2016 Fiscal Year Research-status Report
生徒にとって望ましい運動部活動の指導の在り方に関する研究
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15K01570
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
深見 英一郎 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10351868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チーム/個人の目標設定 / 勝利志向性 / 生徒の意見の反映度 / 生徒の満足度 |
Outline of Annual Research Achievements |
生徒にとってよい運動部活動を運営するためには、指導者が日々の練習内容、生徒への対応の仕方を振り返り、指導改善に役立てていく必要がある。そこで本研究では、生徒はどのような運動部活動を評価するのか、生徒が望む練習、指導の在り方について明らかにしようとした。運動部活動の望ましい指導の在り方を検討するために、指導者及び生徒(部員)に対して2つのアンケート調査を実施した。1つは、生徒に対して日頃の運動部活動の取り組みを形成的に評価してもらうための評価票である。もう1つは、指導者の主導性/生徒の主体性に対する意識を評価するための調査票である。生徒の考えはチームの目標・運営にどの程度反映されているか、また日頃の練習の目標・内容・方法は、誰がどのように決定・運営しているかを明らかにしようとした。 この研究成果の一部を、「運動部活動における目標設定、 勝利志向性、 意見の反映度の実態並びにそれらが生徒の満足度に及ぼす影響」(深見英一郎・岡澤祥訓、 体育学研究、62:1-16、 2016)としてまとめた。その結果は、次のとおりであった。 1)運動種目別にみると、集団種目では生徒中心で決定したチームの目標があり、すべての生徒が共有していた。また勝利志向で、練習や試合において生徒の意見が反映され、満足度が高かった。 2)学校種別にみると、高校生は指導者とすべての生徒で決定したチームの目標があり、それをすべての生徒が共有していた。また、彼らは徹底して勝つ意識が強く、練習や試合において生徒の意見がより反映されていた。 3)個人の目標があり、その達成に向けて具体的な計画を立て努力できている生徒、ある程度勝つことを中心に楽しむ生徒は満足度が高かった。また、チーム目標は生徒中心で決定し、自分たちの意見が反映されている生徒は相対的に満足度が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、1)運動部活動の取り組みに関する評価票(形成的評価)作成の試み、2)運動部活動における指導者の主導性に関する意識と形成的評価との関係という2つの研究実施計画を立てている。前者に関しては、今日、担当教科が保健体育ではなく、かつ現在担当している部活動について過去に競技経験がない指導者が約半数の割合を占めるような不十分な指導体制の中、指導者は自身の指導の在り方に関して誰にも相談できず、不安で自信が持てないまま指導している者も少なくないと考える。効果的で質の高い練習環境を提供するため、指導者は生徒たちの声に耳を傾け彼らの考え・意見を聴取する必要がある。また、優れた指導者として成長するためにも日頃の練習方法、生徒への対応の仕方を振り返って評価・反省する必要がある。ここでは運動部活動に対して生徒は何を求めているのか、また日々の練習や取り組みを生徒はどのような観点で評価するのかを明らかにして、明日からの指導改善に役立てるための簡便な評価指標の作成が急務であると考えた。 後者に関しては、運動部活動におけるチームの目標及び練習内容を誰が決定し、チームの練習はどのように進められたか、各部活動の指導者の意識を明らかにする。また、指導者がどのように主導性を発揮した場合に、当該部活動の生徒は運動部活動を高く評価するかを明らかにしたいと考えた。くわえて、これらの2つの論文は密接に関連しており、後者の論文は、前者の(生徒の)運動部活動の取り組みに関する形成的評価作成の試みが論文として受理され、標準化された評価票を使用する必要がある。しかしながら、前者の論文を学会誌に投稿したが、現時点でまだ受理されていない。そのため、スケジュールがやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、学会誌に投稿したが却下された「運動部活動の取り組みに関する形成的評価作成の試み」が論文として掲載されるよう善処する。一方で、新しい研究テーマを検討している。それは、指導者と部員両者が納得のいく選手選考の条件を明らかにすることである。たとえば、部員であれば誰もがレギュラー選手に選ばれ各種大会に出場し試合で勝利したいと切望している。また、選手選考はすべての部員にとって最も高い関心事の1つであり、選手選考の良し悪しが選手の競技意欲やチームの競技成績を大きく左右することから、指導者は熟慮を重ねて選手選考を行う。競技毎に試合出場人数は異なるが、多くの部員がいるチームでは、必然的に試合に出場できない部員が出てくる。選手選考の責任者であり決定権者である指導者は、チームが勝利することを最優先に考えて選手選考を行うが、指導者によって選手を選ぶ基準は異なるだろう。しかし、部員の実力が拮抗する場合や、能力は高いが努力しない部員と能力は低いが真面目に努力する部員のどちらか一方を選ばなければならない場合には、指導者は思い悩むであろう。レギュラー選手だけでなく、補欠選手も含めてすべての部員が納得できる選手選考が理想ではあるが、必ずしもすべての部員が納得した選手選考が遂行されるとは限らない。少なくとも公平で透明性の高い方法によって公正に選手選考が遂行されることが不可欠である。一方で、指導者と部員の間で選手選考の条件が情報共有されておらず、お互いが納得できないまま選手選考が行われた場合には、チームの不協和音に繋がると考える。 そこで本研究では、指導者と部員両者が納得のいく選手選考の条件を明らかにする。それにより、多くのチームにおいて指導者と部員両者が納得する選手選考の条件を共有し、適切な手続きのもと円満な選手選考が実施できれば選手の競技意欲やチームの競技成績に繋げることができると考えた。
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Causes of Carryover |
今年度、謝金の支払いを計画していたが、アンケート調査の実施準備ができなかったため、その分を費消することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査の準備を整え、アンケート調査を実施する。その結果について、研究論文にまとめ、発表・投稿する。
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