2017 Fiscal Year Research-status Report
シスプラチン腎症に対する温熱プレコンディショニングの効果
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15K01447
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (70623510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シスプラチン誘発性腎障害 / 全身温熱刺激 / TRPV4 / small HSP / MYLK |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチン投与前に深部体温を約2℃上昇させる全身温熱刺激(mild systemic thermal stimulation: MTS)によるプレコンディショニングによって、シスプラチン誘発性腎障害を軽減できることを再実験においても確認した。作用機序の手がかりを得ることを目的として、MTS実施から6時間経過した腎組織をマイクロアレイを用いて遺伝子発現を網羅的に解析した。GO生物学的機能解析やpathway解析からはTRP channelやRhoシグナル経路が影響する可能性が示唆され、またRho遺伝子発現やMYLK遺伝子発現の減少は、血管平滑筋の弛緩、および腎血流を増加させる可能性が示唆された。そこでTRPV4 channelを薬理学的に阻害してHSP mRNA発現変動をreal time PCRで確認した。実験は、MTSを実施した群(MTS,n=3)、TRPV4を阻害させてMTSを実施した群(Block,n=3)、MTSを実施しなかった群(Cont,n=3)の3群で行った。MTSの実施により、HSPB1(Hsp27) mRNAは約2.24倍(vs. Cont群,P<0.001)、CRYAB(alphaB-crystallin) mRNAは約3.30倍(vs. Cont群,P<0.05)の有意な増加が認められた。しかしながらBlock群において増加は認められなかった(NS.)。MTSはTRPV4を介して早期にsmall HSP mRNA発現を増加させる可能性が示唆された。以上よりMTSによるシスプラチン誘発性腎障害の軽減はTRPV4を上流にsmall Hspの発現に影響を及ぼすこと、MTS後に腎血流(髄質血流)が増加することが作用機序の一部として考えられた。しかしながら、MTSは全身的な作用であることから、血球にも影響していることが考えられ、今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熊本震災による遅れが最終年度まで影響しており、期間を延長して実験を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
MTS前処置によるシスプラチン誘発性腎障害の軽減効果において、TRPV4 channelの薬理学的阻害実験によりTRPV4 channelが上流で関与している可能性が示唆された。その一方で血管平滑筋の収縮に関与するmRNAの発現変動が認められたことから、MTSによるシスプラチン誘発性腎障害軽減に腎血流の影響も考えられた。また全身的な作用であることから、血球に対する温熱の効果についても検討する必要がある。これらについて細胞実験を立ち上げて実験を開始している。
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Causes of Carryover |
熊本震災により研究室が使用不能となり、復旧までに約1年間を要しました。教育業務においても震災の影響を受けて多忙となり、実験に割ける時間が削られたために、当初の計画に従って実験を進めることが困難となったことが原因です。
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Research Products
(5 results)