2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K01525
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
高野 牧子 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (30290092)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 身体表現 / 幼小連携 / 国際学会発表 / 実践の集積 / レッジョ・エミリア教育 / レッジョ・ナラ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、これまでのレッジョ・エミリア市での調査に基づき、子育て支援活動において年16回、母子への身体表現活動を実施し、データを蓄積した。得られた知見を基に研究をまとめ、20017年5月17日~5月23日、BARRY大学(マイアミ)にて開催された18th IAPESGW Congress 2017に参加し、「A practical study of creative movement for children and their mothers」と題し、研究成果を発表した。レッジョ・エミリアでの実践などを参考に環境構成として多様な「もの」を毎回準備し、どのような環境構成によって、創造的な動きが生み出されるか、「もの」によって引き出される動きの特徴と母親による評価について検討した。また、持参した環境構成のデモンストレーションも好評で、示唆に富む実践的活動であるとの評価を得た。本研究は、「幼児と母親への「もの」を使った身体表現の実践的研究」と題し、邦文の論文に再構成し、『(公社)日本女子体育連盟学術研究』へ投稿した結果、査読後、採択された。 国際会議ではGowzalez 教授(ALCALA大学、スペイン)、Dr.Diketmuller(ウイーン大学)、Dr.Volkwein-Caplan(WestChester University,アメリカ)等の研究者と多く交流し、今後も引き続き、情報交換をしていくこととなった。 国内では、鳥取県伯耆町において、身体表現における幼小連携の可能性を検討し、同じ「動物になろう」という題材で、幼稚園と小学校で実践し、接続を考慮した内容と指導展開、指導法について検討を重ね、全国大会にて発表した。 これまでの実践的な活動を研究として見直し、再評価し、成果を公表する機会となった。さらに研究発表、視察ができ、今後の研究にも有益な充実した内容となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では実践の継続とデータ蓄積、さらに国際学会での発表の2つの柱を立てていた。 第1に、実践の継続とデータ蓄積として、2歳児とその保護者約25組を対象に年間10回、3歳児とその保護者約30組を対象に6回、子育て支援活動において母子への身体表現活動を実施し、母親による評価を参考にPDCAサイクルにより、実践方法を検証した。その結果、「光と影」では身体への気づきを促すなど、多様な「もの」を環境構成することにより創造的な身体表現を引き出すのに有効であることを明らかにした。 さらに幼小連携の実践として、鳥取県伯耆町での取り組みにおいて、身体表現活動について指導助言を行い、全国大会での発表を導いた。特に教師も子どもと共に身体で表現することが、動きを引き出す上で重要であることを指摘した。幼稚園での経験が小学校での学習へと繋がるよう、地域で連携していくことの重要性も明らかとなった。 第2として、研究成果の公表については、国際会議での発表と査読付き論文が挙げられる。The International Association of Physical Education and Sport for Girls and Woman(IAPESGW)は、女性の体育、スポーツ、ダンス指導者が一堂に会し、研究交流すると共に、女性や人種の人権について、スポーツの立場より考える団体である。4年に1度開催される国際会議は、18th IAPESGW Congress 2017とし、アメリカ、ヨーロッパだけではなく、南アフリカやキューバ、メキシコ、台湾など、世界各国から約160名の参加者があった。このような国際会議の場でこれまでの実践に基づいた研究内容を公表することができ、大きな成果だったと評価する。 さらに論文は「母子の発想を広げ、身体表現の楽しさを伝えるための教材、素材の効果を検証したもの」と評価を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、3つの視点から研究を継続していくこととする。 第1に、日本における実践の蓄積を継続する。2歳児とその保護者、約30組、3歳児とその保護者約40組、さらに幼小連携に向けてのカリキュラムとして、年長児、小学校1年への指導実践を検討していく。新幼稚園教育要領では、はじめて「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が明示された。これらは、到達目標ではなく、方向性を示したものであり、子どもの育ちを受け渡す環境を整えることが重要になっている。これまでに蓄積した創造性、表現力を引き出す環境構成について、さらに検討を加え、実効性の高いカリキュラム構築を試みる。 第2にイタリア、レッジョ・エミリア市で開催される「レッジョ・ナラ」の現地調査を行う。市民が協働し、子どもたちの表現性を町ぐるみで育んでいる実際を取材し、その方策を明らかにする。さらに、環境を構成し、子どもたちが主体的に学ぶ機会を提供するレッジョ・エミリア教育に携わる教師へのインタビューを実施し、具体的な子どもの能力を引き出す支援の方法、活動評価の視点と方法について明らかにする。また、子ども一人ひとりの活動内容によって学び、育ったことについて形成的に評価する上で非常に有効であるとされるドキュメンテーションについて、国際マラグッツィセンターに保管されているドキュメンテーション資料に直接あたり、内容について検討していくこととする。 第3に芸術教育に優れたドイツ、シュタイナー教育について、日本での先行研究、文献調査を行い、焦点を身体表現、ダンス教育について絞り、検討していくこととし、次年度前期に予定しているドイツでの実地調査の準備を行う。ドイツ表現主義舞踊の核となり、独自の舞踊発展を遂げている舞踊芸術とシュタイナー教育がどのように接合されているのか、興味深く、ドイツ独自の方法として多くの知見が期待できる。
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Causes of Carryover |
アメリカでの国際学会での発表については、旅費などは早めに予約し、経費節減に努めた。また、鳥取における幼小連携についての実践研究は、助言者として交通費が支給された為、科研費を使用することなく、研究を行うことができ、全体として予定より経費を節減し、研究を進めることができた。 今年度はイタリアへの調査研究を5月18日~23日に実施し、旅費に加え、インタビューを予定していることから通訳の費用も発生する。また、イタリアへの調査は一昨年であったため、その後に出版され、現地でのみ調達できる書籍、文献については購入予定である。 さらに、比較対象としてドイツの調査については未着手であり、今年度文献を購入し、先行研究の検証と現地調査の準備を進めていくこととする。
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Research Products
(5 results)