2015 Fiscal Year Research-status Report
実環境下を想定した聴覚補助器による非言語・パラ言語情報伝達性能評価試験の開発
Project/Area Number |
15K01495
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
籠宮 隆之 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報資料センター, 特任助教 (10528269)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 補聴器 / 人工内耳 / 心理尺度 / 感情音声 / QOL / 話者属性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに,補聴器や人工内耳等の聴覚障害を補う機器が数多く開発されてきている.しかし,これらの機器のユーザは,「どの人の声でも同じ声に聞こえる」「話し手の細かい感情が分からない」などの不満を抱えている.特に,雑音環境下や複数の話者が同時に発話している状況では,より問題が顕著になることが知られている.そこで本研究では,これらの問題を解決する手掛かりとするために,聴覚補助器で「発話者の意図や感情」や「発話者は誰か」,などの非言語・パラ言語情報がどの程度伝達できているかを評価するためのテストを作成することを目的とする. 本年度は,話者の感情をどの程度伝達できるかを評価する尺度のプロトタイプ,および話者の性別や年齢などの属性がどの程度伝達できるかを評価する尺度のプロトタイプを構築した.そして,これらのプロトタイプを用いて人工内耳の聴こえをシミュレートした音声,および骨導超音波補聴器を用いて実験を行い,これらの装置で静音下や雑音下での話者感情や話者属性の伝達がどのように変化するのか,また,これらの尺度が聞こえの変化を正しく評価できるのか,検討した. また,これらの研究成果について国内外の学会等で成果を発表し,関連研究者と討議を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度構築を目指している.本年度は,話者感情識別評価尺度や話者属性伝達評価尺度のプロトタイプを構築し,予備実験的に騒音下での聞こえをシミュレートした評価実験を実施した.人工内耳シミュレータおよび骨導超音波補聴器を用いた予備的な評価実験の結果,それぞれの聴覚補助器の特性,および騒音の付加に応じた評価得点を示していた.したがって,これらの尺度は概ね聴覚補助器の性能評価に貢献するものとなると考えられる. また,これらの評価尺度は,感情の正解率や話者識別の正答率など,聴覚補助器のユーザにとって分かり易い指標となっており,臨床現場でも役立つことが期待されるものである. 以上の理由により,研究プロジェクトの1年目の成果として,概ね順調に達成できていると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに作成した評価基準以外での評価尺度の構築を検討する.そのために,聴覚障害者や聴覚補助器のユーザがどのような点で聴覚補助器に不満を持っているかをリサーチする.これには,国内外の研究動向の調査のほか,アンケート調査なども検討する.さらに,これまでに構築した尺度の評価実験を,より実環境下に近い条件を想定して実施する. また,これまでの評価実験は小規模であったので,より大人数の被験者による実験を行い,安定した評価結果が得られるかを検討する.加えて,より多様な聴覚補助器の性能を評価し,それぞれの聴覚補助器の性能を正しく捉えているかを検討する.さらに,評価尺度を回答する際の負担や時間など,尺度のユーザビリティを検討する.これらの評価実験の結果を反映し,プロトタイプをブラッシュアップさせていく.
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Causes of Carryover |
購入した実験機材やソフトウェアの価格が,申請時に見積もった額よりも価格が下がっていたため,本年度使用予定額を下回った.そこで,差額は次年度で使用することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被験者実験の謝金や機材の購入などに充て,有効に活用する予定である.
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