2016 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中上肢リハビリ支援のためのバイラテラルマスタスレーブ型ロボット装具の開発
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15K01462
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂井 伸朗 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60346814)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロボット装具 / リハビリテーション / 脳卒中 / バイラテラル制御 / 到達把持運動 / 骨盤運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳卒中後の運動療法におけるリハビリテーション支援のためのロボットシステムを開発することである。その中で、骨盤運動はリハビリテーションの中で最初に治療を行なうメニューであることに着目し、骨盤運動ハンドリングを双方向力覚フィードバックを有するマスタスレーブシステムにより行なうシステムを提案する。H27年度に初期モデルの開発を行なった外乱オブザーバを使用したバイラテラル制御型ロボット装具について、H28年度は療法士によるハンドリングを行い、ロボットを介することによる促通手法の力覚のリアルタイム視覚化を行なった。また、被験者と療法士がそれぞれ各ロボット装具を対面にて装着し、ロボット装具間における双方向力覚フィードバックにより、対面に座る被験者に全身協調運動としての到達把持運動様式を視覚により提示しながらのリハビリテーションシステムの提案が可能であることを確認した。一方、到達把持リハビリのための無線センサ化把持物についてはH27年度開発の開始合図用LED、加速度センサ、タッチセンサに加え、H28年度は床面距離センサを追加した専用基板を開発し、各センサに対し閾値を設定することで外部トリガ出力を与えることで、経頭蓋磁気刺激装置等といったリハビリ専用外部機器と連携したリハビリシステムへの拡張を行なった。これらロボットやセンサ化システムにより、力の定量定期解析とともに正確な時間刻みによる定量的なリハビリの可能性が示された。これらのシステム構築の上、双方向力覚フィードバック型ロボット装具と無線センサ化把持物の同時運用システムとして制御ソフトウェアを拡張し、床反力を含めた当初の目的の一つであった骨盤運動と到達把持物を連携した脳卒中リハビリテーション支援ロボットシステムとして構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度について、H27年度に動作可能となった双方向力覚を有する骨盤運動支援用ロボット装具について、療法士によるロボットの操作を開始した。本システムのような全く新規のシステムにおいては、どのようにこれを使用すればよいかが一つの課題となると考えられる。本システムは双方向力覚を有するため、患者装着のロボット装具に対し、操作用ハンドルや療法士用ロボット装具により、被験者の状態を力覚により感知しながら運動と力のリアルタイムモニタリングおよび介入が可能であったため、運動そのものに対しては有用なシステムであるとの見解を得た。一方、無線センサ化把持物については、療法士らの提案の下でロボット装具との連携とならび、経頭蓋磁気刺激といったその他のリハビリ介入システムとの連携が求められ、運動療法では外部刺激のタイミングが重要となる場面がある。このように正確なタイミングと外部刺激を加えながら、被験者に対し正確なハンドリングを行なう事は、ロボット装具システムを用いて初めて実現可能となると考えられる。一方、胸郭部まで含めた体幹への介入のためのロボットシステムの拡張は現状の骨盤運動支援システムからの拡張については十分に達成されていない。しかし、申請者らはこれまでに骨盤+胸郭側屈・回旋・屈曲、肩甲骨運動まで含めた運動を能動的に制御可能なロボット装具を開発しており、5年間にわたり現在においても研究協力者の所属するリハビリテーション病院にて患者の回復程度のモニタリングおよび、測定時点での到達把持様式の解析に使用している実績がある。特に無線センサ化把持物の開発を要望に応じて先行して開発を進めてきたが、既存の肩甲骨体幹ロボット装具機構を改良し双方向力覚を有する骨盤体幹ロボット装具へ発展させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度において療法士らによるロボット装具の操作を開始し、リハビリにおけるハンドリングのためのシステムとしての運用が可能であるとの意見を得た。本ロボットシステムはリアルタイムでの力ならびに骨盤運動の計測が可能であるが、記録されたデータの解釈について解析を引続き行なう必要がある。リハビリにおいてはこれらのデータ解析まで含めたパッケージこそが重要であると申請者等は考えているため、定量的に測定された療法士等の介入手技について解析を進めていく必要がある。また、H28年度に双方向力覚型骨盤ロボット装具と無線化把持物を同時サンプリングにより計測可能なシステムとして構成したが、視覚情報から床版力、骨盤運動にいたる運動にいたる到達把持動作全体の運動シーケンスについてもH29年度に解析を進める計画である。到達把持運動は体幹まで含めた全身運動である。胸郭部運動については、過去に申請者らが開発した肩甲骨-体幹3自由度-骨盤までのロボット装具システムがあるが、現在の双方向力覚を有する骨盤ロボット装具に加え、体幹運動に対しても双方向力覚を提示する機構ならびに制御を構成する計画である。一方、骨盤運動そのものに関しても前後傾斜だけの運動ではないため、脳卒中運動療法において重要となる要素を見極めた上で、ロボット装具機構を拡張する計画である。また、これまでロボット装具を運用して測定してきた患者と同等の損傷部位を持つ患者に対し、双方向力覚型ロボット装具による治療の試験を行なう計画である。これらの内容について特に療法士による双方向力覚ロボット装具の操作を中心に世界バイオメカニクス会議(2017年7月オーストラリア:accept済)にて発表予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会参加費分について、2016年申込みした国際学会が2017年度開催であるため、その参加費および旅費に相当する金額について次年度使用額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会について2017/7/23-27にオーストラリアブリスベンで開催されるThe XXVI Congress of the International Society of Biomechanicsへ参加するための参加費および旅費として使用します。
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