2016 Fiscal Year Research-status Report
スキージャンプ・初期飛行局面における姿勢変化が流体特性に及ぼす影響
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15K01561
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
山本 敬三 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (00405698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪倉 誠 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (40313366)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スキージャンプ / 数値流体解析 / 気流可視化 / 空力特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、これまでの研究成果の論文化と数値流体解析用の動作データの計測を行った。先ず、これまでに行った踏切動作の流体解析結果を学術論文としてまとめJournal of Biomechanicsに投稿し、査読を経て掲載が決定した。この論文では、踏切動作中のスキージャンパー周辺の気流状態とジャンパーが受ける空気力の関係を示した。本報告では、体幹や上肢の姿勢が空力的に重要な意味を含むことを示した。先行研究において飛行局面における空力解析は多く報告されているが、姿勢変化を伴う踏切動作中の気流状態や空力解析の報告例はなく、本報告が世界初の報告事例となった。また、今年度は、モーションセンサを用いた動作計測を試みた。昨年度はビデオカメラによって撮影された映像データから動作分析を試みたが、撮影範囲が限定される問題があった。また、分析に多くの時間を要するなど、今後の円滑な流体解析のワークフローを実施するには問題点があった。そこで、今年度はモーションセンサを用いて、試技全体(スタートから着地まで)の動作計測を試み、数値流体解析用の3次元モデルの作成に挑戦した。現役のスキージャンパー1名を対象に、札幌・大倉山ジャンプ競技場にて、計測実験を行った。計測には慣性センサ式のモーションキャプチャシステムを用いた。全身に17個の慣性センサを取り付け、スキージャンプ用の装備一式を身に着けて実際のジャンプ台で実試技を課した。今後、3次元キャラクターアニメーションソフトウェアを用いて、計測されたデータに表面形状データを組み込み、数値流体解析用の3次元モデルを作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値流体解析に必要なスキージャンパーおよびスキー板の表面形状データは、前年度に取得済みであり、今年度の課題は実試技中の動作データの取得であった。当初、ビデオ映像による動作分析を計画していたが、撮影範囲や分析時間の制約条件から、円滑な流体解析のワークフローの実現に問題があったため、計画を一部変更し、モーションセンサにより動作分析を試みることとした。結果、計測範囲は拡大され、試技全体(スタートから着地まで)の動作計測を、短時間に簡便に行うことに成功した。現在、この動作データに表面形状データを組み込み、数値流体解析用の3次元モデルを作成中である。一方、数値流体解析手法については、共同研究者である坪倉教授と打ち合わせを行い、非定常空力シミュレーションのフレームワークの構築を依頼している。現状では、計算格子の構築において、直交格子積み上げ法と呼ばれる、流れ場を階層型の等間隔直交格子で離散化して解く計算アルゴリズムを採用する予定である。この手法では、等間隔直交の簡潔な計算アルゴリズムを保ちつつ、物体まわりに計算格子を密に配置することで詳細な解析を行えるため、並列計算において高い計算効率を得られる利点がある。平成29年度には、上述の動作データを用いて数値流体解析を行い、スキージャンプ試技全般における空力特性の解明に挑む。また、今年度は、これまでの研究成果を指導現場にフィードバックするためのセミナーを開催する。平成29年5月12~14日に北海道上川郡下川町の下川ジャンプ少年団を対象に、踏切局面における空気力学と身体の動かし方についてのミニレクチャーを行う予定である。下川ジャンプ少年団は、多くのオリンピック代表選手を輩出するジャンプ界を担う競技団体である。申請者は、将来に渡って我が国の国際競技力を維持・向上させるために当該少年団を対象にレクチャー活動を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
コンピュータ・グラフィックス専門家の協力を得て、スキージャンパーの3次元動作モデルを作成し、共同研究者の坪倉教授によって構築された「非定常空力シミュレーション」のフレームワークを用いて、空力特性の解明を試みる。一方で、現実に則した数値流体解析を行う上で課題も挙がっており、その解決を試みる。実試技中のスキージャンパーは、徐々に落下する飛行曲線を描くため、移動速度や方向が時々刻々と変化する。そのため、スキージャンパーが受ける風向風速も変化する。これらの気流状態を考慮した数値流体解析を実施するための情報収集方法についても検討事項として挙げられる。平成29年度は、GPSによる位置情報の取得から、飛行曲線の推定も試みる。本研究によってスキージャンプの一連の動作中の空力特性が明らかになることで、最適動作を検討する資料を提供できる。また、本研究で得られた知見を研究論文(Journal of Biomechanics)、関連学会等で発表する。選手・指導者向けのレクチャーや、指導現場で役立つ資料等を作成し、関係者へ情報公開を行う。
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Causes of Carryover |
動作データから数値流体解析用の3次元モデルを作成するための費用として計上していたが、慣性センサ式モーションキャプチャシステムの計測実験の実施が遅くなり、平成28年度中の予算執行が間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に持ち越し、上記の「次年度使用額」を用いて、3次元モデルを作成する。
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