認知症高齢者を対象とした住環境整備の支援手法と整備項目に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K01470
• Research Institution: Tokyo Metropolitan University
• Principal Investigator: 橋本 美芽 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (80347278)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 住環境整備 / 住宅改修 / 認知症高齢者 / ケアマネジャー / 介護保険制度 / 生活環境整備

Outline of Annual Research Achievements

本研究の研究期間は３年間である。研究初年度（平成２７年度）は、認知症高齢者の住宅改修に最も関わる役割にある介護支援専門員への意識調査と住宅改修事例収集を目的とした郵送調査を計画した。調査対象者である介護支援専門員の団体に協力を求めヒアリングを行い、アンケート票の試作版作成を行った。
２年度（平成２８年度）は、試作版アンケート票を用いた予備調査を実施し、その結果を参考にアンケート票の修正を行い最終版を作成した。これを用いて介護支援専門員を対象とした郵送調査を実施した。回収した調査票は集計作業の後、分析と検討を行った。その結果、介護支援専門員は、認知症高齢者を対象とした住宅改修に意義や有効性を感じており、必要性が認められていることが把握された。一方で、住宅改修の実施件数は多いとは言えない現状が示された。その原因としては大きく２点を挙げることができた。第一に、認知症高齢者の住宅改修に対して、強く難しさを強く感じており、難しさが住宅改修の実施件数の少なさに影響している様子が伺えた。次に、介護保険制度における住宅改修費給付制度の制度の問題であった。認知症高齢者にとって制度が使いにくいこと、認知症の症状に対応した工事項目が給付対象工事に含まれておらず活用したくても対象とならない可能性があること、等である。これらの分析結果は２９年度に関連学会で発表予定であり、現在３本を発表論文投稿を行っている。
また、２年度は、他に１件の郵送調査を実施した。調査は介護保険制度の住宅改修に深く関わる職種である福祉用具専門員を対象とし、意識調査と住宅改修事例収集を目的として行った。郵送調査は年度内に終了し、入力・集計作業を終え分析に入った段階である。分析作業は３年度（２９年度）に継続して行う予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究初年度（平成２７年度）にはアンケート票作成と郵送調査1件の実施を計画していたが、アンケート票作成のためのヒアリング及びアンケート票の作成までが実現し、調査協力機関との調整途中で２年度（２８年度）に移行した。この遅れを取り戻し郵送調査を実施した。さらに別の調査対象者に対して新たなアンケート調査票を作成し郵送調査を実施した。従って２年度は２件の調査結果の分析作業を並行して実施した。また、郵送調査対象者に対し、２次調査としてのヒアリングの協力を募り、ヒアリング協力者を得た。
３年度（平成２９年度）にヒアリングを実施する予定である。２年度の研究成果は関連学会で発表の予定であり、２年度末までに３件の論文発表投稿を行っている。
２年度の研究の進捗により一定の成果を得るに至ったことから、研究は概ね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

研究２年度（平成２８年度）には調査対象者別に認知症高齢者を対象とした住宅改修に関する２件のアンケート調査を行った。
先に行った介護支援専門員向けの意識調査は概ね分析が終わり、３本の学会発表論文にまとめている。年度後半で行った福祉用具専門相談員向けの郵送法による意識調査は結果の集計を終えて分析作業に入ったところである。研究期間の最終年度（２９年度）には残る分析を急ぎ、関連学会においてさらに２本の論文発表を行う予定である。その後に、２件の調査結果を比較検討し、新たな論文にまとめる予定である。
また、２件のアンケートの２次調査としてヒアリング調査を計画している。アンケート調査実施時にヒアリング協力者を募集しており、協力申し出を行っている者を対象としたヒアリングにより、認知症高齢者の住宅改修の実態を詳細に探るとともに、事例についても情報を収集し、実施事例の特徴について検討を行う予定である。
さらに、住宅改修に関わる福祉用具専門相談員または、その所属する福祉用具事業所・住宅改修事業所の協力を得て、認知症高齢者の住宅を訪問し、住宅改修の実施状況と工夫点、実施経過、家族の感想や主観的評価などをヒアリングすることを計画している。
これらを基に、認知症高齢者の住宅改修の現状を把握し、その特徴を明らかにすること、認知症高齢者の住宅改修における特徴的な工事項目の抽出、事例集の作成等を行う計画である。

Causes of Carryover

今年度は、年度内に２度の郵送調査を行ったため、回収した調査票の整理・検票作業・お礼状の郵送などの諸作業が当初の予想より多く必要となり、アルバイト雇用による人件費の増額が避けられなかった。そのため、当初予定していた解析用ソフトウエアの購入予算が不足して購入は困難となった。
結果として、ソフトウエア購入は次年度に行うこととなり、購入予算に充てるために確保していた予算額を次年度に繰り越すことになった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度購入の予定が次年度へ繰り延べとなった統計解析用ソフトウエアの購入予算に全額を充てる予定である。