60458172)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 椎間板 / 変性 / MRI / T2マッピング / 髄核 / 椎間関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
腰椎MRIを撮像し水分含有量を示唆するT2マッピング法にて腰椎に対する運動負荷が椎間板に及ぼす影響を検討した。椎間板変性の原因になりうる椎間関節の軟骨変性についても同様の方法にて解析した。45度屈曲、30度伸展、40度の回旋運動を15回施行し、運動前、運動直後、30分間安静後の3回のMRIを撮像し、T2マッピング法にて比較検討した。髄核においては、運動負荷後にはT2は有意に低下するが、安静により元の値に回復することが明らかになった。線維輪では運動負荷によってもT2値に有意な変化はなかった。変性の分類によるとグレード1と2の椎間板変性のないか軽度の群では、運動負荷によりT2値は有意に低下し、安静により有意に増加した。グレード3と4の変性の進んだ群では、運動負荷前後のT2値の変化は認めなかった。 椎間板変性に影響を及ぼすと考えられる椎間関節軟骨についてもT2マッピング法を用いて同様の解析を行った。椎間関節のT2値も運動負荷後には有意に低下し、変性の初期変化に関与していることが明らかになった。以上の研究から変性変化の少ない髄核では、運動負荷によりT2値は低下し安静により回復するが変性が進行するとこの変化が非可逆的になり変性が進行していくことが示唆された。腰痛の治療システムを評価するために固定術前と術後の血液検査を施行し、血清中フッ素イオン濃度や微量金属濃度を測定した。血中フッ素イオン濃度は、脊椎固定術術後の骨代謝に影響を及ぼすことが判明し、今後骨癒合判定に利用が可能であることが示唆された。 ラット尾椎椎間板モデルについては、椎間板の圧迫による変性モデルを作成し、継続して椎間板変性の病態について神戸大学と共同研究を行った。圧迫により椎間板の変性が進行し、その過程で細胞のオートファジーを誘導しうる因子が、脊索由来細胞に多く出現し、これが椎間板変性に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、初年度の研究成果と研究目標を元に研究を継続遂行した。 昨年度に腰椎MRIを撮像し、T2マッピング法によるT2値を求めることにより 椎間板変性の早期診断に応用できることが明らかにした。本年度は、腰椎の運動負荷前と負荷後、安静後にMRIを撮像し、椎間板変性がないか軽度の髄核では、運動負荷後にT2値が低下し安静にて回復するが、変性が進んだ椎間板ではこの変化が起こらないことを明らかにした。椎間板髄核の初期の変性変化を診断することは可能になったが、これが腰痛の早期診断に結び付けていく必要がある。また、非特異的腰痛には、椎間板変性だけでなく椎間関節の変性も関与している可能性があり、これについても研究を進めていく必要がある。腰痛の早期治療に結び付けていく研究に関しては、進行しておらず課題である。 腰痛の原因となる因子の早期診断においては、脊椎固定手術前と後の血清中のフッ素イオン濃度や微量金属濃度を測定することにより診断するシステムの開発中であり、この分野の研究は本年度から開始したところである。 ラットを用いた椎間板変性モデルを用いた椎間板変性を解明する研究は、従来通り神戸大学と共同研究を進めており、この分野での進展はやや計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)MRI撮像によるT2マッピング法において、T2値が椎間板早期の変性と相関していることを見いだした。しかし、正常または変性初期の椎間板において病理組織と対比することは困難である。そこでMRI T2マッピングと手術的に採取した椎間関節面の病理組織を対比することにより、MRIT2値と軟骨変性の実際を比較検討し、変性の病態を明らかにする。 2)椎間板の変性モデルを用いた研究では、椎間板細胞のオートファジーに至る機序の解明を進めていく。椎間板変性モデルにおいて、オートファジーの誘導を示すLC3-II, p62/SQSTM1, beclin1などを免疫組織化学的に研究することにより、新たな椎間板変性機序を明らかにすることが可能になる。 3)腰椎固定術患者の術前と術後の血清フッ素イオン濃度とチタンなどの微量金属濃度を測定し、骨癒合不全や金属のゆるみなどを早期に診断できるシステムを構築する。 4)腰痛の早期診断として、MRIT2マッピング法は椎間板変性を早期に画像で捉えることを目的とした。本年度は、加速度センサーを用いた歩行解析を行い、腰痛の早期診断や手術後の歩行姿勢の改善などの評価を行う。 5)最終年度であるので治療システムの研究を行う。椎間板性腰痛に対する最小侵襲治療システムを確立していく上で現在の治療方法の問題点と治療成績を検証する。現在、変性した椎間板に対して側方侵入による椎体間固定術と後方固定術が施行されることが多いが、固定範囲により患者さんの日常生活動作が制限されるなどの制約も多い。ADLへの影響と固定範囲が隣接椎間に及ぼす影響などを調査する。 6)ラットの椎間板変性モデルに対して、種々の因子を注射することによる椎間板再生療法についても検討する。
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Causes of Carryover |
動物実験にかかる物品などの費用は、神戸大学との共同研究としたため当該研究費からは支出していない。人件費・謝金は、研究データの分析や解析を大学院生と研究者自らが行ったために新たな人件費は発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究を積極的に学会で発表していくための旅費を計上した。新たな研究のために血清フッ素イオンや微量金属元素の測定費用とそれに関連した試薬などを計上した。また、歩行分析に必要なセンサーや解析ソフトなども計上した。
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Research Products
(4 results)