2015 Fiscal Year Research-status Report
種々の日本型健康法の理論的共通点の解明と医療費に与える影響調査
Project/Area Number |
15K01513
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
杉岡 良彦 旭川医科大学, 医学部, 講師 (30398747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 勝之 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 准教授 (50240479)
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90322908)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医学哲学 / 健康法の理論 / いのち / 自然治癒力 / 日本型健康法 / 呪術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)複数の日本型健康法の理論的実践的共通点を明らかにする、(2)年間医療費に与える影響を明らかにする、(3)実践による健康影響を明らかにする、の三点を目的とする。1年目に当たる27年度は、特に(1)の理論的実践的共通点を明らかにする文献的調査と、(2)(3)のための諸団体との交渉に費やされた。(1)については、研究分担者で明治国際医療大学の渡邉先生との活発な議論、文献調査により、日本型健康法の背後にある「いのち」の概念を明らかにする必要性が明らかになった。「いのち」は「自然治癒力」とも密接な関係にあり、日本型健康法はこうした「いのち」や「自然治癒力」を重視する。この1年間に、過去のいくつかの文献によって、日本型健康法には、日本的あるいは東洋的な自然観や生命観に根ざすものが多い一方で、明治、大正から昭和初期にかけて、現在ではその歴史からほぼ忘れられた、呪術的な要素の強い団体もあったことがわかった。一例として、田中守平の「太霊道」がある。このように日本型健康法の理論的背景は、最初考えていたよりも非常に複雑で、単なる自然観や生命観という哲学的問題だけではなく、呪術的あるいは宗教的な影響をかなりの程度受けているが、その近代化あるいは科学化を目指そうとする運動の中で、誤解を恐れずにいえばある種の「魅力」と「治療効果」を失った来た点があるようにも思われる。そして、現在のEBMに基づく医療体系の中で、こうした日本型健康法をその歴史をさかのぼりながら、あらためてどのように位置づけるのかは、科学史や医学哲学の観点からも重要な課題であることがあらためて確認された。 (2)(3)の課題に関しては、学内の倫理審査も終了しているが、諸団体との交渉に時間を要している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、(1)複数の日本型健康法の理論的実践的共通点を明らかにする、(2)年間医療費に与える影響を明らかにする、(3)実践による健康影響を明らかにする、の三点を目的とする。(1)に関しては、ほぼ予定通りに進捗しているが、(2)(3)に関しては、遅れていると言わざるを得ない。 遅延の理由に関しては、学内倫理審査で思った以上に時間を要した点と、日本型健康法に含まれると我々が考えていた活動が、それぞれの地域で少人数での活動として行われていたり、またそれらを統括する組織が特に明確ではない場合もあり、一つの健康法であっても、一か所に依頼をすればそこから下部組織に連絡が取れ、それによって早急に調査開始が可能となるという、われわれの初期の予想があてはまらない場合が予想以上に多かったかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記3つの研究課題のうち、(1)に関しては、引き続き渡邉先生との議論を通じて、考察を深める。 (2)(3)に関しては【進捗状況】にも記したように、小規模でいくつかの地域で行っている団体もあり、研究計画の変更を要する可能性がある。 具体的には、プロスペクティヴに医療費の調査を行うのではなく、過去の医療費に関して報告してもらうレトロスペクティヴな調査に変更する可能性がある。このことにより、例えば医療費以外の情報として、健康食品やサプリメントなどの購入に要したデータは得られなくなるが、研究に参加することによって、あえて病院の受診を避けようとする行動の可能性を排除できるため、健康法を行っている群とそうではない群との医療費の比較をより正確に行える可能性もある。これに関しては、28年度諸団体との交渉の中で、変更するか否かをきめ、変更することが決まれば、学内の倫理審査委員会の承認後に、変更後の研究を実施したい。
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Causes of Carryover |
前述した本研究の3つの課題のうち、 27年度は、(2)(3)が進まなかったためであるが、具体的には、学内倫理審査で思った以上に時間を要した点と、日本型健康法に含まれると我々が考えていた活動が、それぞれの地域で少人数での活動として行われていたり、またそれらを統括する組織が特に明確ではない場合もあり、一つの健康法であっても、一か所に依頼をすればそこから下部組織に連絡が取れ、それによって早急に調査開始が可能となるという、われわれの初期の予想があてはまらない場合が予想以上に多かったかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、上記(1)の研究を継続するとともに(2)(3)の研究も積極的に勧める予定である。具体的には、【今後の推進方策】にも記載したような、研究計画の変更も考慮に入れて行う。 しかし、その変更が行われたとしても、当初の予定の、調査票の購入やデータ入力などの人件費、研究協力への謝金、研究者の移動の際の旅費などに関しては、使用年度のずれ込みはあるとしても、基本的な変更はない。
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