2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01535
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
弓削田 綾乃 早稲田大学, スポーツ科学学術院, その他(招聘研究員) (90432038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 身体表現 / 地域性 / 伝承芸能 / 表現あそび |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「身体表現と地域社会との連携」を大きなテーマとするものである。「地域での創造的身体表現活動は、活動者と地域社会とのつながりを育む」という仮説を立て、実践と分析により検証し、活動モデルの構築と発信を目指す。対象とするのは、関東地方のC県M市での身体表現を中心とした活動である。 本年度は、地域文化に根差した身体表現として、伝承舞踊や民俗資料等を活用した表現活動を試み、実践者の反応から地域社会との関係性について検討した。具体的には、当該地域に伝わる獅子芸能、盆踊り、和楽器等を素材とした。特に獅子芸能は、江戸時代から当該地域で受け継がれてきたもので、氏神との交感の場であると同時に、共同体の円滑な運営に貢献してきた(弓削田2013)。これらを踏まえて、実際の稽古場で、芸能の奏者の伴奏による表現あそびを試みた。また盆踊りについては、動作・文化・歴史に基づく表現性を検討し、幅広い活用法を探った。結果をまとめると、以下のようになる。 参加者10~20人程度の身体表現ワークショップを、2016年度に7回実施した。その結果、伝承舞踊を素材とした即興的表現においては、体験的な見聞に基づく動作が頻出することが判明した。また他者との表現の共有により、実際の芸能とは異なる解釈が生じることを指摘した。そして回数を重ねることで、活動者のオリジナルへの回帰が深まる可能性も示唆された。伝承芸能の音楽や動作等諸要素の同調性・即興性に加え、地域特有の共有認識が、表現そのものを豊かにするとともに、地域に対する意識を醸成しているのではないかと考察する。また盆踊り独自の自由性・創造性・集団性は、すでに国内外での諸表現活動に活用されており、本研究での活動モデルのひとつとして有意義であると考えられた。 ※弓削田綾乃「伝統を担い現代に生きる身体」『近代日本の身体表象』2013、森話社
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
身体表現ワークショップの実施は、2015年度に引き続き、2016年度も6月以降、毎月1回おこなった。そこでは、前年度からの課題であった、当該地域の伝承舞踊を表現活動に組み込むことを実践的に試行した。また、伝承芸能を活用した諸表現活動を展開する秋田県内の団体の現地調査をおこなった。連携研究者とのミーティングは計17回おこない、分析や研究状況等について検討を重ねた。 しかし、地域の施設との連携やイベント参加など、活動の場を広げるという点については、今年度は見送った。その理由は、上記課題の遂行を優先したためである。また、論文の公表という点でも、個人の事情により遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果を受けて、次年度は、伝承舞踊や民俗資料等を活用した創造的身体表現ワークショップを、引き続き多様な場で展開し、継続的な実践が、地域社会への意識にどのように影響するかを検討する。また、関係者・研究者らによる意見交換会を実施して報告書にまとめるとともに、論文としての公表をめざす。
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Causes of Carryover |
機器類の設置場所が不十分だったため、大型機器類の購入を見送った。また、データの整理要因として人件費を準備していたが、研究代表者がおこなったため、費用が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
身体表現ワークショップ実施関連、参考図書、学会発表、意見交換会、人件費等の経費については、当初の計画通りに使用する。次年度は、設置場所の見通しが立つため、分析機器類の購入の経費として、前年度繰越金を使用する。
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