2015 Fiscal Year Research-status Report
てんかん患者の認知障害、精神症状に関わる神経ネットワーク異常の解明
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15K01359
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西尾 慶之 東北大学, 大学病院, 講師 (90451591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 真樹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00420018)
神 一敬 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20436091)
藤川 真由 東北大学, 大学病院, 助教 (80722371)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 側頭葉てんかん / うつ / 記憶障害 / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は約50名分の,てんかんについての臨床情報,認知機能,精神症状,QOLに関するデータを取得した.また,これらの患者の構造MRI,FDG-PET,長時間ビデオ脳波のデータも取得した. これらのデータと過去に蓄積済みのデータから側頭葉てんかんの患者のデータを抽出し,てんかん発作の頻度,認知障害および精神症状が患者のQOLに与える影響についての予備的検討を行った.Overall QOLをアウトカムに,ウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)のVC(言語), PO(視空間), WM(作動記憶), PS(認知スピード)とウェクスラー記憶検査(WMS-R)の遅延再生指標(エピソード記憶),てんかん発作頻度,抑うつ指標を説明変数に設定し,多重回帰分析を行った.てんかん発作の頻度はQOLに有意な影響を及ぼさず,うつと記憶障害がそれぞれQOLに有意な影響を及ぼすという結果が得られた. 難治性側頭葉てんかんの治療目的で,右前部側頭葉切除術を施行された患者3名を対象に相貌認知に関する検討を行った.標準高次視知覚検査(VPTA)やWarrington再認記憶検査などの標準化された相貌認知および相貌記憶の検査では異常が認めらないにもかかわらず,術後に「他人の顔が覚えられない」と訴えるケースがあった.これらの患者では,眉毛,目,鼻などのパーツの特徴を利用することで単一の人物の顔を覚えることが可能であったのに大して,複数の人物の顔を同時に覚えたり,向きの異なる顔を単一の人物として認識する能力に障害があることが資された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
てんかんに関する臨床情報,認知機能,精神症状およびQOLについてのデータは順調に取得できている.これらのデータに関してはデータベースとして構築されており,ただちに利用可能な状態になっており,これまでに予備的な検討を複数行っている. 構造MRI,FDG-PET,長時間脳波に関してはデータの取得は順調に進んでいる.利用しやすい形でのデータベースの構築を現在すすめている最中である. 平成27年度は手術に至るてんかん患者の数が予想よりも少なく,fMRIや頭蓋内脳波のデータの蓄積は10名に満たない.手術の適応は純粋に臨床的な観点から行われるので,この状況は致し方無いと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27と同様のペースでデータの取得をしていく. 臨床症状とQOLについての関係についての検討をすすめ,学会発表,論文化を行っていく. 画像や脳波のデータベースの構築を急ぐ. 臨床データと画像データ間の関係についての予備的な検討をすすめる.
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Causes of Carryover |
fMRIや頭蓋内脳波解析を行う研究者の雇用のための費用,解析用のワークステーションの購入費用が,これらのデータが十分に取得できなかったためにほとんどかからなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度早々に解析用のワークステーションや,認知機能検査を行うためのノートPCの購入をする.また解析を行う研究者を新たに1名雇用する予定.
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