2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者施設における歩行補助具の使用実態と満足度に関する調査研究
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15K01463
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
北島 栄二 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 准教授 (10513468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 登志夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (40244090)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉用具 / 要介護高齢者 / 歩行車 / シルバーカー / 介護保険 / QUEST2.0 / 重心動揺計 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】平成28年度の研究は,通所リハビリテーションの利用者について,歩行車とシルバーカーの使用実数と満足度を調査するとともに,歩行車とシルバーカーを使用している要介護高齢者の間で,バランス能力に違いがあるのかを検証した.また,結果から歩行補助具の選定における課題を明らかにした.
【対象と方法】(1)対象:通所リハビリテーションの利用者.(2)研究のデザイン:バランス能力測定と質問紙を用いた横断研究.歩行車とシルバーカーの使用実数と満足度を調査するとともに,歩行車とシルバーカーの使用者の間でバランス能力を比較する.(3)評価の項目及び方法 :1)主要評価項目;①静的バランス能力検査:重心動揺計を使用し,30秒間の静止立位時の重心動揺(総軌跡長LNG),②動的バランス能力検査:TUG,2)副次的評価項目;①福祉用具満足度調査:QUEST 2.0,② IADLの実施状況:改訂版FAI,③その他の基本属性:年齢,性別,要介護度,同居の有無,自宅周りの環境,転倒歴 (4)統計解析方法:シルバーカー群と歩行車群に分類し,評価項目を比較.有意水準は5%未満.LNGとTUGについて,群間の比較をするためにMann-WhitneyのU検定を用いて単変量分析を行う.(5)倫理的配慮:国際医療福祉大学倫理審査委員会,承認番号 16-Ifh-031
【結果】介護保険で貸与される歩行車の使用者(n=61)と同様に,多くの者(n=60)がシルバーカーを使用している実態が把握できた.また,歩行車使用者(n=40)とシルバーカー使用者(n=27)の静的バランス能力検査の結果は,群間で有意差がなかった.本来,シルバーカーは健常高齢者の荷物運搬を支援する用具であり,歩行補助具ではない.そのため,使用者の能力に応じた歩行補助具への変更(シルバーカーから歩行車への変更)を行うことが,喫緊の課題であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り,調査を実施できた.平成29年10月に台湾で開催されるThe 1st Asia-Pacific Occupational Therapy Symposium(APOTS 2017)へ演題申請して受理された.平成29年10月,同学会にて発表をする.
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Strategy for Future Research Activity |
【最終年度の研究計画】最終年度は,課題解決を検討する予備研究を計画している.研究デザインはシングルケーススタディ.シルバーカーの使用者に「歩行車を一定期間使用(介入)」してもらい,介入期と被介入期のアウトカム(歩行活動量など)について比較・分析し,活動性の変化を検証する.また,その予備研究の結果をもって,大規模な介入研究(クロスオーバー比較試験)を立案し,H30年度の科研費へ申請する予定.① 対象 : シルバーカーを使用する要介護高齢者,② 基本属性など : 大学関連通所施設の利用者,③ 結果 :主要評価項目は歩行活動量.副次的評価項目は重心動揺計の計測値(LNG),FES(転倒恐怖感指標),FAI(IADL)とする. ※ 活動量計の特徴(笹井ら,2015):近年,加速度センサを内蔵する活動量計(以下,加速度計)を用い,身体活動を評価した観察研究や介入研究が飛躍的に増加している.加速度計法は,二重標識水(doubly labeled water; DLW)法よりも導入コストが低く,呼気ガス分析法よりも対象者の負担が小さい.また,歩数計法や質問紙法よりも妥当性および信頼性が高いため,生活者としてのヒトを対象としたフィールド研究に導入しやすい点が特徴である.
【予想される医学上の貢献及び意義】研究成果により,歩行補助具変更の有効性が客観的に示され,要介護高齢者の活動性向上に貢献できる可能性がある.結果として,介護保険制度への提言,さらに転倒などの事故による医療費や介護費用を大幅に削減することも期待できる.
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Causes of Carryover |
まず謝金について,調査協力施設ならびに被験者と調査補助員に謝金を支弁する予定であったが,調査協力施設ならびに被験者は,先方の無償の協力により終了した.また調査補助員は,補助回数が予定よりも少なかったため,少額に留まった.つぎに学会発表について,平成28年度6月に論文が受理されたことで学会発表は国内のみとなり,旅費の執行が少額にとどまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に行った研究結果は,すでにThe 1st Asia Pacific Occupational Therapy Symposium (APOTS 2017,October 20th -22nd, 2017 in Taoyuan)へ演題投稿済みであり,演題名は「Comparison of the Balance Ability of the Elderly Using Walkers/Shopping Carts and Outpatient Care Facilities」.現在,採択待ちの状況である.また上記発表内容を論文にまとめ,を海外雑誌へ投稿を予定している.さらに最終年度は,より定量的な評価指標を得ることができる活動量計の活用した予備研究を,計画に追加している.
このため,未使用額は学会発表の経費,論文作成経費,活動量計の購入経費などに充てることとしたい.
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Research Products
(2 results)