2016 Fiscal Year Research-status Report
ランニングエコノミーを用いた中・長距離走における評価・診断法の開発
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15K01551
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
榎本 靖士 筑波大学, 体育系, 准教授 (90379058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍋倉 賢治 筑波大学, 体育系, 教授 (60237584)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エネルギーコスト / モーションセンサー / 積分筋電図 / 上下動 / 腰の回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はまず、腰部に装着したモーションセンサーで計測した腰の動きの妥当性を検証する実験をおこなった。その結果、3次元動作計測装置により算出した身体重心の上下動とモーションセンサーで計測した上下動を比較し、センサーでの上下動の計測の妥当性が確認された。しかし、腰の回転や左右の動きについて、さらに検討する必要があった。すなわち、腰の回転動作はセンサーにより計測できているものの、腰の姿勢の同定が困難である。そのため、腰の前後傾角度、水平回転角度において個人ごとに動作計測との間に違いが生じていた。また腰の左右の動きは重心の動きと逆位相になる例がみられた。今後は定性的に違いがあったとしても定量的な評価が可能かどうかを検証する。また回転と上下動などの並進の動きを組み合わせた動作の評価方法を検討する。 続いて、ランニングエコノミーに影響する身体重心の上下動を、中長距離走者に腰部に加速度センサーを、脚の主要な筋群に筋電図を貼付し、トレッドミル走行におけるエネルギーコストに影響する要因を検討した。ランニングエコノミーはある走速度における酸素摂取量、すなわちエネルギーコストで評価されるが、先行研究によりエネルギーコストには体重の支持が大きな割合を占めていることが示唆されているため、速度を変化させるとともに、トレッドミルを上りと下りに設定して身体の上下動によるエネルギーコストの増減に影響する要因に着目した。なお上下動や筋電図はすべて1分間量に規格化した。その結果、落下してきた身体を受け止めることよりも上昇させることとエネルギーコストに関係がみられ、さらに、膝関節伸展筋群の活動がエネルギーコストと関係していることが明らかとなった。今後は個人間のエネルギーコストや縦断的なランニングエコノミーの向上との関係を検討し、ランニングエコノミーの評価診断システムの確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モーションセンサーを用いた走動作の評価方法はほぼ確立しつつある。これは平成28年度に、本学で開催した国際学会においてランニングエコノミーのセッションにおいて国際的に活躍するランニングエコノミーの研究者らと議論できたことが大きかった。そして、ランニングエコノミーに影響する大きな要因である上下動と、そして上下動が大きいこと、膝関節伸展筋群の活動が大きいことがエネルギーコストを増大している可能性が示唆された。今後は、個人間や個人内の変化とこれらの評価の観点との関係を整理することで、ランニングエコノミーからみた走動作の評価診断システムを構築できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実験室において、モーションセンサーの測定精度および走動作の評価方法を検証し、かつランニングエコノミーの評価であるエネルギーコストとモーションセンサーで測定できる重心の動揺指標との関係を確認している。今後は、実験室の測定ばかりでなく、トレーニングやレースにおいてモーションセンサーを用いた計測をおこなうことで、エネルギーコストを直接測定できないものの、長距離走パフォーマンスとの関係を検討する。モーションセンサーを利用した走動作の評価診断システムを検討するうえで、実践において実装していく。さらに、横断的な研究ばかりでなく、ランニングエコノミーや走動作に大きな改善の余地のある選手を対象に縦断的に評価することで、本研究のエビデンスを高めることができると考えている。
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Causes of Carryover |
データ処理のために雇用した研究員の法定福利費が当初の見込みより安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用消耗品の一部に当てる予定である。
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