2015 Fiscal Year Research-status Report
硬膜外腔内視鏡下手術における癒着剥離用超音波デバイスの開発
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15K01340
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
苗村 潔 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (90302752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 剛 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (60344735)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 振動速度 / キャビテーション / Raczカテーテル / ガイドワイヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 超音波振動が生体組織に与える影響 平成27年度は癒着試料に限定せず、超音波振動が生体組織に与える影響を調べた。20 kHz、振動速度0.7~4.8 m/sの超音波加振器を用いて、ブタ皮膚への影響を調べるために、超音波トロッカーを参考にした円錐型のモデルを振動子に固定した。超音波振動の振動速度に対して皮膚貫通に要する時間と、熱電対により皮膚内温度を測定した。実験の結果、振動速度が速くなるにつれて、貫通に要する時間は短くなった。しかし、貫通に要する時間の変化は、振動速度に対して単調減少ではなく、ある振動速度を境に殆ど変化しなかった。これは、超音波振動により生体組織が加熱され、タンパク変性により硬くなったためで、加振方法や組織によって異なることが考えられた。 次に、超音波振動による生体組織の損傷の要因として、加熱とキャビテーションが挙げられる。ブタ皮膚を対象にした実験とは異なる小型超音波振動子(共振周波数47 kHz)を研究分担者の森田が製作し、キャビテーション発生の有無と損傷について実験した。振動子への印加電圧を100~300 Vに変えることで、振動速度は5.35~8.24 m/sの範囲を示した。振動速度8.24 m/sの条件下、水中に入れた振動子の先端からキャビテーションによる気泡の生成と消滅が観察された。アルミ箔と振動子の距離を調節して、キャビテーションによる損傷を調べたところ、振動子から5 mm離れると、アルミ箔に穴が開くことはなかった。アルミ箔の代わりに腸間膜を用いたところ、水中に脂の溶出が見られたが、組織損傷については他の方法が必要と考えられた。 2 細径振動子の性能評価 当初計画とは別の方法として、先行して臨床応用されているRaczカテーテルを活用することを想定し、カテーテルのガイドワイヤを細径振動子に見立て、先端を超音波振動させる方法についても検証を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の森田と相談して、超音波振動が生体組織に与える影響を調べる実験機器を用意した。その際、森田が所有していた機器を借用し、分担者所属機関のある柏から代表者所属機関のある蒲田へ輸送して実験できるようにした。次年度以降に試作するための経費を残せるように、森田が既に所有しているものと同じ基本的な実験機器を新規に購入することは見送った。その結果、学部4年生2名と共同で、超音波振動による加熱とキャビテーションが原因で皮膚貫通や腸間膜損傷の様子を調べることができた。 また、先行する臨床技術として、Raczカテーテルがペインクリニック学会で注目されていることを知った。本研究で対象とする硬膜外腔内の神経根周辺の癒着剥離について、実用性の高い技術開発を進めるために有益な情報を得た。Raczカテーテルのガイドワイヤを超音波振動させる新しい方式について、基礎実験に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
1 超音波振動が生体組織に与える影響 硬膜外腔内に発生する癒着の組織モデルとして、心膜に付着した脂肪を採用して超音波振動の影響を評価する。平成27年度に皮膚を対象に用いた超音波加振器の振動子先端を、心膜と脂肪の間に当たるように実験装置を製作する。実験では、振動速度が組織温度および脂肪剥離に与える影響を調べる。一方で、本研究で対象とする癒着の組織学的特徴について、文献調査および臨床医への聞き取り調査を実施する。先行技術であるRaczカテーテルによる臨床を実施している病院を訪問して、生理食塩水やカテーテルにより癒着が困難であった症例の特徴について情報を得る。 2 細径振動子の性能評価 研究分担者の森田が設計したワイヤ型振動子を製作して評価する。振動子先端の振動様式の違いと、周辺組織の加温への影響について、実験と有限要素解析を行なう。1で得られた振動速度、組織温度と癒着剥離の関係性から、細径振動子の性能について考察する。また、平成27年度より検討を始めたRaczカテーテルのガイドワイヤを、超音波振動子として利用できるかについて、引き続き実験を進める。
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Causes of Carryover |
研究分担者の森田と相談して、次年度以降に超音波デバイスを試作するための経費を残せるように、森田が既に所有しているものと同じ基本的な実験機器を新規に購入することは見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細径振動子については、平成27年度より始めたガイドワイヤを加振する方法とワイヤ型振動子の試作費と実験機材費に100万円、臨床上の課題を把握するための国内医療機関への聞き取り調査旅費に20万円(3機関に1泊2日ずつ)と調査協力謝金に10万円、超音波振動子に関する国際学会参加による情報収集旅費に40万円(IEEE Internatinal Ultrasonics Symposium, フランスに4泊5日)、成果発表旅費に20万円(Asian Conference of Computer Aided Surgery, 韓国に3泊4日)を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)