2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢者せき損患者の歩行リハビリ訓練を支援するロボット
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15K01490
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
榊 泰輔 九州産業大学, 工学部, 教授 (60373130)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉・介護用ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高齢者に多い脊髄損傷による下肢麻痺に対し、立位保持・歩行の訓練を効率化する2種のロボットを開発し検証することを目的としている。立位保持訓練ロボットは、立位可能な患者に対し、足の前後スライド運動を介助し左右足への重心移動と遊脚・立脚など基本的な動作をその場で訓練する。歩行訓練支援ロボットは、腰を保持し実環境での歩行を患者に追従しながら支援する。本事業において、介助力調整機能、運動状態表示機能、転倒防止機能が研究課題である。 介助力の調整機能について、立位保持訓練ロボットでは、訓練結果の評価機能を簡素化し高齢者にもわかりやすくした。従来はやや複雑な動きが必要で高齢者にはわかりにくかった。また訓練時における脳賦活状態をNIRS(赤外線で脳血流を計測)装置にて計測し、トレッドミル歩行との差異を観察した。単なる前後スライド運動では歩行に比べ脳は賦活せず介助動作に何らなの工夫が必要であることが分かった。歩行訓練支援ロボットでは、足底にスイッチを取付け足動作に応じて腰を左右に揺動し足踏みだしを介助する機能を開発した。踏み出す足の動きに同期して腰を搖動することができる。また、運動状態の表示機能について、立位保持訓練ロボットでは、表示の大きさや配置を工夫し高齢者にもわかりやすい操作パネルを試作した。歩行訓練支援ロボットでは、足動作と腰揺動に応じた体重心の移動を画面に提示できるようにした。足底圧を計測する機器を用いてPCに足底への荷重状態を体幹姿勢画像とともに表示した。また、転倒防止機能について、立位保持訓練ロボットでは、臀部下のシートを保持する機構を簡素化し車いすとの移乗機能を維持しながら機構全体を軽量化した。歩行訓練支援ロボットでは、膝折れ時に対応するため腰周囲のシートと臀部下のシートの改作を検討した。 以上の成果について日本機械学会九州学生会(2016年3月)で3件報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立位保持訓練ロボットと歩行訓練支援ロボットの2種のロボットを組み合わせることで、高齢者に多い下肢麻痺患者のリハビリ訓練に有用な手段を提供するべく、研究課題を推進している。2種のロボットの改作と実装すべき各研究課題について、概ね目標通り達成しており成果を学会等で3件発表している。また、研究推進体制についても、総合せき損センターや企業をふくむ月例の推進会議を継続している。 個別の課題については、介助力の調整機能について、立位保持訓練ロボットでは、評価機能を高齢者にわかりやすくするとともに脳賦活等についての検証も進め、次のステップに向けての課題抽出に結びついている。歩行訓練支援ロボットでは、腰揺動による足踏みだし介助機能の実装と簡単な実験を開始している。ただし、立位保持訓練ロボットでは、改良した評価機能の検証と評価結果をもとにした難易度の自動調整機能の実装がこれからの課題となる。また、歩行訓練支援ロボットでは、腰揺動が片側のみであり、両側で連続して実施できる機能の実装が課題となる。また、運動状態の表示機能について、立位保持訓練ロボットでは、高齢者にもわかりやすい操作パネルの試作を実施している。歩行訓練支援ロボットでは、体重心移動を体幹姿勢とともに表示できるようにしている。ただし、立位保持訓練ロボットでは、操作パネルの見易さの検証が次の課題となる。また、歩行訓練支援ロボットでは、腰揺動を両側で連続して実施した際のわかりやすさの検証が課題となる。また、転倒防止機能について、両ロボットで、それぞれ膝折れ等の対策のため試作をしている。ただし、これらの転倒防止対策の有効性の検証と改良が次の課題となる。 以上の進捗と課題を総合的に評価して、概ね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、立位保持訓練ロボットと歩行訓練支援ロボットの2種のロボットを組み合わせ、高齢者の下肢麻に対する訓練に有用な手段を提供するべく、研究課題を推進していく。前年度までの成果をもとに、2種のロボットの改作と実装すべき各研究課題について推進する。成果は学会・研究会・展示会等で適宜報告する。また、研究推進体制について引き続き、総合せき損センターや企業をふくむ月例の推進会議を継続していく。 個別の課題について、介助力の調整機能については、立位保持訓練ロボットでは、改良した評価機能により難易度を自動調整する機能を実装する。脳機能を賦活させる効果がだせる工夫も検討する。歩行訓練支援ロボットでは、腰揺動が左右両側で連続して実施できる機能を実装する。これらについて取組むがうまくいかない場合は療法士等の専門家の意見を聴取し、難易度調整パラメータや腰揺動速度等の調整など改良を試みる。また、運動状態の表示機能について、立位保持訓練ロボットでは、操作パネルの見易さの検証のため、若年健常者および高齢健常者また療法士等の医療専門家について意見聴取する。また、歩行訓練支援ロボットでは、腰揺動を両側で連続して実施した際のわかりやすさの検証のため若年健常者および高齢健常者また療法士等の医療専門家について意見聴取する。これらについて取組むがうまくいかない場合は療法士等の専門家の意見を聴取し、表示の配置や重心移動のタイミング提示の方法など改良を試みる。また、転倒防止機能について、両ロボットで、それぞれ膝折れ等の対策のため試作を重ね、転倒防止対策の有効性の検証と改良を継続する。若年健常者にて実際に車いすから移乗する際の、移乗の容易性や転倒リスクのチェックを行う。このとき療法士等の専門家の意見も参考にする。
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Causes of Carryover |
物品として購入した装置について当初見積額より少ない額で購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
開発中のロボットの機構改良用材料購入に用いる。
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Research Products
(3 results)