2015 Fiscal Year Research-status Report
呼吸方法の指導が運動負荷時の呼吸循環応答に及ぼす影響について
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15K01431
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| Research Institution | Kitasato University |
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Principal Investigator |
木村 雅彦 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20458748)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 篤彦 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00286387)
横場 正典 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (80316942)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 呼吸指導 / 呼吸理学療法 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
呼吸方法の指導は呼吸困難に対するリハビリテーション介入として古くから用いられている代表的な介入であるにもかかわらず，その科学的根拠は十分に蓄積されていない．特に運動中の換気亢進による運動耐容能の低下に対して効果を有するかについての研究は極めて少ない．換気効率の改善をもたらす横隔膜呼吸（腹式呼吸）がひろく推奨されているが、近年本邦においても増加する慢性閉塞性肺疾患（COPD）に代表される呼出障害を有する場合、過度な深呼吸努力はいたずらにと過膨張による呼吸努力の増大と呼吸困難の増悪を生じることが危惧される。
これに対して適切な呼吸方法の指導が運動中の換気効率の改善を介して運動耐容時間を延長することが証明出来れば、日常生活活動（ADL）における息切れを軽減したり運動療法を円滑にすすめたりする一つの方策として有用であることから，本研究課題は呼吸方法指導の一つである腹圧呼吸の運動時における効果とその作用機序を定量的かつ論理的に証明するものである。
具体的には、若年健常者を対象に、腹圧を加えて呼出する努力性呼吸を行わせ、これが自転車エルゴメータを用いた運動中の一回換気量の増加を介して運動耐容能指標の改善に寄与することを立証する。過去の研究においては呼吸理学療法ないし呼吸指導の効果は安静呼吸において行われている研究が多く、必ずしも本来希求されている運動時の呼吸困難を改善しうるか否かという命題に対する答えを提供しておらず、運動中の換気応答を改善することを証明することが意義深い。さらに、過去の研究においては呼吸指導の作用機序が明確でない。呼吸筋活動の詳細ならびにその際に変化していると考えられる腹圧や胸腔内圧については、古典的な研究がいまだに引用されているのみであり、今日的な評価を欠いている。したがって、本研究では胸腔内圧と腹腔内圧を実測して、その作用機序を明確にすることにも重点を置いている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はすでに北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施している。研究初年度の平成27年度には予備実験を中心に計画し、まず、健常成人10名程度においていくつかの興味深いデータ集積を行った。
まず、本邦における呼吸理学療法の教科書である呼吸理学療法標準手技（医学書院）に収載されている腹圧呼吸の指導方法を明確にし、被験者にはさらにその際の側腹筋群活動について超音波画像診断装置を用いて視覚的にフィードバックすることで、十分な教育（介入）効果を確保することができた。
腹圧呼吸の指導によって安静時の換気指標である一回換気量が有意に改善すること、その際の呼吸筋活動として、先行する呼気相における側腹筋群の活動ならびにその後の吸気相において主動作筋となる横隔膜の筋活動について超音波画像を用いて解析し、これらの形態学的にとらえた筋活動が有意に増加することを立証した。次いで、換気量と呼吸筋活動との相関関係を明らかにした。測定および解析に関する習熟が進んだことも極めて重要な進捗と考えている。また、分担研究者の医師によって経鼻的に挿入し、胃食道内に圧力センサー付きのバルーンカテーテルを留置し、リアルタイムで胃内圧および下部食道内圧を安定して連続測定する方法を確立した。さらにポリグラフ上での同期処理ならびに解析方法についても検討を繰り返し行なった。この結果、術者の習熟度はもとより一定の安定した測定信頼性を確保でき、また、カテーテルの滅菌再利用方法等の物流も含めた実験系としての手順をほぼ確立した。
関連学会に出席して情報収集に務める一方、平成27年度に得られた知見のうち、前者の換気指標と呼吸筋活動指標との関連については国内学会で結果の一部について発表し、さらに内圧のデータを加味したものを国際学会において発表するべく演題を登録し、こちらは査読結果を待っている状況である。
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で扱う内容は、呼吸指導という単純な介入であるがゆえにその実施と結果並びに機序の解明に供する指標が客観的に評価できることが極めて重要であると考えている。
計画初年度の平成27年度には既存の機器ならびに設備や物品を用いて予備的な実験をくりかえし行い、実験系の構築として具体的には換気指標と呼吸筋活動ならびに心血管反応と胸腔内圧/腹腔内圧の測定を同時に行える物的ならびに術者のスキルトレーニングを含む人的な実験系がほぼ確立できた。また、その結果得られた主に安静時を中心とする測定結果も、現在解析中のものを含めて予想にほぼ一致した成果を得られた。
研究計画2年目となる平成28年度においては、まず昨年度の研究内容において技術的な問題を解決しえたことを踏まえて、測定に際してはその重要性を検証するとともに耐久性に関する評価も行えた機器については、必要数ならびに予備機を含めた再整備や補充購入を行う予定である。そして、分担研究者ならびに共同研究者と連携して、被験者をリクルートしやすい夏から秋にかけてをめどに、集中的にクロスオーバーデザインによる実験を円滑に行い、特に運動時の換気応答、筋活動、心血管反応、作用機序を解明するための胸腔/腹腔内圧の測定値を必要数収集する予定である。また、関連する学会における情報収集と成果発表を進めるため、国際学会を含む複数の学会における活動を計画している。
なお、本研究課題の最終的な目標である、運動中の反応とその作用機序に関する結果が十分に収集できたところで最終的な英文論文作成を予定しているが、下位項目の内容については適宜国内外における投稿の機会を逃さずに公表したいと考えている。
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| Causes of Carryover |
計画初年度は既存の機器及び別途調達した研究費を用いて機材整備を実施したため、初期投資が不要となった分が余剰となった
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のごとく初期費用が軽減されていたが、次年度では機器（特にカテーテル）の必要数の調達および更新、ならびに滅菌等のコストが予定されており適正に予算執行する予定である。
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