2016 Fiscal Year Research-status Report
順応性自動制御換気(ASV)療法でのより安全な心臓リハビリテーションモデルの構築
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15K01363
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
城宝 秀司 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 講師 (90334721)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性心不全 / ASV療法 / 交感神経活動 / 化学感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は慢性心不全患者におけるASV療法によるリハビリテーションモデルの構築を行う上で基礎となる研究報告、誌上報告を行った。慢性心不全では日常活動度の低下に伴い骨格筋の筋萎縮をきたし、ergoreflexの亢進を介して全身の交感神経活動亢進をきたす。そこで骨格筋組織を灌流する血管床に分布する筋交感神経活動を観察し、備品費で購入した心肺運動負荷モニタリングシステムAE-100i(型番 222AGBZX00283000)を用いて換気応答と交感神経活動を対比した。さらに慢性心不全における呼吸機能低下と交感神経活動との相互関係について検討した。拘束性呼吸機能障害のある患者では交感神経活動が亢進しており、呼吸機能の改善とともに交感神経活動の変化が関連することを見出した。結果は2017年のJournal of cardiac failure に報告した。機序として不明な点が多いが、一部には呼吸筋疲労の改善が関与した可能性が示唆された。さらにこれと並行して、ASV療法を行う前段階において慢性心不全に対して投与されたβ遮断薬の交感神経活動への影響についても検討を行った。これまでの報告どおり、高用量のβ遮断薬は予後を改善したが、その影響は交感神経活動の亢進例においてのみ観察されることを見出した。その成果は本研究費により参加した2016年ヨーロッパ心臓病学会にて発表し、さらに2016年 Circulation journalに報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年New England Journal of Medicineにおいて中枢性無呼吸合併心不全に対するASVの長期使用が有害との結果を受け、国内外でASVの長期使用が大幅に制限されることになった。しかしASV療法の有効性は依然十分に解明されたとはいいがたく、今後本邦では心臓リハビリテーションの現場において使用されていく可能性は残されている。平成28年度までにおいて心臓リハビリの治療標的となる骨格筋への血流を規定する筋交感神経活動と、呼吸筋疲労を反映する呼吸機能との関係、背景となる交感神経活動の予後へのインパクトをまとめるなど、これまで行われていない検討・議論を展開しており、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、慢性心不全患者におけるリハビリテーションモデルの構築を進める。本年度の結果を踏まえ次年度は心肺運動負荷試験から得られた換気応答、運動耐容能のデータと呼吸機能、筋交感神経活動を評価し、ASV療法による心臓リハビリテーションモデルの基礎となる病態生理を解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国内学会の報告に公務で参加できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に国内学会にて報告予定。
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